62話 移民受け入れ
第3章最終話です。
3日後、俺とレイチェルはブリント辺境伯を訪ねた。
前回の反省を踏まえ、今回は"嵐"と"強風"を連れて行く。
馬と馬車で移動し、避難民たちに会う。
彼らも少ない荷物を纏めて待っていてくれた。
レイチェルが遠見の窓を開け、リサも加わり2個所から名前を確認後に一人づつ通していく。
レギウス村の方もほぼ全員で受け入れ作業にあたる。
移民者たちに冒険者身分証を模したレギウス村村民証を渡し、首から下げてもらう。
次に、片手を健康チェック機に入れてもらい天使セリーヌによる簡易チェックを実施する。
現在病気に掛かっている者は医療センター送りだ。
要確認診断の者はマークされ、医療センターが空き次第、検査される。
集団生活だと伝染病が危険だからだ。
この健康チェックは当面は10日毎に全員に実施する。
大陸を渡った事で感染リスクが高まる、との天使セリーヌの進言に従った。
全員を移動させるのに3時間掛かった。
俺とレイチェル、リサはブリント辺境伯に礼を言い、レギウス村に移動した。
◇
423人の新たな村民だが、一つ問題があった。
15歳から35歳までの男性が圧倒的に少ない。
たった40人しかいない。
これは元々出稼ぎに出ていたり、内乱で志願兵になったり、徴兵で連れて行かれたり、国を脱出する時に犠牲になったりしたからだ。
男女比は男181人と女242人。
35歳以上は男68人と女102人。
15歳から35歳未満が男40人と女86人。
3歳以上15歳未満が男51人と女36人。
3歳未満が男22人と女18人。
3歳以上の子供の少なさは病気と食事によるものだろう。
男子優先の考え方も見えてくる。
9棟の大部屋に家族単位になるように入ってもらい、1棟あたり40人から50人で住んで貰っている。
室内には人数分のベッドと間仕切り用の木壁に食事用の大テーブルと椅子があるだけだ。
井戸とトイレは館の裏手に作ってある。
井戸は手押しポンプ式で子供でも扱える物になっている。
全員にまずは大部屋に入ってもらい、改めて村での過ごし方を説明する。
神の館と違ってここにはスクリーンとスピーカを付けているので第1館での説明を第9館まで同時に行える。
各館には月の人を3人づつ配置している。
ますはマクレガー村長とマーカス村長代理の紹介とマクレガー村長の挨拶。
神の館とヴァンサン=レイド神官と2人の教士も紹介した。
レギウス村の場所と周囲の環境の説明。
これは地図を見た事のない者が多く、良く分からない者も多いようだ。
次に簡単な月の人の説明をした。
この大部屋に案内される時にも、すでにカッシーニ81の巨体を見ている者は何人もいたからな。
月の人は通常は灰白色のボディースーツを着ているから、見れば分かる。
分からないことがあったり、何か欲しい物ややりたい事があれば月の人に聞け、と言っておいた。
甲板部員には、休憩時にはカッシーニ81の外に出て村人と会話するように言ってある。
キルスティンは既にミララスとボーアンの子供たちと親しくなっているし、その話を聞いたメラニーとレベッカも子供達と飛猫のチーちゃんに会いに行っている。
うちは女性の方が積極的だな。
最後にこれからの村づくりについての説明だ。
ひと家族ごとに今までの仕事ややりたい仕事を確認していく。
そして順番に必要な家、道具、設備を与えていき、この大部屋から出てもらう。
こちらからの説明が終わると、あちらからの要望が押し寄せる。
子供のミルクが欲しい。
着替えの衣服が欲しい。
洗濯の場所はどこだ。たらいはあるのか?
漁に出たいから槍をくれ。舟はあるのか?
