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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第三章 レギウス村
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45話 宿泊訓練

宿泊訓練はカッシーニ81の西側の森林地帯に1チーム5000m四方を担当して探知、狩り、宿泊を行う。

チーム間連絡はチーム1への定時連絡のみを基本とする。

ただし、現地のベア族と接触の可能性がある場合はその地を離脱すること。

俺たちは所定の地に散り、訓練を開始した。


チーム1の受け持ちは森林が主だ。

東西に2本の小さな川があり、池が点在している。


「カン少佐。ここはいい土地だな。地下水が豊富だ。」

「少佐。どうすんだい?飛んで探知していくんだろ。」

「そうだリンダ。基本は飛びながらの探知だ。ただし、大佐の能力は大地に両手を突けないと発揮されないので、大佐の指示で降下するぞ。」

「了解。」

「今いるのは担当地区の南西だ。ここから北へ向かい、その後東へ転進する。事前確認通り時計回りで進もう。

高度100mで1000m四方を探知。1m以上の動物の動きに注意してくれ。

大佐は畑造りに適した土地の判定もお願いします。

俺は周辺の大型飛行生物の警戒を行う。

よし、行こう。」

「了解。」


(少佐。数が多いぞ。)

(ああ、動物が多いな。動きの速い奴はいるか?)

(どれが、どれだか。)

(リンダ、動きがある奴、群れで行動している奴、単独ででかい奴、いろいろ居るからな、それらを区別してみろ。

何だったら、少し止まるか?)

(そう言われてもなぁ。)

(カン少佐。10時の方向300mに気になるのが居るな。群れか?)

(リンダ、分かるか。)

(ああ、20ぐらい固まっている。)

(よし、高度を下げて南側から上空をゆっくり飛ぶ。それが何かを確認してくれ。)

(了解。)

俺を先頭にリンダとマクレガー大佐が続く。

木々の高さは5mから10m。1本1本の間隔もあるので上空からでも視認できるだろう。

俺は群れの姿を捉えたところで止まり、そいつらを指差した。

(見えるか?)

(うむ。あれは狼、か。)

(狼か、寝ているのか?)

(そうだな。メティスの資料によれば、危険度:高、だ。この探知結果を狼と認識してみろ。)

(おお、こいつらの探知結果が他と区別できた。そうか、小娘が言っていたのは、いや、)


リンダ、やっぱりリサの指導を真面目に聞いてなかったな。

こいつは階級より年齢で人を見る。

そうすると、ホーキンス甲板長とアレクの二人が年上、第二班班長のバベルは同年齢。

リンダは陸戦隊上がりで強気な物言いもあって、他の甲板部員からの評判が悪い。


(リンダ、魔法の発動や探知結果の受け取りには、その人間の認識力と想像力が必要だ。

単に動物としか認識しなければ探知結果は全部同じに見える。

認識力を付けるなら実際見た方が速い。

どうする?2時間ぐらい掛けて、見て廻るか?)

(ああ、その、必要なら、その、)

(必要だ。大佐、よろしいですか?)

(もちろんだ。私も種類不明のものがいくつもあるからな。)

(では、この高度で北へ向かいながら見て行きましょう。次は北東にでかいのがいるぞ。)



