弱っちいのに強引なとこ、凄く好き。
暗がりの部屋で、月明かりが窓から射しこんでベッドに優しく落ちている。
今、私とヒボシしかこの世界にはいない。
私は夜の匂いを滑るように、ヒボシの首筋にそっと触れた。
「ふふっ!くすぐったいよ……」
彼女は甘い瞳をキラキラとさせ、頭を傾けて私の指を挟んだ。
「ほんとかなぁー?じゃあこれは?」
私はもう片方の手で、反対側の首筋をこしょばす。
「もーおぉーっ、ぐふふふふ」
静寂の部屋に、ヒボシの嬉々とした声が響き渡る。
「お返しだもん」
ヒボシは距離が無くなる程に私にくっつき、私の首筋を柔らかい唇で優しくあむっと噛んだ。
「ちょーとぉ、こしょばいんですけどー」
ふざけた声を出す私。
しかし、他にこれ以上大切なモノは無いと言う程に、優しくヒボシの頭を撫でる。
「……もっと撫でて」
ヒボシの声色が少し真剣になった。
「よしよし、甘えん坊さん」
こういうのは、えっちな事なのかな?
知らない。
ただ、ヒボシの体温と静かな部屋とシーツの肌触りが無性に落ち着くだけ。
私には透明な世界にしか視えない。
ヒボシは寝息のように穏やかな呼吸をたてて、じーっと私に撫でられている。
「回復した?」
私の胸に顔をうずめるている耳元で、こっそり聞いてみた。
「イヒヒ、全回復」
そう言って、にょろにょろっと私の体に上がってきては、蠱惑的な目を私の目の直前まで持ってくる。
「次、ラクノの番だよ」
「ふふっ、待ってましたー!」
恥じらいを隠すように飄々と言う私、頬の赤さできっと全て見透かされているだろうけど。
「言って」
ヒボシが真面目な顔で言う。
「ん?」
私は顎に人差し指を当てて、なるべく可愛く見えるように首を傾げた。
「撫でてって、言って」
弱っちい時がある癖に、こういう時は凄く強引になるのが堪らなく好き。
「んーどうしよっかなぁー?」
「言って!」
ちょっと怒ってるじゃん。
しゃーないね。
「わたし色んな事が怖いの……いっぱい撫でてくれる?」
ヒボシは満足そうに、にんまり笑う。
そして、王子様みたく私を何からも守ってくれるようにしっかり抱き締めては大胆に撫でだした。
「あ……っと……うぅ……お手柔らかに」
私はこれに凄く弱い。
おちゃらけた自分なんか全部剥がれちゃうぐらいに、ヒボシにされるがままになっちゃう。
これもヒボシの魔術なんじゃないかって疑うぐらい。
このままじゃ……私……負けちゃう。
「えいっ」
私はパクっとヒボシの耳を唇で噛んだ。
「ひゃあ!」
いつもの弱っちいヒボシに戻った。よわかわいい。
目と目が合った。
蒼と朱の瞳は対等となる。
私達はお互いが持つ宝石から目が離せない。
気持ちが堪らなく溢れ出しそうで、ギュっとヒボシの両肩を握ってしまう。
欲しいよ、この子が欲しい。
ヒボシは私の頬を、聖杯みたいに両手で触れだした。
そのまま、親指で私の唇をさする。好きだって気持ちが伝わってくる。
私はゆっくり瞬きをして、薄笑いしながら言った。
「チュー……しよっ……うぐ……」
言葉が終わる前に、ヒボシは熱烈なキスをしてきた。
圧倒されつつも、私は負けじと押し返しキスをする、何度も何度も。
過去の傷も、耐えがたい孤独も、私達は何度だって舐め合う。
私の闇を消して欲しいと、君の闇を消してあげたいと、涙を流しながら唇を重ね続けた。
……
……
お互いの息はまだ荒い、熱のこもった私達の吐息が愛を匂わせる。
「好きだよ……ずっと一緒にいてよね……」
懇願する私。
「うん……ラクノがいないともう生きれないよ……」
世界に哀願するヒボシ。
最後に私達は思い切り抱き締め合った。




