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リオが石柱を見つけ出し、方角を伝え、ライルが道を切り開く。
そうして五人はいくつかの石柱を辿り終えていた。
「先生、どうですか?」
クレイはすぐには答えず、手帳のページに引いた線をじっと見つめていた。
そこには、これまで通り過ぎてきた石柱の位置が、点となって記されている。
「規模が大きすぎるので分かりづらいですが、やはり大きな円を描いていますね」
クレイは手帳を掲げ、今まで歩いてきた石柱を結ぶ線を伸ばしてみせた。
「一本一本の傾きも、わずかに円の中心を向いている。かつてここには、途方もなく巨大な円環状の建造物があったんです」
クレイは手帳の弧を、そのまま一つの円へと描き延ばしていく。いくつかの石柱の位置から割り出した点が、その円周にぴたりと重なった。
「円の中心は、ここから――」
クレイは霧の奥、まだ何も見えぬ方角を指し示した。
「この方向へ進んだ先のはずです」
「リオ、その方角に、何か見えるか」
サラに促され、リオが示された方へと目を凝らす。
「……何も見えません」
「どうしますか、先生」
「このまま無闇に歩いても仕方ありません。ライル、君が直線を保てる自信がある距離までは行ってみましょう」
「分かりました。目印がない以上、慎重に進みます」
ライルは、クレイにもう一度目指すべき方向を確認すると、リオに向き直った。
「リオ、何か見えたら、すぐに教えてくれ。頼りにしているぞ」
「はい。任せてください!」
*
中心とおぼしき位置に近づくにつれ、湿原は次第に浅くなり、足が取られることも少なくなっていく。
「見えました!」
「何が見える?」
ライルは一度立ち止まると、リオに先頭を譲る。
リオが再び霧の奥を覗き込むと、今までの石柱とは違う、しかし、確かに人工物と思える何かが見えた。
「今までの石柱とは違うようです」
「行ってみましょう」
振り返ったライルに、クレイが頷く。
「そこが目的地かもしれません」
濃かった霧が、中心に近づくにつれ、わずかに薄らいでいく。
やがて一行は、湿原の只中にぽつりと残された、乾いた石の島へと足を踏み入れた。
ところどころ崩れかけているが、石畳の広場が広がっている。
その中央に、人の背丈の二倍はあろうかという、巨大な石碑がそそり立っていた。
「これは、イルメイアの祭壇に似ていますね」
石碑を見たクレイは、イルメイアの回廊に置かれていた祭壇を思い出した。
「でも、こちらのほうがはるかに大きい。そして、やはりもっと古い時代のものですね」
滑らかに磨き上げられていたイルメイアのものとは違い、表面は荒く、削り出したままの岩肌に、深々と文字が刻み込まれている。
「イルメイアのものと似ているのであれば、これも管理者の力で動くのでしょうか?」
「アルマさん、ここの文字は読み解けますか?」
アルマはクレイが指差した石碑に刻まれた文字に触れ、その刻印の能力を解放する。
だが、刻印は淡い光を瞬かせただけで、すぐに力を失ってしまった。
「駄目です。力が効きません」
「この文字は、ソルステンで見た歴史書に書かれたものと同じでしょうか?」
「似ていますが、語句の配置が違うところが多いです。私も見たことがありません」
クレイは腕輪を左手にはめ直し、石碑の前に立った。
「とにかく、試してみましょう」
「何が起きるか分からない。アルマとリオは下がっていろ」
サラの言葉でアルマとリオは石碑から距離を取り、間にライルとサラが立つ。
クレイは大きく息を吸い、腕輪に込められた管理者の力を呼び起こす。そして、荒い岩肌に、そっと左手をかざした。
石碑に刻まれた無数の文字が、一斉に青白い光を帯び始める。
光は文字から文字へと伝わり、やがて石碑全体が、脈打つように輝きを増していった。
次の瞬間、石碑の前の空間が、大きく歪んだ。
歪みの中心から、光が滲み出すと、それは揺らめきながら、次第に一枚の板のような形をつくっていった。
「これは、扉か?」
取っ手も蝶番もないが、サラの言葉どおり、それは光そのものでできた扉だった。




