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いつかお姉ちゃんを守るんだ!できるよね!?ソリッドマン?

 翌朝、今日と言う日は、初めて心の底からの友達と思える子とデートをする日なので、しっかりとおめかしをしたくて、私は一旦家に帰る事にした。


 ヒボシは寝ぼけながら「服も下着も貸してあげるから帰んないでよー」と大人の真似事みたいな事を言っていた。しかし、十六歳の私達には深い意味なんて到底無く、友達とのお泊り会に近いニュアンスのやりとりだ。もっと幼い無邪気なやりとりかもしれない。


 正直言うと、ほんのちょっとだけドキッとはしたが。


 大人がどんなモノかは知らないが、私の中での私達の関係は、星屑が入ったビー玉みたいに綺麗で、胸が高鳴ってどうしようも無い程、堪らなく愛しいモノなのだ。




 私は阪急宝塚駅から阪神本線の武庫川駅まで向かう。この駅が私の家の最寄り駅だ。距離としては四十分という所で、乗り換えは二回だが意外と近い。


 阪急宝塚駅から私の住む市の中枢、阪急西宮北口駅までの間は、お寺や神社が多くお参りするのであろう人をよく見かける。また、有名な大学もいくつかあって、学生もかなり多い。


 そんな様々な人々を乗せた電車は、車窓から遙遠くに鮮やかな山々を見せ、近くには静かで整理された美しい街を映し出し、カタコトとゆったりしたスピードで進んで行く。


 私はまだ、少し眠たいまま車内をなんとなく見渡した。


 みんな揃ってスマホに夢中だ。きっとSNSか動画配信とかなんだろう。


 難しい顔をしたり、虚ろに見つめるその様は、一種の魔術にかかっているようだと思い、私は朝の電車内で一人、ふと笑った。


 今の自分には、異形や魔術の世界の方がリアリティがあるからかもしれない。


 むせかえるようなネットの世界の空気はあまり好きでは無く、私はそっち寄りの人間なのかもしれない。


 


 阪急西宮北口駅に到着し、乗り換えをする為に通る場所に、今日のデート待ち合わせ場所、カリヨン広場があった。なんとなく横目で見る。


 カリヨン広場は、様々な沿線に繋がる阪急西宮北口駅の広い構内の中央に位置し、沢山の鐘がくっついた大きな時計台が目印だ。周りにはベンチもあり、待ち合わせスポットとしては定番の場所として知られている。


 私は歩きながら、今日着る服を考えたり、ヒボシはどんなデートプランを考えてくれてるのかな?と、胸を躍らせていた。


 ヒボシの顔が何度も浮かぶ、さっきまで一緒に居たのにもう会いたい。


 心が彼女に染め上げられ、様々な不安を忘れている事に気がついた。


 


 そんなこんなで、自宅の最寄り駅に到着し、朝の静けさが漂う何の変哲の無い街に降りた。


 何の考えも無く、ただ自宅まで歩く。


 何も無い、ただ普通のいつもの道……


 あ……


 ソリッドマン。


 久しぶりだ。


 ソリッドマン……それは異形だ。


 体格は人型で六メートル程、全身が未来的な金属で出来ているみたいで、戦闘用に精密に組み合わせたであろうどのパーツもシャープで鋭い。緋色、翡翠、漆黒などの様々な色や形の刀を八本、背中に差している。


 頭部はデザイン的で小さく、目はレーダーみたいにビカビカ光っている。まるで、銀河の果ての剣豪のような見た目だ。


 ソリッドマンは私の家の近くにある公園のフェンス前で、門番みたいに堂々と立ち、こちらを見ている。異次元なスタイリッシュさが、やけに平凡なこの地に馴染んでるのがちょっと可笑しい。


 見た目だけでは無く、最近辿れるようになった魔圧の気配で視ても異次元なオーラを醸し出している。


 しかし私は、一切焦りなどはしない。


 何故ならソリッドマンは、かれこれ十年はこの土地にいるからだ。その間、問題は一度たりとも起こした事が無い。地元の人からはその強そうな見た目や、無害な所や、やけにこの区域だけが平穏な事から、まるで土着信仰みたいに崇められている雰囲気もある。


 二ヶ月に一回ぐらい、姿を現しては何もせず、また消えるのがいつものパターンだ。ちなみにこの名前はかつて生きていた私の弟、カナタが名付けた名前で、何故かそれが流行って、この一帯の人は今もみんなそう呼んでいるらしい。


 あの子は変なセンスがある子だったな……


 私とは正反対で友達からも人気があって、それに小さいくせに勇気も人一倍あって、本当に自慢の弟だった。


 きっと嘘だと思うが、ソリッドマンとも話をした事があるとも言っていた。


 その時には、クラス中の友達を公園に引き連れてベンチの上に立っては、その時の事を大袈裟なジェスチャーをつけて演説したりもしていた。


「ボクはいつかソリッドマンみたいにかっこよくなって、お姉ちゃんを悪い奴等から守るんだぁ!」と、一緒にお遣いに行った帰りに、小さな手で私の手を握りながら笑っていた記憶が残っている。


 しかし、現実はカナタが言った風になんて微塵もなってくれる事は無く、むしろ、吐き気がする程に厳しい物だった。


「カナタの嘘つき……」 


 私はソリッドマンを見てそう呟き、家路へ向かった。


 ソリッドマンは、いつもよりほんの少し神妙な気配を漂わせ、私の来た道を眺めていた。

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