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「第二王朝の時代、その塔はどういう位置づけだったのですか?」
「我々の研究では、その塔はソルミア河を含む東部地域の中継拠点として、重要な役割を果たしていたと考えている。現在は『ガランの塔』と呼ばれているそうだ」
「現在は、というと、昔は違う名があったのでしょうか?」
「当時の呼び名は失われてしまっているのだ。だが、東部地域は、その塔からの恩恵を受け、驚異的な豊穣をもたらしていたと伝えられている」
「今はそうではない、ということですね」
「ああ、今は普通の農地が点在するだけだ」
「そこまで分かっているとは」
クレイが感心したように言う。
「我々は長年この研究に携わってきた。ガランの塔についても、以前から調査したいと考えていたが、博士の一派からの監視もあり、その機会は持てなかった」
「私は東のほうには行ったことがないのですが、このあたりからどれくらいの距離でしょうか?」
「徒歩で10日ほどだ。まずソルミア河に辿り着き、そこを渡るとガランの街がある。塔はそこからさらに半日ほど東だ」
ライルは手元の地図を取り出すと、エルンストの言葉に該当する箇所に印をつけていく。
「我々としても調査を続けたい。そのため、君たちがガランの塔を調査した後、ガランの街で合流することを提案したい」
「わかりました。合流後、その結果に基づいて、次の行動を決めましょう」
クレイはエルンストの提案に頷いた。
エルンストたちは施設に関するさらなる情報収集を続け、クレイたち四人は先行してガランの塔を調査する。その後、ガランの街で落ち合い、情報を共有する計画だった。
ランタンの灯りの下、さらに細かい計画が話し合われた。
「夜明けとともに出発するほうが良いだろう」
エルンストはそう言い残し、テントを出て行った。
*
「サラさん、エルンストさんたちは信用できそうですか?」
装備を整えながら、クレイが低い声で問いかける。
「少なくとも嘘はついていない。あたしの能力が感じ取れる範囲ではだが」
「彼らがここまで知っているということは、少なくとも『星の力』の本質について、我々と考えを共有していると思います」
クレイは、エルンストから託された「歴史を記す板」を慎重に包む。
「しかし、ヴェルナー博士の動きが分からない以上、すべてを明かす必要はないでしょう」
クレイはアルマの方を振り返った。
彼らが味方であるとしても、アルマの読解術の力は、今はまだ秘密にしておくべきだろう。
荷物の準備が終わり、四人は互いの装備を確認し合った。限られた食料と水、武器、そして各自の特技を活かせる道具類。
クレイは慎重に石板を背嚢の中央に収め、剣を腰に下げる。アルマは図書館から持ち出した文書は置いてきたが、その内容を記したメモ帳を忍ばせていた。
サラは曲剣を確認し、ライルは地図と羅針盤を準備に加えた。彼の山岳ガイドとしての経験が、この旅でも大いに役立つはずだった。
夜明けの光が水門施設に差し込み始めた頃、四人はエルンストたちと別れの挨拶を交わしていた。
「気をつけるがいい」
そういって、エルンストはクレイの肩に手を置いた。
「幸運を祈っている」
「私たちも同じ思いです。歴史から目を背けるのではなく、しっかりと向き合って、正しい未来を選びたい」
その言葉に、エルンストは満足そうに微笑んだ。
朝靄の中、東の空には淡い光が広がり始めていた。遥か遠くに見える地平線の彼方に、ソルミア河が流れ、その先にガランの塔が佇んでいるはずだった。
「では、行きましょう」
クレイの言葉に、四人は歩み始めた。
遠い昔、『星の力』によって豊かさをもたらしていたガランの塔。その本当の姿を確かめるために、四人の旅は続いていく。




