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サラの曲剣と剣士の長剣が、幾度も激しく打ち合った。
剣士の剣は、見た目の細さに似合わぬ重さを乗せて振るわれる。速さと膂力を兼ね備えたその一撃を、サラは受け流し、いなし、しのぎ続けるが、打ち合うたびに、少しずつ後ろへと押されていった。
剣士がひときわ鋭い一撃を放とうとした、その足元へ、リオの投げた石が打ち込まれる。
狙いを逸らされ、剣士の踏み込みがわずかに鈍った。その隙を突いて、死角からライルが短剣を繰り出す。
剣士はかろうじて身を捻り、あと一歩というところで、三人はまだ剣士を捉えきれずにいた。
一瞬の間を置いて、剣士が剣を薙ぎ払う。
剣では受けられないと判断し、サラは大きく間合いをとって後退した。
その直後、三人がかりの連携を崩すべく、剣士は投石で隙を作るリオへと狙いを定めた。
「下がれ、リオ!」
サラの声に反応し、とっさに後ろへ跳んだリオだったが、剣士の鋭い突きが、その肩を切り裂いた。
すかさずライルが短剣を投げ、剣士の追撃を牽制する。
剣士は止めを刺すことはせずに、再び間合いをとるが、リオは手にしていた投石器を取り落としてしまった。
剣士の刃が、今度はライルへと向けられた。
左右から間断なく繰り出される連撃に、ライルは短剣で応じるが、受け続けることしかできない。
やがて、剣士の一撃がライルの短剣を大きく弾き飛ばした。
「お前の相手はあたしだ!」
自分から目を逸らした剣士に対し、サラが背後から斬りかかったが、剣士は、まるで背に目があるかのように振り向き、その一撃を長剣で受け止めた。
渾身の一撃を防がれたサラは、舌打ちとともに飛び退く。
再び、サラと剣士が対峙した。
「サラさん気をつけて! 深追いは危ない!」
サラは荒い息を整えると、声をかけてきたライルへと、わずかに視線を送った。
「ライル。——あとは任せたぞ」
サラは今までよりもさらに強く地を蹴り、剣士へと一直線に迫った。
振り下ろされた曲剣を、剣士が弾き、そのまま流れるように、その切っ先がサラの胴を狙って伸びた。
「そう来ると思ったぞ」
剣士の突きに構わず、サラは一歩前に踏み込んだ。
振り上げた曲剣が、剣士の兜を真っ向から打ち割る。
だが同時に、剣士の刃も、サラの脇腹深くに突き立っていた。
「サラさん!」
ライルの叫びが響く中、サラは口元に笑みを浮かべた。
「たしか『剣聖』の刻印と言ったな。果たして、剣を失った剣聖はどうするんだ?」
脇腹に刃を受けたまま、サラが大きく身をひねると、体重をかけたその動きに、剣士の手から剣が引き離される。
得物を失い、剣士が体制を崩すと、背後に素早く回り込んだライルの短剣が、その喉を深く切り裂いた。
剣士は喉から鮮血を噴き上げながら、糸の切れたように石畳へと崩れ落ちた。
*
「サラさん、しっかりしてください!」
脇腹を押さえて膝をついたサラのもとへ、リオが駆け寄る。指の間から、みるみる赤いものが溢れ出していた。
ライルもまた、その傍らに膝をつき、サラを仰向けに横たえる。
「無茶をしますね」
「だが、勝つことが、できた」
サラの息は荒く、その声は、途切れ途切れだった。
「……ライル。お前は、進め。……クレイたちを、助けるんだ」
言い終えると同時に、サラの体から力が抜け、その瞼が閉じられた。
「サラさん! サラさん!」
リオの必死の呼びかけにも、サラが答えるそぶりはなかった。
ライルは、リオの肩の傷へと素早く目を走らせた。血は滲んでいるが、傷は浅い。
腰の道具入れを外し、ライルはそれをリオの手に握らせた。
「この中に、傷の手当ての道具が入っている。サラさんの傷を、できる限り塞ぐんだ」
リオが頷くのを確認し、ライルは立ち上がった。
サラの顔からは、みるみる血の気が引いていく。もとより浅黒い肌が、今は白く乾いて見える。
ライルは唇を強く結ぶと、回廊の奥へと駆け出した。




