44話 移転先候補
ママドゥのいるゴンジー村へ俺とリサで挨拶に行った。
無事に帰って来たこと。
隣の大陸に渡り小さい人、カッツェ族に会えたこと。
さらに海を越えて、俺たち月の人と同じ姿のフォース族に会ったこと。
それらを土産に持ち込んだ飛竜の肉を食べながら話した。
飛竜の素材は部族長の村で高値で買い取って貰えるそうだ。
ゴンジー村の村長にも感謝された。
最後に俺たちの銀の船が北の浜から飛び去る事を伝えた。
「そうか。月に帰るのか?」
「いや、俺たちはもう月には帰れないんだ。なので、俺たちの村を作る場所に行くんだよ。」
「あの北の浜じゃ、駄目なのか。」
「ああ。」
「そうか。また、会えるか。」
「もちろんだ。」
「そうか。なら、良いことだ。」
◇
「カン少佐。移転先が決まりそうだと聞いたが。」
浜辺で剣の組手をしている時にマクレガー艦長に声を掛けられた。
「はい。第三大陸の南に山脈に挟まれた土地があります。そこが第一候補地です。」
「そうか、近々現地確認に行くそうだな。」
「はい。10日程の時間を掛けて平野部周辺と山脈を調べる予定です。」
「うむ。その時には私も連れて行ってくれ。」
「艦長を、ですか。」
「もう艦長ではない。ただのジジィだ。」
「失礼しました。マクレガー大佐。」
「カン少佐。私はな、天使セリーヌ様より”大地と共に生きる”との使命をいただいた。
その時に良き土地を見極める力。悪しき土地を清める力。大地に豊穣をもたらす力。これらを授かったのだ。
今回の調査に、私の見極める力が役に立つだろう。」
「見極める力。ですか。」
「そうだ。」
「分かりました。その力、お借りいたします。」
「うむ。」
◇
「あれが、ゴメス中佐本人だって!?」
中央指令室には第二司令部、俺とホークとリサがいた。
クリス達第一司令部は浜辺で魔法練習と剣術練習の指導中だ。
『はい、カン少佐。あの5番艦中央管理コンピューター内に展開された仮想人格がゴメス中佐の人格情報である事を確認しました。』
「メティス、ちょっと待ってくれ。クリス達を呼ぶ。」
しばらくして、クリス達3人も中央指令室に集まった。
6人でメティスからの報告を聞く。
『1145年409日、カルー少佐の指示で、クローン体への記憶の転移作業が実行されています。
これは、体内ナノマシンによる人格と記憶の電子化を行い、中央管理コンピューター内記憶領域を経由して、クローン体への転移を実現する計画になっています。
ですが、中央管理コンピューター内記憶領域からクローン体へのデータ転送が行われておりません。』
「クローン体への直接コピーでは無かったという事ですね。」
『はい。ホーク大尉。』
「俺たちが目撃したのは、そのデータが中央管理コンピューター内で活性化していて、ゴメス中佐が再現されたのか。」
『また、5番艦の通信機器の撤去および通信障害もその後、1145年410日に発生しております。』
「つまり、意図的に、ですか。」
「外部と切り離された電子の世界の牢獄、か。」
クリスがつぶやく。
その通りなのだろう。
カルー少佐の復讐、なのだろうか。
「だが、ゴメス中佐の記憶はどうやって表面化したんだ?」
『その現象については現在調査中です。』
「少佐。このゴメス中佐の人格記憶データをメティスの記憶領域内に留めておくのは危険です。」
「ああ、ホークの言う通りだ。メティス、ゴメス中佐の人格記憶データは5番艦の中央管理コンピューター内にもあるのだろう?メティスにコピーして取り込んだ分は至急廃棄するべきだ。」
『了解しました。ゴメス中佐の人格記憶データを廃棄いたします。また同様の人格記憶データを現在15人分確認しております。』
「他のメンバーの分、か。メティス、そちらも同様に廃棄処分するんだ。」
