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地上に向けて戻る途中、ライルが急に立ち止まった。
「……複数の気配が近づいています」
「お前たちはここで待っていろ」
サラがひとり通路の先の様子を確認しにいくと、ライルの言葉通り、通路が交差するあたりに複数の灯りが揺らめいているのが見えた。
「待ち伏せのようだな。しかし、なぜあたしたちの動きが……」
「サラさん、ほかのルートはないのですか?」
「ないことはないが、だいぶ遠回りになる。……その子の疲労を考えると、あまり遠回りしている余裕はないだろう」
アルマはまだ先ほどの影響が色濃く残っているようで、その顔色は冴えないままだ。
今はライルが支えることで、なんとか足を動かしている。
「それに、砂漠の民に後戻りという選択肢はない」
サラは剣を半分ほど鞘から抜き、刃の具合を確かめるように光に透かす。
「しかし……」
彼女の言葉に、クレイは一瞬ためらいを見せた。
「あたしが先頭で突っ込む。一人はその子を守ってな。……もう一人は適当に」
サラのその雑な指示に、思わず顔を見合わせるクレイとライルだったが、他の選択肢を探る余裕はない。
通路を進むにつれ、前方から物音が近づいてくる。やがて松明の明かりが、分岐点に人影を映し出した。
「砂漠の守護者の力を見せてやろう」
サラは曲剣を完全に抜き放つと、一瞬にして加速する。
「敵だ!」
「こいつ!」
相手が動揺している隙をついて、サラの曲剣が襲いかかる。
曲がった刃が描く軌道は、まるで砂嵐のように複雑に絡み合い、応戦しようとする相手を打ち倒していく。
アルマをクレイに預け、両手に短剣を持ったライルも駆け出していく。
サラは自らの強さを見せつけるように、あえて敵の数が多い場所へ身を投じていく。
クレイはアルマを背にしたまま、剣を構えて警戒していたが、ライルの巧みな動きによって、クレイたちのところまで敵が迫ることはなかった。
「……話が違うぞ、て、撤退だ!」
鬼神のような強さのサラを前にして、残った敵は戦意を失い、バラバラと逃げ出していく。
「これで当分は追ってこれないだろう」
サラは敵を追うことはせず、大きく息を吐き出すと、ようやく曲剣を鞘に収めた。
「サラさん、お強いのですね……」
先ほどのサラの戦いぶりに、アルマは大きく目を見開いている。
「砂漠の民に伝わる剣術だ。砂漠の民は、守護者として強くあらねばならない」
「助かりました。今のうちに急いで戻りましょう」
*
街道から外れた山道を通り、四人が町に戻ったのは夜も更けた頃だった。
報告のため、砂漠の民の本拠地に戻ったサラと別れ、宿の一室に戻ったクレイたち三人は、それぞれに疲れを見せながらも、神殿での出来事を振り返っていた。
「私が見た過去の記憶は、あくまで一部なのかもしれません。まだ他にもたくさんの記憶が、神殿の中に封じられているはず……」
アルマは記憶が薄れないうちにと、羊皮紙に情報を書き込んでいる。
「氷河の遺跡は各所に『星の力』を送信するための役割をしていました。それに対して、ここの神殿のように、その力を受け取るための施設があった――」
「つまり、このような施設は他にもいくつかあるのではないかということですね」
「クレイさんはなにか心当たりがありますか?」
アルマに問われて、クレイは、今まで調査した遺跡、文献で知った遺跡や遺構についての記憶を辿る。
「難しいですね。僕が知る限りでは、他に似たような遺構は思い出せません。……ライル、君は?」
「たとえば、東の大河を渡った先に、高い塔のような建物があるという噂は聞いたことがあります」
「塔ですか?」
「ええ。昔、東方から来た商人たちから聞いた話を思い出しました」
「……行ってみる価値はありそうですが、正確な場所が分からなければ」
「もしかしたら、ソルステンの図書館になら、何か情報があるのではないでしょうか」
二人のやりとりを聞いていたアルマが顔を上げる。
「確かに、あそこならば、第二王朝期の建造物に関する情報も得られるかもしれない」
「しかし、今ソルステンに戻るのは危険です。特に王立図書館は、最も警戒が厳しいでしょう」
ライルの懸念はもっともだった。自分たちの状況を考えれば、今ソルステンに戻る選択肢には危険が伴う。
「何か、良い方法を見つけないと」




