神戸フルコースの呪文、港の魔術ね!
翌日、私達は神戸三宮へと赴いた。ヒボシが推している、闇端 ロワク(ヤタン ロワク)と言う、オカルト界隈では、知る人ぞ知る有名人らしい存在が神戸元町で一日限りの占いイベントをやるらしいからだ。それは、ごくわずかな人しか知らない極秘情報でもあるんだとか。
ヒボシがどうしても闇端ロワクに会ってみたいと言うから付いて行く次第となった。
正直少し乗り気では無かった。というのも、ヒボシ曰く、彼女は都市伝説的なレベルで『魔女』だと噂されているらしいからだ。
『魔女』それは、最上級のデーモンや、多数の異形を束ねる魔の王にも匹敵すると世間で認知されている存在。
下級デーモンですら出現すれば、政府が手を焼く程の存在であるのに、最早、人間がどうこうできる相手では無い存在なのだろう。
そんな理外の存在がいる所に、ヒボシを連れて行きたくは無かったのだ。
でも、一緒に行くと既に約束をしてしまっていたし、笑ってしまう程に楽しみにしているヒボシをがっかりさせたくなかったのだ。
そうして私の家の最寄駅から、阪神沿線で西宮市、芦屋市、神戸市と移り変わる街並みを若干不安な気分で車窓から眺めながら、ものの三十分程で神戸三宮駅へ到着し今に至るわけだ。
取り敢えず切り替えよ。占いさえ終わらせれば神戸のデート自体は絶対楽しいから。
お洒落な住居が並ぶ異人館も行きたいし、遊び尽くせない程沢山の商業施設や飲食店が入っているセンター街も絶対外せない、海を堪能しながらクレープ食べたり観覧車乗ったり、ハーバーランドのデートも素敵な事間違い無し。
うん、楽しくなってきた。
「まだ少し時間あるね、どうする?」
地下から地上に上がり、センター街へと続く巨大な横断歩道の傍でヒボシが言う。
目の前には、大勢の人が行きかい、何車線あるんだろうかと疑問になる程の道路が街を貫いている。
元町商店街が目的地なら、やっぱり三宮センター街で時間潰すのが良いかな?直進で繋がっているだけだし。異人館の方は坂道で距離あるから時間的に無理あるし、ハーバーランドって基本的に三宮を満喫した最後に行くみたいな雰囲気あるしね。
あ!旧遺留地のお洒落なカフェなんてどうだろ……?
あーダメだ、ダメだ。ヒボシと行きたい所があり過ぎて、滅茶苦茶迷っちゃう。
やっぱり無難にいこ。
「センター街で時間潰そっか?」
私は横断歩道を渡り、既にセンター街の方へと向かいながらヒボシに言った。
「そだね、占い終わったら、私ハーバーランド行きたいかも!」
じゃあ、今日の所は異人館はパスだね、ちょっと惜しいけど。私達はずっと一緒にいるんだからいつでも行けるし。
「うん、ありだね!海見ながらクレープ食べようよ、観覧車にも乗っちゃおっか!?」
ノリノリな声色で言う私。
「さいっこうだよ!ラクノー」
ヒボシは天を見上げ手を組み目をパチパチさせている。
「中華料理とか明石焼きもありだね!奮発して神戸牛とかもいっちゃう!?」
私は神戸フルコースの呪文を唱える。
「きゃあっ!」
ヒボシはとうとう楽しみ過ぎる心が爆発し、軽い悲鳴を上げてから、飛行機みたいな格好をして走り出した。
「あー!ちょっと!何処行くのヒボシ!」
ダメだ、ホント周り見えなくなってる。偶にあるんだよねあの子、自分の世界入っちゃうこと。かわいすぎて腹立つんだけど。
その時、はしゃぎまわっていたヒボシが道から外れた場所で急にピタリと止まりった。
「どしたの?飛行機ちゃん」
私は駆け寄る。ヒボシの目線の先の物を見て一瞬で判断。
「行こ……」
「うん……」
私はヒボシの手を引き、そこから遠ざけた。
なんて忌まわしい雰囲気なんだろ……
ヒボシの目線の先、街路樹の根元にあったのは、四十センチメートル程の壺で、見た事の無い文字が書かれたお札が沢山張られていた。そして一番異常なのは、壺の口や底から、得体の知れない獣のような腕と足が幾つか生えていた。
非常に気味が悪い、浮かぶのはその一言だった。