『了解しました。廃棄いたします。』
「ファルス。5番艦に通信機器を置いて来ているが、そのままにしておくのは不都合があるのではないか?」
「通信機器が破壊されていたのは記憶領域を電子の牢獄にする為、だけでは無い、のか。」
「憶測だが、撤去した方が良いかもな。ファルス。」
「そうですね。ゴメス中佐の人格が中央管理コンピューターの表層に出て来たのであれば、通信機器を用いて外の世界に何らかの働きかけをする可能性があります。」
「そういえば、通信機器を接続した時の言葉は、喜んでいましたね。」
リサの言う通りだ。クリスの勘は当たるしな。
「よし、リサ。5番艦に置いて来た通信機器を回収しよう。メティス、調査に影響はあるか?」
『いいえ、カン少佐。必要なデータはコピー済みです。現在5番艦との通信経路は閉鎖しております。』
この後、俺とリサで5番艦を再訪し中央指令室に置いてある通信機器を回収した。
中央管理コンピューターに動きはなかった。
メティスの調査で同様の人格記憶データは20人分が見つかり廃棄された。
オリジナルは5番艦の中央管理コンピューター内に残っている。
ナノマシン開発部隊のゴメス中佐以下19人分。
生物部隊はアドニス中佐1人分。
ここに居ないのは、月の神にされたカルー少佐達3名と、人類種の神になった7名。
そして、ゴメス中佐の部下でナノマシングループの一員、時の女神とされたミリア中尉。
彼らはどこにいるのだろうか。
◇
今回の移転先候補地[3番地]の調査は広範囲を詳細に調べる、という事で人員を増やした。
移動には脱出艇改め連絡艇を使用する。
個人ポッド10人分のスペースを改造し2階層に区切り、上層を24人分の座席とし床下収納を作った。
参加メンバーは以下の通り。
司令部からは以下の7名。
マクレガー大佐
ファルス=カン少佐
クリスティン=サワー大尉
ホーク大尉
レイチェル=バーンズ中尉
リサ=メンフィス中尉
パメラ=クルーガー少尉
甲板部員からは第一班の11名。
第一班班長 アレクサンデル(アレク)=シャトフ大尉(31)
副長 ジェリー=エルラド曹長(24)
サラ=スール伍長(24)
マルビン=ナルティア兵長(24)
リンダ=フォルムーゼン一等兵(28)
ベンソン一等兵(23)
ノエル=デルー一等兵(20)
ロッテ=ビスト一等兵(19)
シャーリー=ローゼンガー一等兵(19)
スティーブン(ステフ)=ボーア二等兵(18)
ダニエル=ヴィッツエル二等兵(18)
以上、18名。
3番地は南北800km東西1300kmの平野部の東側、巨大な湖の山側になる。
調査内容は現地人の居住区や道路の有無、鉱脈近辺の採掘場候補地の確認、などだ。
チーム分けは司令部の6人がリーダーとなり甲板部員2名と組む。
チーム1、俺、マクレガー大佐、アレク大尉。
チーム2、クリス、サラ伍長、ステフ。
チーム3、ホーク、ジェリー曹長、ダニエル。
チーム4、レイチェル、マルビン兵長、シャーリー。
チーム5、リサ、リンダ、ノエル。
チーム6、パメラ、ベンソン、ロッテ。
チームが決まれば訓練だ。
俺たちは10日間の訓練を行い、出発に備えた。
◇
8日目の訓練後に第一会議室に司令部6人とアレク大尉とジェリー副長が集まった。
訓練の進捗確認だ。
訓練の重点項目は魔法での飛行訓練と探知訓練とナノ通信、それに剣と弓の扱いと狩りの仕方と獲物の捌き方を少々だ。
チーム1は指揮役になるので、アレクへのナノ通信の訓練はしっかりとやっている。
マクレガー大佐は、俺と話せればいい。
飛行速度も時速80kmで安定して飛べる様にはなってくれた。
彼のサポートは俺がやろう。
さて、他のチームの状況を聞いていこう。
まずは、
「クリス、どうだ?」
「うちは順調だぞファルス。サラは探知に優れているし、収納魔法も覚えたからな。
