おっ!ジャガイモ好きだね、の音頭。
自宅へ帰ると、即座にベッドに倒れ込み再び眠り込んでしまった。
……
……
二時間程して喉が渇きむくりと起き上がる。
また変な夢を見た。しかし、今回見た夢は、私の気持ちを表す普通の夢だろう。
王子様の服を着たヒボシが、お姫様みたいなドレスを着た私の手を引き、共にシュールで不気味なお城を脱出する夢だった。途中、城内に深い地割れみたいな場所があって、飛び越えないといけない選択に迫られた私は「わたし怖いわ」なんて如何にもお姫様っぽいセリフを吐くと、ヒボシは「落ちたらいい事あるかもよ?」と言い出し地割れの中へ飛び込んじゃって、私は大騒ぎ。
でも、ヒボシは魔法のジュータンに乗って、浮かび上がってきて、「ずっと一緒にいられる道具見つけたよ!!」って楽しそうに言って、私は喜んでそれに乗って、二人で夜空へ浮かんで行く夢。
ざっくりと夢を思い出し、無償に恥ずかしくなる私。
その傍らで、ヒボシは疲れたのかスヤスヤ寝ている。
私達は生き残ったんだ。
その実感が湧くと同時に、その寝顔が堪らなく愛しくなり、頭をゆっくりと撫でた。
「……むぅ……」
なんて可愛い起き方なのよ。
ヒボシは子供みたいに瞼を擦りながら起き上がる。
そして第一声。
「今日、泊まっていい?」
「勿論、今冷たい飲み物入れるね」
「だーいすきー」
ヒボシはベッドに座ったまま、寝ぼけ半分で少し大胆に私に抱き着く。
私は体も心もフルに回復した。
問題が去り、さらにはヒボシが家に泊まるという状況にもなり、俄然気分が上がってきた。
「わたしもだよー」
私は頭をくっつけて、あなたが大好きだよと抱き締め返す。
「ジュース入れて来るからまっててね」
私はヒボシの頭をポンポンとして冷蔵庫へ向かった。
「ふぁーい」
その声を背後に残しながら、今日の夜は何して遊ぼっかな?とワクワク考えていた。
出会って数日なのに、私は完全にヒボシが心の支えになっている。
蝙蝠のデーモンとの戦いの最中、ヒボシとの信頼関係の為なら命を懸けてもいいよ、そのぐらいホントに大好きなの、と、熱烈過ぎる言葉が自然に出てくるぐらいなのだから。
まるで、ずっと昔からの大親友みたいな感覚だ。前世とかで縁があったりするのかな?
私達はジュースを飲んだ後、交互にシャワーを浴び、その間にアプリでバーガーの宅配を頼んだ。
すっかり夕方になって、ヒボシはテレビをつけて、アニメがやっていたので、それをぼーっと見ている。子供向けの怪談アニメだ。
「ヒボシって、本当アニメ好きだよね」
「うん、大好き」
「じゃあゲームは?」
「ゲームはあんまりかなぁ、へたっぴだし。オカルト系のアニメが好きなんだぁ」
「一人で見て怖く無いの?」
「うーん、怖いけどぉ……ゾクゾクするのが楽しい!」
「ふふっ、やばい人っぽい」
「そだね!えへへ」
「ここだけの話、心霊スポット一人で行った事あるんだ」
ヒボシは私しかいない部屋でコソコソ言う。
「凄いね」
危ないけど。
「うん。でもね、怖くてお漏らししかけた、勿論しなかったけど」
無表情で、その言葉を語るのが無性に面白かった。ここだけの話って言ってたから、ちょっと怪しい。
「え!妖怪オシッコマンじゃん!」
流石に軽口過ぎたかな?
「だからしてないよ!」
なんとなく怪しい顔をしながらも、心外だとちょっとだけむっとするヒボシ。
外からバイクの音が聞こえ、インターホンが鳴った。
「来たみたい」
私は配達員からバーガーセットの入った袋を受け取り、部屋に戻る。
ヒボシはモジモジしている。
「どしたのヒボシ?」
「ホントに漏らしてないよ?ホントにホント」
滅茶苦茶気にしてるじゃん、さっきなんで暴露したの。
「はいはい分かってるって、そんな事より食べよ」
私はテーブルにバーガーを置き、もういいじゃんと話を切る。
「うん……でも……オシッコマンじゃないもん……」
私はバーガーとポテト、飲料を取り分ける。誰かにこんな事をするのは、
弟のカナタがまだ居た時以来だ。カナタも私の軽口でよくいじけてたっけ?
「じゃっ今日は、深夜、怖いアニメ見まくろっか?二人で布団にくるまっちゃったりして」
ほんの少し不純な気持ちが私の中にはあった。私の中ではとても純粋な気持ちなんだけれど。
「それいい!ポテトチップ食べながら見よ」
ヒボシはポテトを食べながら言った。機嫌が戻ったみたいだ。
「おっ!じゃがいも好きだねー」
私は音頭をとるように笑いかけた。
「そうジャガ!」
ポテトをぺこりとお辞儀させて、ニコニコ笑うヒボシ。
「あとで、ポテチ買いにコンビニいこっか?」
「うん!」
私達の明るい声が響く部屋の窓は、沈む夕日のオレンジに染まっていた。




