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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第三章 レギウス村
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59話 10日後

二人の死体が眠る穴を土で埋めて、俺たちはザーリ辺境伯の館に戻った。

クリスとリサも同行している。

マクレガー大佐にアバンテ男爵の死体が無かったことを伝えた後、家人の案内でベレッタ子爵とブカン男爵の部屋に行った。


「カン殿、如何された?」

「ベレッタ子爵、ブカン男爵、アバンテ男爵についてお聞きしたい事があります。

アバンテ男爵はどんなお顔でしたか?」

「顔?」

「はい。目の色や鼻の高さやひげなど、何か覚えていますか?」

「ああ、いや、そういえば、どんな顔だったかな。」

「ううん?私も良く覚えておりませんなぁ。」

「では、山賊に捕まった時の事をお聞きします。アバンテ男爵はどのように倒れましたか?」

「それは、山賊の男に短剣でグサリと。」

「ううん?ベレッタ子爵、アバンテ男爵は刺されましたか?」

「なに?刺されたではないか。こう、ぐさっと。いや、待てよ。あれは使用人だったか。」

「アバンテ男爵は、こう自分で横になられて、その後にカン殿が助けに来られたんですよ。

ううん?アバンテ男爵はなぜ一緒に助けられていないんです?」

「だから、アバンテ男爵は山賊に刺されて。いや、刺されていない?」

二人が混乱を始めた。ブカン男爵の方が催眠術からの回復が早そうだ。

「ありがとうございます。アバンテ男爵は生きています。先程確認しましたが、死体はあの穴にありませんでした。」

「そうか、生きておったか。」

「しかし、そうすると今はいずこに?」

「それは分かりません。ありがとうございました。失礼します。」



次に俺たち全員で広間へ行く。

ザーリ辺境伯とアラン子爵はお茶の入ったカップを手にしていた。

少し落ち着いたようだ。

クリスとリサが増えた俺たち5人に少し驚いた顔をする。

「カン殿、先ほどは御見苦しい所をお見せした。」

「いえ、ザーリ辺境伯。それよりお聞きしたい事がございます。」

「うん、何かね?」

「アバンテ男爵、彼の顔をご存じですか?」

「顔?うーん、いや、そういえば、どんな顔だったか。」

「アラン子爵、覚えておられますか?」

「いや、すまないカン殿。わたしも良く思い出せないな。」

「ベレッタ子爵もブカン男爵も覚えていませんでした。これもアバンテ男爵の催眠術の影響でしょう。」

「なんと。」


「ザーリ辺境伯。オの国での使節団の動きについてお伺いしてもよろしいですか?」

「ああ、聞いてくれ。」

「アビー姫へのウの国の王子との手紙のやりとり。あれはどなたが書かれた物ですか?」

「誰が書いていたかは私も判らん。オーリウス伯が窓口となってアビー姫の手紙を扱っておったのは知っている。」

「カン殿、最後のアビー姫への北方岬への呼び出しの手紙、あれを用意したのはアバンテ男爵です。」

「アバンテ男爵は他に何をされていましたか?」

「やつは良く出かけておったな。」

「はい、オーリウス伯の使用人と共に王城に行っていたようです。アビー姫誘拐の準備だとオーリウス伯に聞きました。」


「オーリウス伯とはどんな人物ですか?」

「彼は、頭の切れる男だ。モラス侯の信も篤い。」

「モラス候とは手紙でやり取りをしているのでしょうか。」

「ああ、手紙もあったが、なにやら魔道具を使ってやり取りをしていると聞いたな。すぐに連絡が取れるようにと。」

通信手段があるのか。


「ザーリ辺境伯。このアビー姫誘拐事件の話をオの国に伝えてもよろしいですか?

