巡り合う私達、運命かな?
「うーーーん!やっぱおいひー!」
ヒボシは滑らかなクリームが芸術的なまでに均一に塗られたケーキをプスリとフォークで刺して頬張っている。
艶のある木製の壁やテーブルが、オレンジ味のきいた暖色の照明に照らされる店内で、零れる様な笑顔を浮かべ頬を両手で抑えるその姿は、見ているだけで幸せになれる。
私は、切り揃えられた前髪を整えた。
店内の空調がおかしいのか少し暑いので、汗で前髪がおかしくなってると恥ずかしいから。
「ラクノの前髪って可愛いよね」
ケーキをプスリプスリとフォークで刺しながら、視線を合わさず照れくさそうに言うヒボシ。
「そっかな?自分でジョッキジョッキしてるだけだよ?」
私は蟹みたいなジェスチャーをする。
「ふふふっ!才能ありありだと思います!」
ヒボシは、私のジェスチャーに口元を押さえ大笑いし、頷きながらそう言った。
「ありがと……」
なんだろう……自分を肯定される事ってこんなにも幸せだったっけ?人と距離置いてたから分かんないや。
「ラクノってー、モテそうだよね」
チラッと確認する様な目つきで聞いてきた。
「モテないよ。メッセでも言ったと思うけど、私友達すらいないし」
ヒボシが開示してくれた分だけ、私の基礎的な情報は一応メッセージで教えている。
「そうなんだぁ……立候補とかしちゃいたい……な……」
ヒボシは淡く光る青い瞳を潤ませ、恥ずかしそうに言った。
え!?どっち!?友達って事だよね??
「あーーー!友達友達友達にね!メッセのやり取りとか凄く楽しいし、今日だって一緒にいるだけで……そのぉ……し、しあわせだし!!」
ヒボシは私が何も言って無いのに、ブンブンと手を振って必死に自己弁護している。
「じゃあ……なってみる?友達」
気が付けば私はそう言っていた。私からしたら、かなり大胆な発言なんだけれど、迷わず口から出てきたから不思議だ。
ヒボシは拍子抜けしたように固まる。
そして……
「よ、よろしくお願いいたします!」
可憐な見た目で武士のようにお辞儀をしてきた。
「こちらこそです」
私はヒボシの真似をし、穏やかな表情で冷静にお辞儀をしたが、内心は飛び上がりたい程に嬉しかった。
私達は友達となり、上がった気分が食欲を増幅させ、二人共ぺろりとお皿の上のケーキを平らげた。
そして、もはや空調が切れたのでは?と疑う程に店内は暑くなりだし、照明もビカビカと点滅するという怪しい状況になってきたので、そろそろでよっかと話し合い私達は店を出た。
店を出る際、店内を見渡したが、いつの間にか私達以外の客はいなくなっていて、レジカウンターの店員さんも、壊れた人形のように会計の値段を何度も繰り返す奇行を見せていた。
「ねぇラクノ、やっぱりおかしいよね」
ヒボシもずっと違和感を感じていたのだろう、店の外でとうとう私にそう言ってきた。
「うん、たぶん近くに……いると思う……」
私達は決定的な違和感を見ながら会話している。
この複合商業施設の駅直結出入り口のシャッターが閉じられているのだ。
遠目に反対側の出入り口も見てみたが、あちら側も閉じられているようだ。
「早く出ないと……でもどっから出られるんだろ?」
ヒボシは先程の明るさが消え、オロオロと不安そうな顔をしだす。
「取敢えず出られる場所探そっか」
私達は駆け出した。
しかし、私達が館内をぐるりと時計周りに一周する間、まるで何かがそれを見ているかのように、全ての店舗や外への出入り口のシャッターが順々に降りていく。その際、人の姿は一切見かけなかった。
私達は一周し、出口を見つけられないまま、最初の場所でハァハァと息をつく。
「どうしよどうしよどうしよ」
ヒボシは頭を抱え、少し涙を流しパニックになっている。
「ヒボシ落ち着いて」
なだめる私は冷や汗を垂らす。いつにも増して、邪悪な気配が肌にジンジンと突き刺さっているからだ。
その時だった――
ギシャリ……
大きな鉄の塊が擦り合うような音が中央の大階段から聞こえた。
「なに!!??今の音!!??」
ヒボシは私の背中にしがみついて、音の先は見ずにただ小刻みに震えている。
ゴクリ。
私は階段から上がってくるそいつを見た瞬間生唾を飲み込んだ。
そこには……
五メートル程の人型の異形がいた。
かなりのボリューム感のある巨体だ。
その巨体は太い鉄製のワイヤーが荒々しく幾重にも巻かれている。
針の茨でできたマントを王のように羽織り悠然とこちらへ近づいてくる。
頭部は鏡面の球体で魚のヒレのようなものがついていて至極不気味だ。
「いやあああああああ!!!」
ヒボシが奴を見て絶叫した。
それと同時に、私は朱色の太刀を空間に顕現し身構えた。