獲物を狩るから弓と短剣をくれ。
畑を見せろ。
リサとレイチェルと甲板部員10人が買い物リストを作ってオの都へ買い物へ行く。
槍、弓、短剣が欲しい者は道路のカッシーニ81側に並べて受け渡しを順に行う。
畑を見たい者は広場に集合して村長たちに付いて南の畑を見に行く。
直ぐに昼食になり423人分を各館にデリバリーする。
423人は多かった。
多少の後悔はあるが村が村として活気づくと信じて走り廻った。
◇
100日が経過した。
大部屋からは人が居なくなり、広場に近い第8館、第9館を残し、他は解体することになった。
小型の舟が何艘も作られ大レギウス湖で漁が行われている。
鍛冶屋が出来て銛や矢じりに包丁や鍋が作られている。
パン屋はパンを焼き、革職人は靴を作り、服を縫う。
農家は畑で作業し、山小屋を拠点に獲物を狩る者がいる。
炭造り用の窯小屋からは煙が立ち昇る。
馬の世話をし、牛を追い、ヤギの乳をしぼる。
子供たちは文字を習い、算数を習い、外で遊び廻っている。
神の館からは、時を告げる鐘の音が村に響く。
ほとんどの者が自分の仕事を始める所までこれた。
オの国とエの国の国交も回復した。
エの国からの親書をクリスがチェイン国王に渡し、その返信を俺とレイチェルが外政大臣補佐官マンディス侯爵に渡す。
そんな配達請負を2度繰り返し史上初のスピード解決となった。
その労もあってエの国の王都ミラルダにもレギウス邸を置かせてもらった。
早速、転送門を置いてレギウス村との行き来を可能にする。
これで買い物の幅が広がった。
さらに俺たちならではの貿易もできる。
エの国は紙の生産が盛んでオの国より質が良い。
オーリウス伯邸から押収したメモや本の質を見ても明らかだ。
王都ミラルダで紙とインクとペンを仕入れオの都で売る。
逆にオの国の南方の町イバーラで上質の麦粉を仕入れて王都ミラルダで売る。
これはいずれレギウス村産麦粉に変更したいところだ。
こういった業務と連絡窓口を兼ねるために両国のレギウス邸には外務担当職員を4名ほど常駐させる事にした。
これには村民の中から希望者を募りやってもらっている。
昼間は館で、夜は村での生活だ。
そのエの国、王都ミラルダのレギウスの館にザーリ辺境伯の使いの者が手紙を届けに来た。
サーシャ姫は無事にザーリ領に戻り静養しているという、ザーリ辺境伯からの感謝の手紙だ。
そろそろ夏も終わり、涼しい風が吹いて来た。
■■■
はい、リサ=メンフィスです。
エの国方面のゴタゴタを片付けて、レギウス村の開発作業が始まりました。
司令部ではホーク大尉とパメラが村人さん達との話し合い担当で忙しく動き回っているでしょ。
レイチェルさんは生産部、というかホーキンス生産部管理官の補佐みたいな感じ。
あの人、仲が良いことを隠さなくなったわね。
カン外政官とクリスと私は、ちゃんと外政部の仕事をしていましたよ。
まず、村人さんたちが住んでいた大きな建物が取り壊しになったら、外政官の館の建造申請をしました。
これがないと、転送門を使って出入りする村人さんが、カッシーニ81の甲板まで入ってこないといけませんからね。
でも、当然の様に保留されました。
村内の建造が優先です。
仕方ないので、甲板に転送門を置きました。
これを使って、オの都のレギウス邸と王都ミラルダのレギウスの館に行くことができます。
甲板に置いたので、レイチェルさんに管理してもらいます。
カン外政官は村人さんからレギウスの館の職員を募集し4名を採用しました。
面接してたけど、全員採用したみたい。
私達のオの都の方は王城からお手伝いさんが6人も来てくれているので、お屋敷の中はばっちりです。
これ、クリスが担当外れたら、居なくなるのかしら。
なので、私達も村人から3名を職員として採用しました。
頼れるカーラさんにアンナちゃんとダリルくんの姉弟です。
レギウス邸の事は任せました。
クリスはアビー姫担当として、たびたび王城に招かれています。
最初は話相手でした。
今は行儀作法やダンスの練習も一緒にしています。
冬の社交に向けての準備だとか。
大変だね。
なんか話し方も変わってきたし。
えっ、そうね。行儀作法は身に付けた方がいいかもね。
はい、わかりました。
私も行かせていただきます。
そんな日常生活を日々送っていました。
これって、第四惑星の生活に慣れてきたってことかしら。
もう、カッシーニ81の中央司令室で周辺警戒レーダーを見ることもないんだろうな。
でもそのイメージは私の検知の魔法に役立ってます。
今だって、私に接近してくる2名の若者を捉えています。
「リサさん、お疲れ様です。」
「お疲れ~。ステフ君とダニエル君も今から食事かな。」
「そうなんです。それで、よかったらリサさんも一緒に、と思いまして。」
「えっ、わたし?」
「そうです。できれば、でいいんですけど。」
ははぁ、うれしい展開だけど、これは何かあるわね。
「おっけー、ご一緒しましょう。」
この後9月1日11時に「情報 レギウス村での役職」を投稿します。




