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夕暮れの街風、神聖な炎。

ヒボシの家に帰るなり、私はピザの宅配をとった。


 勿論、ヒボシが一番大好きなやつを。私もあの子も、もうお腹がペコペコだ。


 ヒボシが先にシャワーを浴びている間に、塔みたいなこのタワマンの上層の窓ガラスから夕陽に輝く宝塚市の街並みを眺めた。


 陽の黄金に染まるコントラストが美しい。


 私はある場所に目を向ける。


 山手台北公園と言う、阪急宝塚駅から北東に位置する高台の公園で、以前、ワニの異形と戦った公園でもある。


 あの公園の眺めは別格で、昼の景色は幻想都市の上空を飛んでいるかのような気分になり、夜の景色は光の海に溺れる感覚に包まれるぐらいだ。


 私の一番大好きな場所であり、家族との想い出がある大切な場所だ。


 そう言えば、まだヒボシと行ってなかったなー。


 明日行こっかな。




 ヒボシがシャワーから出てきて、私もすぐさまシャワーを浴びる。


 湯煙が立ち込める浴室の曇った鏡をキュッキュと腕で拭いた。


 やっぱり。


 私の髪と瞳は一段と神聖な炎のように朱色が濃くなり、輝度の高いグラデーションまで現れて、角度を変えてみるだけで燃えているように見える。


「綺麗……」


 自分が人ならざる者の美に回帰しているようで、なんだかうっとりしてしまった。


 後で、ヒボシに可愛いか聞いてみよう。


 あ、そうだ、カナタにも聞いてみよう。


「ねぇカナター、お姉ちゃん可愛い?」


 私は鏡の自分に向かって呟いた。


 当然何も起こらないが、脳裏にカナタの笑顔と愛おしい声が浮かぶ。


『お姉ちゃんは一番可愛いよ、ボクお姉ちゃんと結婚したいなぁー』


 私の瞳から涙がツーっと零れて、無意味な水滴にあっけなく落とされた。


 しかし、肌を伝った感覚だけはその後も残り続けた。




 「ちょっとジュース買ってくるね」


 「はーい。あ!私も炭酸系欲しいなぁダーリン」


 ヒボシがソファーで寝転び足をばたつかせ、スマホをいじりながら言った。


 「ふふっ、なんで急なダーリン呼びなのよ」


 あ、でも、海外では女の子同士でも凄く仲良い子達はそう呼び合うらしいんだっけ?




 ジュースは口実で、シャワーを浴びてスッキリした後、日が沈むこの瞬間の街の風に当たりたくて私は外に出たのだ。


 自販機の前に立ち、トワイライトに染まる街並みを見渡す私。


 近くに流れる武庫川や、ヒボシのタワーマンション、駅前のコンビニ、全部が魔法の世界に迷い込んだみたいに姿を変えている。


 私自身の世界の視え方が変わったのもあるのかもしれない。


 これは、獣怪獣を倒して得た能力のせいだろう。この能力が何かはもう見当がついている。過去に何度かこの感覚を味わった事があるからだ。


 全能力アップ。


 鋼鉄の魔人との戦いで、朱の流動の鳥居をくぐった時や、蝙蝠のデーモンとの戦いで朱のしめ縄の神聖な炎を体に吸収した時と同じ感覚だ。


 きっと今本気でジャンプしたら、あのタワーマンションの屋上まで一気に登れるだろう、武庫川だって軽い一歩の跳躍で渡れる気がする。


 いよいよ人じゃないかもしれない。


 私は人目もはばからず朱色の太刀を顕現した。


 それは倍の長さになっており、眩い神聖な炎と朱色の炎が混じり合って、ゴォゴォと凄まじく燃焼している。


「すご」


 淡白にそう呟いた後、 私は顕現の魔術を解除し、光が弾けるように太刀を霧散させた。


 陽に染まる天を見上げ、一つ息を吐く。


「使命か……」

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