お化けかな?怪獣の。
私とヒボシは三宮センター街を歩いている。多種多様なお店が並ぶ開放感のある広いアーケード内は沢山の人で賑わっている。
私達は先程の不気味な壺の事を薄っすら頭に残し、無意識に人波に紛れるように歩いた。
西へ西へと流されるように進む。この街を俯瞰的に見れば、北が異人館、南がハーバーランド、西が闇端ロワクが占いを行う、元町商店街がある場所だ。
服屋さんにコスメ店、アンティークな雑貨屋にガチャガチャショップ、いい匂いのする中華まんのお店、気色の悪い壺の事なんて忘れてやると言うように、私達はひと際騒ぎながらこの街を楽しむ。
センタープラザにあるアニメグッズショップで考古学者みたいに何を買うか吟味するヒボシを見ていると私の頭の中の不安は、いつの間にか消えていた。
勿論、ヒボシもオタグッズ選定で同じく。
「もうそろそろ行く時間だよ?早く決めなよぉー」
一応忠告しとかないと、この子時間忘れてそうだしね。
「もう少し、もう少しで視えるから」
ヒボシはお気に入りアニメのアクリルスタンドを両手に抱えて見比べながら言った。
「何がよ……」
そんなこんなで、仕方ないから片方買ってあげるよ、と言うと、飛び跳ねて喜び、私のほっぺにチューしようとしてきたから、場所弁えなよ、とかわしてデコピンした。
ヒボシは、はい!と返事だけはよくって、その後舌をペロと出してウインクしてきたから、ちょっと甘やかしすぎかなぁと反省したりする私。
おっちょこちょいだったり、訳の分かんないとことか、弱っちいとことかを見てると、何でもしてあげたい気持ちにすぐなっちゃう私も悪いんだろうけど。
アニメグッズショップに行った後は、アーケードを二つ超え、私達は元町商店街へと入った。この商店街自体も距離は長くて、例の闇端ロワクの場所は、まだもうちょっと先だ。
「結構歩くね、足ちょっと疲れてきた」
私がそう言うと、ヒボシの返事は無かった。
あれ?
そもそもヒボシいないじゃん。
あ、アイスクリーム屋さんの前で固まってる……もう子供だよ君!
私は隣に行って聞く。
「どしたの?食べたいの?」
「もう買ったよ!」
「早っ、笑うわ」
優しそうなおばさんが、ソフトクリームを二つ渡してくれて、ヒボシが受け取り、私に一つくれた。
「ありがと」
私がそう言うと、自分のソフトクリームをマイクのようにしてインタビューみたいに喋り出した。
「えーはい。今回活躍出来たのはー……はい。ラクノさんの声援のおかげだったと思います……はい。えー、今回も……はい。いい試合が出来たと思います」
「長いよ!溶けてんじゃんアイス!」
この子より面白い子、絶対世界にいないよ。
超弩級のえこひいき。
ヒボシはそう言う私の背後、ずっと先を、口を開けて見ている。
「どしたの?アイス食べて凍るネタはもう見飽きたよ」
「ラクノ……あれ……」
ヒボシが私達が来た道のアーケードの上方を指差す。
私達の傍を沢山の人が駆け足で逃げるように進んでいる。顔が必死だ。
私は振り返った。
「あれ……なんなのよ……」
何か大きな存在がアーケードに浮遊している。物凄い量感で、その一体でほぼ道を占領している。
人のような質感の肌で、上半身だけの巨人みたいだ。
かなりズタボロのくすんだ赤色のローブを羽織り、重力に反して不自然にひらひらとたなびかせている。
顔にはパーツが何も無い。オオアリクイの頭部の骨のような形の特徴的な仮面をつけている。
あの巨体で浮いてるのはどういう原理なんだろ……
「お化けかな?怪獣の」
ヒボシが言った。
斬新な発想だけど、あながち間違いじゃなさそうだ。
「とりあえずもう行こ、あいつがあそこでウロチョロしてるうちに」
私達は、もうすぐそこにあるであろう、闇端ロワクの占いの館へと急ぎ足で向かった。




