↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第三章 レギウス村
62/142

61話 10日後の午後

俺たちは移民受け入れの為の準備を進めた。

50人を収容できる館を6館建て、井戸を12個作った。

水タンクには地下配管を行い、カッシーニ81から給水可能としている。

そのカッシーニ81は大レギウス湖からの引水路を作成中で、これが完成すれば浄水場としても活動する予定だ。


神の館も完成し、”建立の儀式”を済ませて神官たちも村人が来ることを楽しみに待っている。


この間にも採石場からは石の搬入、採掘場からは鉱石の搬入が始まった。

鍛冶場地区もそれぞれの材料置き場と溶鉱炉の製造に入っている。


また村人を管理する側面からも、村民台帳や身分証明書の用意。

税の徴収方法や法律などの説明資料。

村民間、そして村人と月の人との間で起こり得るトラブルの対応策。

その一環として、俺たち全員のボディスーツの胸元にはカメラが取り付けられ、映像記録を残すように対応した。


そんな準備に忙しい中、俺たち全員がオの国の王城に招かれた。

「エの国による王都騒乱事件の解決に尽力した者達」として功労賞を受け取った。

代表としてクリスは騎士勲章を授かり、アビー姫から受け渡された。


オーリウス伯邸は我々に引き渡され、レギウス邸となった。

壊れた窓の修理中ではあるが、俺たちの拠点がオの都にできた。

リサと甲板長が仕上げた転送門は見事に完成し、24個の魔石が光輝きレギウス村の転送門との通路を開けてくれる。


ザーリ辺境伯と別れて10日後、俺はマクレガー大佐とレイチェルと共にエの国に向かった。


◇


王都ミラルダ、王城内の一室。


ブリント辺境伯とザーリ辺境伯が互いに挨拶を交わし、ザーリ辺境伯は俺たちを紹介した後に退室した。

アラン子爵と合流し司法局で娘のサーシャに会うのだ。


「いやぁ、助かります。避難民を受け入れていただけるとは。」

ブリント辺境伯は長椅子に深く腰掛け笑顔を浮かべる。

礼儀上こちらはマクレガー大佐が村長として応対する。

「私も王都で何人かの侯爵様にお願いに廻ってみたんですが、どなたからも快い返事をいただけず。

外政局に申請して半年以上待たされましたよ。」

「それは大変でしたな。いただいた名簿では423人もの人数でしたが。」

「ええ、そうです。最初は50人ぐらいだったんですが、60日ぐらいの間に300人ですよ。

これは私どもの領内だけでは対応できないと思い王都まで陳情に来たのです。

私が出発した後も増えて、最終的に423人です。」

「今は増えてないのですか?」

「そうです。最後に来たのは、もう120日以上前ですね。

ですのでウの国の内乱も終息したと思いまして、領地にいる私の息子から避難民に国に帰る様に言ったんですが、何でも勝ったのが自分たちと敵対する側なので帰れない、と。

私どもで受け入れるにも、それほど耕作地が広い訳でもありませんし、土地を分け与えるにも今の領民たちが賛成するはずもなく。

ほとほと困って居た所で、あなた方の申し入れがありまして、大変うれしく思っております。」

「そうですか、ではこちらも受け入れ準備をしまして、3日後に受け入れを開始したいのですが、よろしいですか?」

「え、3日後ですか?そんなに早く?」

「はい。」

「ええ、いや、1日も早くとはお願いするつもりでしたが、3日後とは、これは早く息子に知らせなければ。

いや、しかし、早馬で手紙を手配しても4日は掛かりますぞ。」

「いえ、我々の空飛ぶ船で参ります。カン少佐。」

「空飛ぶ船!?」


マクレガー大佐に代わり、俺から驚いているブリント辺境伯に詳細を説明する。

だが、俺の説明も全く意味不明な言葉の様で、なぜ3日後に避難民たちを移動させられるのか理解できない。

なので、まずは王都を出て領地に戻る事を承知させた。

王都の館に戻り用意するというので、昼食後の15時に王都の南門の外での待ち合わせを約束して、この場は別れた。


◇


王城の中庭に置いてある連絡艇の前に1人の男が待っていた。

移民を希望した警吏の一人、ミララスだ。

彼は俺たちの姿を見ると頭を下げてきた。

「ミララス、準備はできたか?」

「はい、カン殿。私の家族とボーアンの家族が王都の南門の外で待機しております。」


俺たちは連絡艇に乗り込み、南門の外の街道脇に降りた。

少し離れた処にミララスの家族たちがいる。

「カン殿、お世話になります。」

ボーアンと奥さんが揃って頭を下げてくる。

「こちらこそ、我々の村に来ていただけると聞いて喜んでおります。まだ何もない村ですが、よろしくお願いします。」

「さぁ、村へご案内しますよぉ。お荷物はこの荷馬車ですねぇ。荷馬車に生き物は乗っていませんかぁ?」

「えっ、飛猫(トビネコ)のチーがいるよ。」

小さな女の子がレイチェルに言う。ミララスの娘さんだ。

「はい、あ、このカゴですねぇ。じゃあ、チーちゃんはちょっと抱っこしててもらえるかなぁ。」

レイチェルは飛猫の入ったカゴを娘さんに渡す。

小さな両手で抱えた大きなかごの中で、飛猫のチーちゃんは背中の翼をバサバサと動かしている。

「チーちゃんの他は生き物は乗っていないですねぇ。」

レイチェルの確認に両家族とも頷く。

それを確認し、レイチェルは馬を外した荷車を背嚢に入れた。

飛竜もそうだったが、袋の入口より大きい物を入れる光景は驚きだ。

ナノマシンはどうやってこの問題を解決しているのか。

いや、考えるのはやめとこう。