ステフは器用になんでもこなすな。」
「ホーク。」
「こちらも順調です。ジェリー曹長、ダニエル君も仕上がってます。」
「レイチェル。」
「うーん、マルビン兵長は探知に問題ありですねぇ。ひとつひとつは順に確認できますが、一度にパッとなると焦りがでますねぇ。
シャーリーは魔法は大丈夫ですが、剣術はダメですねぇ。なので弓を主体に教えていますぅ。」
「リサ。」
「はい。リンダさん、ノエル君ともに訓練内容に問題はありません。」
「以上か?」
「はい。」
「パメラ。」
「はい。ベンソンは魔法は及第点。彼は肉体派ですね。周辺探知は出来ますが、周囲100mを超えると使えません。
ロッテはその逆、探知は問題ありませんが、剣は無理なので、彼女も弓を教えています。」
「よし、アレク大尉。」
「はい。」
「明日からの訓練はリンダに代わり、リサのチームに入ってくれ。」
「えっ!」
「了解。」
「あ、あのっ、なんでですか。少佐。」
「リサにあのお局様は荷が重すぎだろう。」
「クリス大尉。」
「リサ、このことは前から決めていたんだ。」
「そうです、リサ中尉。チーム1が今のメンバーだと我々に何かあった時にこの部隊のまとめ役が一気に欠けてしまいます。」
「なので、俺とアレク大尉は別チームに所属する事になっていた。だが、この訓練期間では俺たちはチーム全員を見ないといけないからな。」
「リサ中尉、明日からはあなたのチームの一員です。よろしくお願いします。」
「は、はい。お願いします。アレク大尉。」
「よし、明日は1400から30時間の宿泊訓練だ。午前中に準備しておいてくれ。」
「了解。」
「では、解散。」
皆が退室し、俺とアレクが会議室に残った。
「リサ中尉は納得したかな。」
「理由としては本当の事だからな。アレクがどのチームに入るのかは、さっき決めたが。」
「しかし、リサ中尉にリンダが扱いきれないだろうとは、最初から分かっていただろうに。」
「リサも中尉になったからな。扱いにくい部下を持った時の経験をさせとかないと、な。」
「そうだな。で、リンダを加えたチーム1は大丈夫なのか?」
「まぁ、大丈夫だろう。」
■■■
はい、リサ=メンフィスです。
旅から戻って中尉になって、少し休めるかと思ったら、引越し準備です。
その一環で甲板部員さんたちの訓練です。
シャトフ大尉の第一班。
ロッテとシャーリーとは友人で、新人のステフとダニエルともよく話していた。
あ、第二班のレベッカとも仲いいんだよね。
でも、基本的に甲板部員さんとは挨拶交わすぐらいなのよ。
それを2人も直接指導しないといけなくて。
ノエル君はいいのよ、20歳だし、格好いいし、ロッテとシャーリーから話を聞いていたから知っているし、
明るくて、私の話をよく聞いてくれるし、分からないことがあれば質問してくれるし。
はぁ・・・。
問題はリンダさんよぉ。
会話ができない。
年上で、筋肉質で、無愛想で、目つき悪いし。
私は年下で、見た目は華奢で、へらへら笑ってるように見えるかもしれないですけど。
こっちは説明してるんだから、聞いてくれても良くない?
一応、上官なんですよ。まぁ、それを言ってしまうと、でっかい溝と壁ができちゃうから言えないけど。
訓練初日から、もう疲れた~。
まだ、9日間もあるのに~。
そうそう、クールダウンね。クールダウン。
落ち込んだ気分もリセットです。
この魔法、使えるわね。
あ、サラ伍長。
どうかなさいましたか?
えっ、収納魔法を覚えたい。
クリスに覚えて来いって、言われたんですかぁ。
そうですか、大丈夫です。
わたしがきちんとご説明しますね。
そうだ、ロッテとシャーリー、レベッカにも声かけようっと。
次回45話「宿泊訓練」
甲板部員を鍛えます。




