愛のモニュメント、立ち尽くす私達。
感じる。奴は間違いなくこの山の中にいる。様子を伺っているかのように気配をこちらに向けている。
シンボルゾーンに到着した私達は辺りを見渡した。
「空気……新鮮だね」
ヒボシは神妙な顔で言った。
私は彼女に全てを話したから、これから何が起こるのか察しているのだろう。
「うん、マイナスイオンって感じ」
私は少し寒いぐらいだと感じている。何故なら、こんな山の中なのに私達は、全く常識外れの格好をしているからだ。
二人共、ドレスシャツに軍服のようなジャケットを羽織り、ミニスカートを履いては、足にはニーハイソックスを着用しているからだ。私が赤基調で、ヒボシが青基調。
話し合った結果、いつどうなるか分からないから、いつだって楽しく可愛く幸せでいたいよね、という意見で一致したのだ。私達の女の子としての信条は、今日みたいな状況だとしても覆すことはもう出来ない。
地形を把握する為、シンボルゾーンを隈なく歩き出す私達。
この道は大きく分けて、三つのエリアからなる場所だ。 スタート地点に彫刻の道、中間にある巨大噴水広場、最奥の愛の像と言うモニュメントがある場所。
彫刻の道は高い木々に囲まれた広く長い道で、左右に石で出来た巨大な彫刻がずらりと並んでいる。
それらは象徴的で不思議な形をしていて、一度見たら忘れられない様な形だ。
昔この場所に家族で来たときは、この場所は宇宙人達の秘密基地に繋がっていて、これらは宇宙人達が作ったモノなんだと本気で思ってたぐらいだ。
父さんの嘘に騙されてると知らず、それをカナタに秘密めかして語ると、『お姉ちゃんやっぱ凄過ぎるよ!!!』と目を輝かせて語り、それから事あるごとにカナタは、宇宙人の秘密を私から探ろうとしてきた。
「ほえー、すごい変わってる形だねー」
ヒボシは大きなリュックを抱えながら探検家みたいに言った。
私の戦闘の邪魔になってはいけないからと、一人でこの大荷物を持つといってくれたのだ。中には、おにぎりやサンドイッチ、飲み物など主に食料が多く入っている。一応、懐中電灯などもある。
「うん、あんまりないよねこの形。ヒボシにちょっと似てるかも」
砂利を踏む音、青々とした木々の匂い、静まり返った大気、やけに張りつめているようで体が無意識に緊張する。
「ちょっとぉ!ひどいよー!私こんな石っぽくないもん」
ヒボシはどう言う事なんですか?と私の顔を下から覗き込んで問いたててくる。
「冗談だよ、ヒボシはゴーレムなんかじゃないもんね」
「ふふっ、ラクノゴーレムって強そう」
反撃された。私達の笑い声が森林に響く。
その場所を抜けると、遮りの無い開放的な円形の広場が現れ、その中央に巨大な噴水がある。私はこの場所で戦うつもりだ。
夢で見た不死の魔獣のスケールとでも戦える規模の広さを誇るからだ。
邪悪な存在はサイズ自体はそれほど大きく無かった印象がある。その代わり、弩級に怪しい雰囲気があったが……
しかし今回の戦いは、不死の魔獣を召喚される前に決着をつける必要がある。
最悪召喚されても、融合される前にどちらかを倒さないとこの作戦は失敗だ。もし融合された場合、きっと私では敵うはずがないからだ。
「広い広ーい!ねぇラクノ?後でここでご飯食べよ?」
ヒボシが駆け回りながら、リュックとお尻をフリフリして言った。
その服装でお尻振るのは、ちょっとえっちぃだよヒボシ、とは言わない。そう言う考えをするのがえっちぃだと返されるに決まっているから。
「だね、食べれる時に食べとかなきゃね」
「あー楽しみ!」
偶に、状況と一致しない発言をするのがヒボシの癖だけれど、結構緊張ほぐれるからそれはそれで好きだ。
そして噴水の広場を抜けると、この場で一番目立つモニュメントが高く飾られていた。
愛の像。
何だか分からないけど物凄い雰囲気がある。
それは、巨大な台形の石柱の上にあり、万歳をしている人型のような形だ。少し女性にも見える。愛の像自体の大きさは、石柱と同じぐらいの大きさだ。
そして愛の像を囲むように円形の囲いがあり、その中に巨石が幾つか転がっている。その囲いからも噴水の広場程では無いが、中規模の噴水が噴出している。
愛の像の背後には甲山が存在感を持って君臨し、彫刻の道のスタートラインから一直線に見れば、それはそれは美しい設計を感じられるようになっている。
まるで、RPGのボスフロアのような特異な雰囲気の漂う場所である。
「愛の像って感じだね」
ヒボシは眉をひそめ、腰に手を当てて仁王立ちしている。気に入ったみたいだ。
「雰囲気あるよね、想像を掻き立ててくるっていうか」
物事はダイレクトに伝え無い方が、多く伝わる時もあるっていうのを教えてくれる気がする。
「愛っていいね」
ヒボシは私の手を握って言った。
「うん、エネルギー……みたいだよね」
体を動かすのが食事のように、愛は心を動かすエネルギーなのかもしれない。
そして、何事も意思から始まるのだから、あらゆる事柄の起点には愛があるのかもしれない……