レイチェルは2台の荷車を仕舞うと、続けてレギウス村に遠見の窓を開く。

目の前から突然荷馬車が無くなり呆然としているふた家族を導いて、レギウス村に移動した。

窓をくぐれば、レギウス村だ。

レイチェルは背嚢から荷車を出し、家族の家に荷物を運び入れるように指示した。

ミララスの家族は奥さんと娘が2人と飛猫のチーちゃん。

ボーアンの家族は奥さんと息子が1人。

レギウス村の新しい村民だ。

パメラによって村民登録手続きが成され、村と家の説明を受けている。

片付けの手伝いには甲板部員から第二班のパトリックとラザロスが来てくれた。


マクレガー大佐はカッシーニ81に戻った。

レイチェルから423名の避難民リストを受け取り、村民台帳を作成する為だ。

作業にはエディ中佐とリンダが手伝うことになっている。

また、ディエゴ=チェイン国王宛ての親書も預かっている。

これはリサに連絡し、クリスから渡してもらう事にした。

「この前の離縁状の返事ですね。了解です。」

と言うリサを捕まえて話を聞くと、ディエゴ=チェイン国王からエの国宛ての親書を預かり、国境の町ミリンでエの国の国軍担当官に渡したそうだ。

そうか、だからあの書状がこんなに早くエの国側に渡っていたのか。


ボーアン家の荷卸しを手伝っていると、通りの北側で工作機3機が作業を開始した。

423名を受け入れるにはあと3棟が必要だ。

動き始めた工作機に子供たちが目を輝かせる。

子供たちに近寄らないように注意したら、質問攻めにあった。

昼食を第二班のキキが届けてくれるまで子供たちは工作機と俺を放してくれなかった。

その後はもちろん、工作機を動かしている操縦士の一人、キルスティンを子供達に紹介してあげた。


◇


午後、俺とレイチェルは連絡艇に戻ってきた。

数人が街道から見ているが、近付いてくる者はいなかった。


ブリント辺境伯一行の荷馬車の隊列は1510に南門から出てきた。


俺とレイチェルは街道で出迎え、ミララス家と同様のやり取りの後、荷馬車3台をしまい、一行を連絡艇に載せた。

連絡艇の床下格納は装備品を入れるのには良いが、この世界の荷馬車や馬を入れるのは無理だ。

この辺の設計思想も変えないといけないな。


ブリント辺境伯はご丁寧に護衛を6名雇っていたので、違約金と荷馬3頭を渡して帰ってもらった。


スクリーンに映した大陸図でブリント領の位置を確認して移動する。

約2時間で到着した。


◇


ブリント辺境伯の館で二人の息子を紹介された。

長男アンドレと次男ケビンだ。

そして避難民についての説明を受ける。

避難民423名、ブリント領に来てから亡くなった者も生まれた者もいない。

4つの村からの避難者で、4人の村長がまとめ役だ。

村の対立は無いが仲が良いとも言えない。

何か問題が起これば対立しそうだ。


今は館から20分程離れた場所にいるという。

ここの村人が朝と夕の食事の炊き出しを担当している。

423人分は重労働だ。

村人たちにも不満が溜まっている。


俺たちは連絡艇で移動し、4人の村長を集めた。


連絡艇前にテーブルと椅子を用意する。

こちらは俺とレイチェル、ブリント辺境伯にアンドレとケビン。

村長は4人。見た所50歳前後の男たちだ。彼らの後ろには護衛役なのかそれぞれ2人づつ8人の男が立っている。


レイチェルが各人の前にお茶のカップを配り、最後にテーブルの真ん中に魔道具を置いた。

オーリウス伯の所にあった物を真似て作った物で、これ自体はランプ代わりの光る魔石にすぎない。

「カン殿。これは?」

ブリント伯が魔道具を指して聞いてくる。

「これは、声を皆さんに聞かせる為の魔道具です。」

レイチェルに合図すると魔石を光らせる。

「てすてす、皆さん聞こえますかぁ、これから村長さんたちとお話しますぅ。皆さんも良く聞いていてくださいねぇ。」

レイチェルの声は連絡艇の外部スピーカーから大音量で避難民の元に届いた。

村長への話を同時に聞かせれば、こちらも同じ説明を繰り返ししなくて済むし、村長たちから改めて説明させる手間も無くなる。

マイクはレイチェルの左腕の情報パネルだ。


「では、ブリント辺境伯、皆さん、お話を始めましょう。」


◇


まずはこちらからの通達である。

423人全員を月の人のレギウス村に引き受ける。

村はまだ出来たばかりで何もない。

皆には仮住まいの家と食料と衣服が与えられ、後に元々の仕事、希望する仕事に就いてもらう。

これを断った場合、このブリント領にはこの後は居られないので、ウの国に送り返す事になる。

レギウス村への移動は3日後に行う。それまでに移動するか、帰るか考えて欲しい。

今現在病気やけがをしている者はレギウス村で治療が受けられるので、すぐに申し出て欲しい。


これを受けて村長の一人が言う。

「今の状態では何時までもいられないし、行けと言われれば行くしかない。もう帰る事はできない。」

他の3人の村長たちも同意見の様だ。


その後、病気で苦しんでいる2人を含む2家族8人を先にレギウス村に連れて行く事になった。


連絡艇を自動モード(メティス操縦)でレギウス村に戻した俺は3日後に来る事を約束して2家族を連れて遠見の窓でレギウス村に戻った。


ブリント辺境伯たち3人を置いて来たことに気付いたのは夜になってからだ。

申し訳ない事をした。

まぁ自分の領地だし、館まではなんとか戻っているだろう。


次回62話「移民受け入れ」

とうとうレギウス村に人々がやってきます。

第3章最終話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。