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百合勇者だね私達、うみねこも鳴いてるよ。

 闇端ロワクの占いの館を出た後、少し空気の重いまま、私達はハーバーランドへと向かっていた。


「ヒボシ、大丈夫?」


 不老不死だが死ぬ可能性も浮上し、派閥が違う異形達に二重に追われているという事実も明らかになり、ヒボシの目はかなり焦燥していた。


 しかし、無理に笑顔を見せようとしているこの子は、前より遙に強くなった気がする。


「えへへ、私モテモテみたい」


 泣きそうになりながら笑う表情を見ると、私はとても胸が痛くなった。


「大丈夫だよ。私、ヒボシの事絶対誰にも渡さないから」


 中華街である南京町の喧騒を傍らに、私は宣言した。


 我慢してたのだろうヒボシの瞳に大粒の涙が溢れ出し、ポタポタとコンクリートに落ちた。


「おいで」


 腕を開く私の胸の中にヒボシは顔を埋めた。


「怖いよぉ……(ぐすんぐすん)」


「よしよし」


 闇端ロワクの言った通り、私は強くならなければいけない。


 例えそれで、自分を犠牲にしたとしても……




 私達はそのまま南へ歩き、ようやく海の見える場所までやってきた。


 メリケンパーク、神戸三宮を代表するデートスポットだ。


 神戸港より東側にある海沿いの広大な公園で、大規模なイベントがよく行われる場所だ。近くには有名なポートタワーもあり、この場所からハーバーランドは近く、徒歩十分程で行ける距離だ。


 水平線が美しい海の景色を彩るように、赤い観覧車が見えてくる光景はとてもワクワクする。


 私達はハーバーランドへ向かう前に、メリケンパークの海沿いで少し休憩する。


「ちょっとは落ち着いた?」


 潮風に私の朱色の髪が燃えるようになびいた。


「うん。追われてるのはラクノも同じなのに、怖いばっか言ってごめんね……」


 穏やかな海は、ヒボシの心の曇りを晴らしてくれたみたいだ。


「いいよ全然」 


 海猫がやけに鳴いている。私達はそれを見て何気なく笑った。


「闇端ロワクちゃん、凄かったね」


 未だにちゃんづけってなんかすごいな。ずっとそう呼んでたから染みついてるんだろうね。


「うん、本物の魔女だったね」


 彼女の見せてくれた映像や言っていた言葉を聞くに、間違いなくそうであることに疑いは湧かなかった。


「ロワクちゃんなら賢者の石も作れそうな気がする……」


 賢者の石?そんな事言ってたっけ?


「フィロソファーズ・ストーンとかなんとかの事?あの辺全っ然意味分かんなかった私」


 『混沌が必要なの』って言った瞬間、この人ヤバイってのは理解したけど。


「あれはね、錬金術の話だよ。簡単に言うとね、錬金術の世界ではプリマ・マテリアって言う万物の根源となる原初の物質があるって言う考えで、それをね、マグナム・オプス(大いなる業)っていう浄化から覚醒を経て完成へ至る四段階を通過させると、あらゆるものを完全に変える究極の触媒、賢者の石が完成するって話なの」


 く……くわしい。オカルトオタクなのは伊達じゃないね。


 取り敢えず、ざっくりは分かった……気がする。


「あーそう言う事!その浄化の段階で、ヒボシに『手伝ってね』って言ってたって事か…………てか、ヒボシ凄かったね!あのスアヴィとか言う門番みたいな悪魔の腕やっつけちゃったじゃん!」


 あいつ、魔圧から考えたら信じられないぐらい強い奴だと思うし。ホントすごい。


「うん、不老不死より回復魔術の能力の方が凄かったんだね私。ロワクちゃんの言ってた通り呪いじゃないなら、この力を持った意味があるんじゃないかって思えてきた……」


 ……


「偉い!超前向きじゃん!ヒボシなら絶対その意味に辿り着けるよ。それまで私がぜっったい守ってあげるからね!!」


 私は人目もはばからずヒボシをハグする。


「うふふ、ありがとラクノ。私も頑張って力になるからね!!」


「そうだよ、倒した相手の能力を奪える私、不老不死で、超希少な回復魔術を持つヒボシ。こんな私達がタッグになるってよく考えれば超超最強じゃんか」


 私はヒボシを元気づけるように大袈裟なジェスチャーをとる。


「だね!私達、勇者かも!」


 ヒボシは剣を掲げる様なポーズをした。


「良い響きじゃん、それ」


 肩を組む私達。


「百合勇者だね」


「それはちょっと恥ずかしいかも……」


 私達は見つめ合う。お互いの瞳に吸い込まれそうだ。


「今日帰ったら何する?」


 ヒボシは口をすぼめてぶりっこする。


「でた、言わせたがり」


 私はヒボシの鼻をチョンと突っついて笑った。

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