モラス候の陰謀と策略であり、アバンテ男爵の催眠術とオーリウス伯の手引きがあった事を。」

「ああ、そうだな。オの国、アビー姫には申し訳ない事をしてしまった。騙されていたとはいえ、な。」

「アラン子爵もよろしいですか?」

「もちろんだ。我々も罪を犯した。だがその罪を作り出したのはモラス候だ。

ザーリ辺境伯、我々も一刻も早く王都へ参りましょう。」

「ああ、そうしよう。カン殿、申し訳ないが我々を王都へ連れて行っていただけないか。」

「それは御引受けいたします。昼食の後に出発なさいますか?」

「いや、すぐに発とう。よいか、アラン子爵。」

「もちろんです。ザーリ辺境伯。」



クリスとリサはカッシーニ81に戻った。

ザーリ辺境伯の許しが出たので、すぐにオの国に行き、オーリウス伯邸を押さえる。

「通信手段がありそうだ。気を付けろよ、クリス。」

「当然だ。手すきの甲板部員全員連れて10秒で制圧してやる。」

なら、大丈夫か。



連絡艇に乗り込む人々。

ザーリ辺境伯ら4人と辺境伯の使用人が新たに4人。

それに盗賊に捕まっていたアラン子爵の使用人とブカン男爵の使用人。

亡くなった使用人はザーリ辺境伯の使用人とベレッタ子爵の使用人だった。

アバンテ男爵は使用人を連れていなかったそうだ。

そして警吏の2人。

彼らからは王都で離職し家族を連れてレギウス村に移住したい、という嬉しい申し入れがあった。

治療のお礼と元々農家の次男、三男だと言う。


王都ミラルダまでは1時間20分で着いた。



王都への着陸方法についてザーリ辺境伯と相談した。

通常ならば王都周辺の平原に降りて街門を通って街に入る。

だが、それでは時間が掛かる上にモラス候と普通に対面しても、知らぬ存ぜぬではぐらかされる事が予想される。

そうなるとサーシャ姫の所在が聞き出せない。

さらにモラス候は私邸に兵を配置しているという。

それではあまりに危険だ。


そこで我々はとても目立つ行動をとった。

連絡艇は通常の飛行では静かだ。

そこでスタンの魔法の様に音を出すことにした。

工作機の作動音を何十倍にも大きくして外部スピーカーで流した。

その状態で王城の中庭に着陸したのである。

注目を集めれば、ザーリ辺境伯らが王城に乗り込んだ事実をもみ消すこともできないだろう。

音を消し、連絡艇から俺たちが降り立った時、周囲は王城守備隊に囲まれていた。


「止まれ!何者だ貴様ら!」

守備隊の中央から声が掛かる。

左右に槍兵を従え帯剣した男。守備隊の隊長格だろう。

「私はアントニオ=ド=ザーリ辺境伯。

こちらはオの国への使節団、マルコス=フォン=ベレッタ子爵、フィリップ=フォン=アラン子爵、ダニエル=フォン=ブカン男爵。

国王陛下に使節団の活動報告ならびにモラス侯爵、オーリウス伯爵の裏切り行為を訴えに参った。

速やかに案内せよ。」

「は?ザーリ辺境伯様!?いや、しかし、これは、」

「何をしておる。早く謁見の手続きをせんか!」

「ははっ。では、こちらへどうぞ、控えの間にご案内いたします。」

「うむ。」


ザーリ辺境伯ら4人の貴族と使用人6人に警吏の2人が付き従う。

俺とマクレガー大佐はそれを見送り連絡艇内に戻った。

残念だが、俺たちにここで出来ることは無い。

ここから先はザーリ辺境伯たちの仕事だ。

乗り込んだは良いが、そうそう容易く国王陛下の謁見までは辿り着けず、諸々の手続きが必要になる。

だが、最初の騒ぎと直接王城に乗り込んだ事でモラス候の手の届かない所で訴えを行える。


連絡艇は再び爆音を轟かせ王城を飛び立った。

これだけ騒がしければ、王城はもちろん城下町にも響いているだろう。


クリスからは作戦成功の連絡が入った。


俺たちはレギウス村に戻った。



10日後。

俺はマクレガー大佐とレイチェルと共にエの国の王都ミラルダの王城に連絡艇で降り立った。

