↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻印の考古学者 〜冴えない能力の使い方〜  作者: 音鳴 凪
失われた王都

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/68

59

 リオが石柱を見つけ出し、方角を伝え、ライルが道を切り開く。

 そうして五人はいくつかの石柱を辿り終えていた。


「先生、どうですか?」


 クレイはすぐには答えず、手帳のページに引いた線をじっと見つめていた。

 そこには、これまで通り過ぎてきた石柱の位置が、点となって記されている。


「規模が大きすぎるので分かりづらいですが、やはり大きな円を描いていますね」


 クレイは手帳を掲げ、今まで歩いてきた石柱を結ぶ線を伸ばしてみせた。


「一本一本の傾きも、わずかに円の中心を向いている。かつてここには、途方もなく巨大な円環状の建造物があったんです」


 クレイは手帳の弧を、そのまま一つの円へと描き延ばしていく。いくつかの石柱の位置から割り出した点が、その円周にぴたりと重なった。


「円の中心は、ここから――」


 クレイは霧の奥、まだ何も見えぬ方角を指し示した。


「この方向へ進んだ先のはずです」


「リオ、その方角に、何か見えるか」


 サラに促され、リオが示された方へと目を凝らす。


「……何も見えません」


「どうしますか、先生」


「このまま無闇に歩いても仕方ありません。ライル、君が直線を保てる自信がある距離までは行ってみましょう」


「分かりました。目印がない以上、慎重に進みます」


 ライルは、クレイにもう一度目指すべき方向を確認すると、リオに向き直った。


「リオ、何か見えたら、すぐに教えてくれ。頼りにしているぞ」


「はい。任せてください!」



 中心とおぼしき位置に近づくにつれ、湿原は次第に浅くなり、足が取られることも少なくなっていく。


「見えました!」


「何が見える?」


 ライルは一度立ち止まると、リオに先頭を譲る。

 リオが再び霧の奥を覗き込むと、今までの石柱とは違う、しかし、確かに人工物と思える何かが見えた。


「今までの石柱とは違うようです」


「行ってみましょう」


 振り返ったライルに、クレイが頷く。


「そこが目的地かもしれません」


 濃かった霧が、中心に近づくにつれ、わずかに薄らいでいく。


 やがて一行は、湿原の只中にぽつりと残された、乾いた石の島へと足を踏み入れた。

 ところどころ崩れかけているが、石畳の広場が広がっている。


 その中央に、人の背丈の二倍はあろうかという、巨大な石碑がそそり立っていた。


「これは、イルメイアの祭壇に似ていますね」


 石碑を見たクレイは、イルメイアの回廊に置かれていた祭壇を思い出した。


「でも、こちらのほうがはるかに大きい。そして、やはりもっと古い時代のものですね」


 滑らかに磨き上げられていたイルメイアのものとは違い、表面は荒く、削り出したままの岩肌に、深々と文字が刻み込まれている。


「イルメイアのものと似ているのであれば、これも管理者の力で動くのでしょうか?」


「アルマさん、ここの文字は読み解けますか?」


 アルマはクレイが指差した石碑に刻まれた文字に触れ、その刻印の能力を解放する。

 だが、刻印は淡い光を瞬かせただけで、すぐに力を失ってしまった。


「駄目です。力が効きません」


「この文字は、ソルステンで見た歴史書に書かれたものと同じでしょうか?」


「似ていますが、語句の配置が違うところが多いです。私も見たことがありません」


 クレイは腕輪を左手にはめ直し、石碑の前に立った。


「とにかく、試してみましょう」


「何が起きるか分からない。アルマとリオは下がっていろ」


 サラの言葉でアルマとリオは石碑から距離を取り、間にライルとサラが立つ。


 クレイは大きく息を吸い、腕輪に込められた管理者の力を呼び起こす。そして、荒い岩肌に、そっと左手をかざした。


 石碑に刻まれた無数の文字が、一斉に青白い光を帯び始める。


 光は文字から文字へと伝わり、やがて石碑全体が、脈打つように輝きを増していった。


 次の瞬間、石碑の前の空間が、大きく歪んだ。

 歪みの中心から、光が滲み出すと、それは揺らめきながら、次第に一枚の板のような形をつくっていった。


「これは、扉か?」


 取っ手も蝶番もないが、サラの言葉どおり、それは光そのものでできた扉だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。