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四人は街の古い地区を抜け、丘に向かう道を辿っていく。
丘の北東の麓にあたる一帯は、雑草が腰の高さまで伸び、灌木が行く手を阻んでいた。
道らしい道はなく、長年にわたって人が立ち入っていないことが見てとれる。
「手分けして探しましょう。丘の麓に沿って、入口の痕跡を探してください。石組みや地面の不自然な窪みなど、人工物の気配があれば教えてください」
クレイの指示で、四人は間隔を空けて麓の荒れ地を歩き始めた。
荒れ地は一面に草と灌木が茂り、地面の様子を確認するだけでも骨が折れる。
「クレイ、こっちだ!」
しばらくして、サラの声が、灌木の向こうから飛んできた。
クレイたちが駆け寄ると、サラは地面の一筋を指差していた。草に覆われてほとんど見えないが、地面がわずかに踏み固められた痕跡がある。
「獣道に見えるが、少し違う。幅が一定で、まっすぐすぎる」
砂漠で育ったサラの目には、地面のわずかな変化が見えていた。砂の上の足跡を読むように、草の下に隠れた「道」の名残を辿っていく。
「この道は、丘の斜面に向かって続いている」
サラの導きに従い、灌木を掻き分けながら丘の斜面を上っていくと、道の痕跡は次第にはっきりしてくる。
しばらくすると、斜面の途中で道の痕跡が途切れ、その先にあったのは、土砂に半ば埋もれた石の壁面だった。
「これは……」
クレイが土を払うと、石組みが姿を現した。明らかに人の手で積まれたもので、塔の外壁と同じ石材だ。
左手で触れると、考古学の刻印がかすかに反応する。
「塔と同じ年代の石材です。間違いないでしょう」
さらに土を払っていくと、壁面の中に扉の輪郭が浮かび上がった。石材を組み合わせた頑丈な造りで、両開きの構造になっている。
ライルが周囲を確認するが、扉は土砂で半分塞がれていた。
「なんとかして、もう少し掘り出しましょう」
クレイとライルが大きな石を動かし、サラが土を掻き出す。
アルマは扉の表面に残る文字の痕跡を確認していた。
「この文字、塔の中で見つけたものと同じ様式です。やはりここが――」
だが、アルマが言いかけた言葉は、空気を裂く鋭い音にかき消された。
「伏せろ!」
サラが叫ぶのとほぼ同時に、ライルがクレイの前に身を投げ出していた
「ライル!」
クレイの叫びが丘の斜面に響いた。
どこからか飛来した矢が、ライルの肩口に突き立っていた。
だが、ライルは膝をつきながらも、クレイを背後に庇う姿勢を崩さない。
「……先生、下がってください」
肩口から血が流れ落ちている。しかし、ライルの目は矢が飛んできた方向を見据えていた。
クレイも斜面の上方を凝視するが、灌木の影が揺れるばかりで、射手の姿は見えない。
四人が身を潜めて警戒を続けていると、斜面の上方から灌木を掻き分ける音が聞こえてきた。
一人ではない。複数の足音が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
やがて姿を現した黒い装束の集団は、その手に弓と剣を携えていた。
「ご苦労だった。我々が見つけられなかった扉を、こうも簡単に見つけてくれるとはな」
先頭に立つ男の声が、冷たく響いた。
「ライルを連れて下がれ!」
曲剣を抜いたサラが三人の前に立ちはだかり、黒装束の一団を睨みつける。
矢が再び飛来するが、サラが曲剣で叩き落とし、同時に前方の敵との間合いを詰めていく。
クレイはライルの腕を肩に回し、斜面を下り始め、アルマも慌ててその後を追う。
背後ではサラの曲剣が敵の剣を弾く音が響いていた。
「逃すな! 」
追手の声が迫るが、サラが斜面の途中で立ちはだかり、狭い獣道を塞ぐ。
「行け! あたしもすぐに追いつく!」
クレイはライルを支えながら、アルマとともに麓の荒れ地を駆け抜けた。
ライルの足取りは次第に重くなっていく。肩口の矢はまだ刺さったままで、装束が赤く染まっていた。
「ライル、しっかり」
「大丈夫です……まだ、走れます……」
その声は明らかに力を失っていた。
やがて追いついてきたサラは、息を荒げていたが、大きな傷はないようだった。
「振り切った。だが、すぐに追ってくるだろう」
「このまま街に戻るのは危険です」
「ここに来る途中、向こうの岩場の奥に……洞窟が見えました」
ライルが肩の痛みをこらえながら、かすれた声で方角を示した。