今回は静かに着陸する。

今回も守備隊が出迎えるが、その中央にはアラン子爵とベレッタ子爵が待っていた。


俺たちは王城の部屋に案内された。

そこにザーリ辺境伯と2人の貴族がいた。

一人は国政大臣補佐官のターレス侯爵。

もう一人は外政大臣補佐官のマンディス侯爵。


挨拶を交わした後、この10日間の経緯をザーリ辺境伯が説明してくれた。

初日は謁見の申請とモラス侯爵とオーリウス伯爵の裏切り行為の訴状の作成で終わった。

次の日は動きが無く、3日目に司法局に呼び出され訴状の内容確認が行われた。

そして今日である。

つまりザーリ辺境伯側にもほとんど動きが無かった。


ザーリ辺境伯の説明を黙って聞いていたターレス侯爵が口を開いた。

ザーリ辺境伯の訴状を受け司法局で内偵を行い、昨夜のうちにモラス候と関係すると思われる貴族26名を捕縛。

その中にはブカン男爵も含まれていた。

また、モラス侯爵邸にはサーシャ姫が軟禁されていた。

2日間は事情聴取で司法局に留まるが、その後はザーリ領に連れ帰っても良いそうだ。

今日の午後から面会できると聞いてザーリ辺境伯は涙を流しターレス侯爵に頭を下げた。

その手をアラン子爵が強く握っている。

ターレス侯爵は月の人に対しての感謝の言葉を残し、部屋を去った。


次はマンディス侯爵だ。

彼は壁際に控えていた従者から一枚の書状を受け取ると、それをマクレガー大佐に見せた。

その書状は3日前に届いた、オの国国王ディエゴ=チェインからの書状だ。

内容はエの国のモラス侯爵の謀によるオの国国内で起きた第二王女誘拐事件に関する責任追及と王都オの都にあるエの国の館の差し押さえ通告。

さらにエの国からの正式な説明があるまでの無期限の国境封鎖処置の通達である。

書状の内容説明をした後、さらに一通の封書を差し出してきた。

「これは我が国王陛下よりお預かりしたオの国ディエゴ=チェイン国王への親書でございます。

月の人は空を飛び、その移動は時を超えるとザーリ辺境伯からお聞きしております。

何卒、この親書を一刻も早くディエゴ=チェイン国王にお届けください。」

「かしこまりました。お預かりします。」

マクレガー大佐が受けとり、レイチェルが背嚢にしまう。

「ありがたい、よろしくお願いします。続いてはこちらを。」

マンディス侯爵は2枚の書状をマクレガー大佐の前に並べる。

「こちらは我がエの国と月の人”レギウス村”の親交契約書です。2枚に署名いただき、お互い1枚づつ保管いたします。」

マクレガー大佐が署名し、1枚を侯爵に返し、1枚をレイチェルに渡す。

さらに1枚の書状。

「こちらはブリント領に滞在中のウの国からの避難民423名の身元引受申請書になります。内容をご確認いただきご署名を。」

マクレガー大佐は書類を一瞥するとすらすらと署名した。

それを受けて侯爵は紙束と革袋2つを置いた。

「こちらがブリント辺境伯から提出された避難民423名の名簿になります。

そしてこちらが銀貨423枚です。お受け下さい。」

マクレガー大佐が受け取り、レイチェルが仕舞う。

「以上で手続きは終了です。

この後、ブリント辺境伯との会合を用意しておりますので、詳細をお決めください。

では、今後も月の人、レギウス村との良き関係が続くことを願っております。」


俺たちは別室でブリント辺境伯を待つことになった。

ザーリ辺境伯には昔なじみという事で同席していただいている。

アラン子爵達とは別れた。

現れたブリント辺境伯は背の低い小太りの50代の男性だ。

手には外政担当官から渡されたという避難民引き渡し命令書を持っていた。


いよいよレギウス村に移民を受け入れる時が来た。


次回60話「オーリウス伯邸急襲」

時間を戻して、甲板部員たちの活躍です。

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