凄く嬉しかったよ、ありがとう。
窓の外も真っ暗になり、私達は煌煌と青白く光るテレビの前で、ベッドに座り
二人で同じ掛布団に包まっていた。
テレビには、配信サブスクにあったヒボシオススメのオムニバス形式のオカルトアニメが流れ、ベッドの上にはポテチの袋、テーブルには炭酸ジュースがある。
私達は肩を寄せ合い、ワァッ!とかキャー!とか言ったり、難しい話にボーっと集中して無言になったりしている。
長時間、ヒボシの温度を隣に感じられるのは私的にはかなり嬉しかった。それがどのような感情なのかはまだ確定してはいない……はずなんだけど。
そのオカルトアニメは凄く不思議な話ばかりだ。赤翼信仰という都市伝説にちなんだ神話、シグナルエコーと言う、太古の世界の声によって出来た存在の話、遙未来に生きた愛を知る為に奔走する人工知能の話、異界に喰われた現代の街の話など、どれも幻想的で、題材としてカルマをテーマとしているような、やけに深い設定の話ばかりだった。
ヒボシは何度も見ているらしいのだが、私より目が釘付けだ。話の最後に、この話は実話を元に作成していますとテロップが出てくるたび、私は、『うそだーーー!』と突っ込んだ。それは、今日の昼の出来事を考えれば、あり得ない話では無いのだが、むしろ色々な物事にかなり筋が通る気もするのだが、流石にまだ私には壮大過ぎるそんな話達は受け入れられなかった。
「わたしはこの話、全部信じてるよ」
ヒボシが真っ直ぐな目でそういうもんだから、『あり得るかもねーへへ』と
タジタジになりながら簡単に態度を変えてしまう私。
その度、嬉しそうに笑って肩を寄せて来るから、人間、柔軟な方が得をするなとしみじみ思った。
「私ね、時々変わった夢を見るんだ」
テレビの画面を見ながら、唐突にヒボシが言い出した。
ヒボシもそうだったんだ……私はまだ自分の夢の話をこの子には聞かせて無い。
「へー、どんなの?」
軽い雰囲気で聞いてみた。
「私は、広い広い宇宙を巡っていて、沢山の出来事を見ているの」
「おおー規模でデカいね、なんかヒボシらしい」
「それでね、遥か長い時を生きていて、流星みたいに流れて流れては、様々な世界の美しい現象に見惚れてるの」
「さっきの話みたいだね」
「そうでしょ?でもね、ある日、その一つの何かに囚われて、地に落ちちゃうんだ……そこでいつも夢は終わるの」
ヒボシは夢の話なのに、やっちゃった……みたいな自分に呆れるような顔で言った。
そして、そのまま私の目を見つめる。
「何に囚われたの?」
私も見つめ返して言う。
「わかんない……ふふっ」
私達の横顔には流れ続けるアニメの青白い光が注ぐ。
ヒボシの目が銀河のように光った。
「わかんないんだ。ふふっ」
私は心なしか顔を近付けた。
「ねぇラクノ……」
ヒボシが割と大きい声で何かを願うような声を出す。
「ん、どした?」
平静に言いつつも、心臓がバクバクしている。顔と顔が近いから。
「権利、行使していい?」
あー、あれか。忘れてた。
「あー、ぶつかりおじさんの時の奴ね、いいよ。痛いのは無しだけど」
一体何するんだろ?そんな見つめちゃって。ふふっ。
「痛くないよ……」
ヒボシは頬を真っ赤に染め、消え入りそうな声で言う。
「うん、じゃあ、どぞ!」
……
ヒボシは何も言わずに、モジモジゴソゴソしだした。
「どしたの?そんなモジモジしちゃって?茶化さないから早く言いなよ。権利の期限切れちゃうよ?」
「むぅー……」
どうしようもないと言うように唸りだすヒボシ。
早く言って欲しい……私は待っているのだから……
「ヒボシの願いならなんでも聞くよ?」
ヒボシはとうとう、全てを投げだすような思いきった目をした。
そして、心の底から私に見惚れているような顔に変わる。
「チュー……したい」
あちゃー……
やっぱり私達こうなるよね。
ありがと。
凄く嬉しいよ。
ヒボシが勇気を振り絞りその言葉を言い、至極恥ずかしそうに俯いた時には、私の唇は彼女の唇に優しく触れていた。
それからしばらくの間、私達は、お互いの家を行き来して遊んだり、色んな所へ電車やバスで出掛けたり、二人で人生や色んな事について語り合ったり、美味しい物を食べてはしゃぎ合ったりと、夢のような日々を送った。