このエリアにゴブリンもオークも居ないことは確認済みだが、警戒を怠らないようにしつつ、正体不明の相手に接近して行く。

それを繰り返しつつ指定エリアの外周を廻り、内側へと進んで行く。

探知結果の確認をしながらだが5000m四方のエリアだ。3時間程で中心部までたどり着いた。

「大佐、気になる土地はありましたか?」

「うむ。ここは全体的に水が豊富で木々も良く育っている。良い土地だな。」

「そうですか。」

「特にこの2本の川に挟まれた中央部。ここは何度か川が氾濫して良い土が堆積しているな。」

「なるほど。」

「少佐。次はどうすんだい?」

「リンダ、探知範囲を周囲500mに広げて、体長2m以上の獲物を探知してみろ。」

「・・・おお、すごいな、これが、少佐達がいつも見てる結果か。」

「地上では精度を上げるためにいつもは周辺100mぐらいだけどな。

西側に最初に見た単独のでかいのがいただろ。」

「ああ、熊だな。今は南側に移動しているな。」

「その先に2頭の反応があるよな。」

「ある、これは鹿、だな。」

「そうだ、その熊の獲物を横取りして俺たちの夕食にしよう。」

「おお。」

「カン少佐。作戦はあるのか。」

「はい。私が熊の行く手を阻みますから、二人は鹿を追ってください。

音と匂いに敏感ですから、自分の周りに風を起こして気配を感じさせないように。

マクレガー大佐が土壁や穴を使って1頭を足止めし、リンダが弓で止めを。」

「うむ。わかった。」

「了解。」


俺たちは片手剣と短剣2本に背嚢を装備している。

リンダだけは弓も背嚢に括り付けている。

「リンダ、矢は作るのか?魔法矢か?」

「矢は作れる。・・・ほら。」

近くの木の枝を剣で切り落とし、その枝から1本の矢を作り出した。

この辺は得意なようだ。

陸戦部隊上がりだから武器関係は興味があるのか。

「よし、熊に先を越されない内に行こう。」

「了解。」


俺たちは南西に向かって飛んだ。

熊と鹿の距離は300m程だ。

俺は二人に鹿の後方100mに降下し気配を絶ちつつ鹿に接近するように指示すると、熊の目の前30mに降下した。

気配を絶たずに枝葉の音を立てて近付く。熊の歩みが止まり周囲を警戒している。


フッフッフッ

熊の息遣いが聞こえる。距離は15mぐらいか。

熊の頭が俺の方を向いている。

その顔つきは動物的でベア族と違うことが分かる。

そして、体格は倍はあるな。体長4m以上だ。

黒毛の剛毛に大きな体躯。

頭頂から背中にかけて、赤いタテガミが逆立っている。

今は四足を地面に着いているが、視線は俺を捕え、力を溜めている気配が伝わって来る。


ガウォォ!


突進してきた。

「土壁!足元崩し!沼化!」

熊は目の前に現れた土壁にめり込み、足元の固い地面が砂になり、さらに沼となって足が沈み込む。


ズズズゥゥゥンン!

その時地面が激しく揺れた。

周囲の木々から鳥達が一斉に飛び立つ。

小動物が激しく動き、熊も沼地を脱出して北に向かって走り出した。

俺は振り向いて後ろを見た。

木々が邪魔しているが、明らかに何かがある。

俺は上空へ飛び上がり、300m程先に現れた高さ5m以上はありそうな垂直なくの字の崖とそれに伴って起伏したであろう丘を見た。

崖の中央にマクレガー大佐とリンダがいる。


俺は二人の所に降下した。

二人は俺を見ている。

リンダはなかば呆然と。

マクレガー大佐は半笑いだ。照れているのか?

マクレガー大佐の前方に鹿が一頭倒れている。

どうやら仕留める事は出来たらしい。

「これは、大佐が?」

「ああ、そうだ。」

「凄かったぜ、少佐。あたいが鹿を狙ってると大佐が”往く手を塞ぐ!”とか言って。そうしたら突然地面が盛り上がってさ。

思わず放った矢が当たったからいいけどさ。その後も崖は盛り上がるし、地面は揺れるし。」

「いや、それより少佐。この崖を見てくれ。あの上の方だ。」

「何かありますか?」

「ああ、ええと、ここだ。ここの土の層だ。」

マクレガー大佐が浮かび上がって崖の上部から30cm程の所を指し示す。

俺もマクレガー大佐に並んだ。

「土の層ですね。他より綺麗に見えますが。」

「そうだ。小石なども無くきめが細かい土、しかも高さも揃っている。

カン少佐。これは畑の跡だ。」

「畑。と、いうことはベア族の畑ですか。」

「そうなるだろうな。ここは良い土地だ。畑作に向いている。」

俺たちは地面に降りた。


「となると、この周辺はかつてベア族の畑、集落があったのか。」

「そうなのか?じゃあ、なんで今はないんだ?」

「この土地は何度か川の氾濫によって土砂に覆われている。先程の畑跡の層の上にも土砂の層が2層あった。」

「じゃあ、それが原因で撤退したのか。」

「かもしれんな。」

マクレガー大佐とリンダはうなずき合った。

俺にもこれだけでは何もわからない。

木々の高さが10m程度と若い木が多いのは、それが原因だったのだろう。


「大佐、この崖、丘は元に戻しますよね。」

「ううむ。それなんだがな。

わしは鹿の行く手を阻む壁を欲した。

それに土が答えてコレを作った。

となると、この丘はこの地が必要としている物かもしれんな。」

「えっ?」

「カン少佐。この地は平坦で起伏に乏しい。

土地には起伏と変化が必要なのだよ。

この丘があるだけで地下の水の流れは変わり、この崖のおかげで日影ができる。

やがてここは湿った土地になり、それを好む草花が生い茂る。

この地に多様性ができるのだ。

だから、この丘はこのままにしておこう。」

「さすが、大佐。未来を見据えた思慮深いお考えですね。」

「いや、リンダくん。これも天使セリーヌ様のおかげだよ。」

「カン少佐。ここで夕食にしましょう。私、鹿の捌き方は習いましたからできます。」

「ああ、そうだな。」

「では、我々は焚火の用意をするか。カン少佐。」

「ええ。」


何だ?リンダのこの態度は。

マクレガー大佐は52歳。リンダの上官で年上。

もしかして、そうなのか?



夕食の支度をしつつ1800の定時連絡を各チームから受ける。

各チームとも問題なく探索をこなしている。

俺からは一応、マクレガー大佐が新たな丘を作り上げた事を報告し、崖の画像をメティス経由で閲覧可能にしておいた。


この後は剣技訓練をやりつつ夜を迎える。

6時間の休息を取り、2830から昼と同じように夜間の探知訓練と狩りを行う。


次回46話「訓練終了」

あの人が自己を認識します。

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