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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
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40話 王宮の朝

「おはようございます。」

俺たちの部屋に来たバレン隊長は疲れた顔を見せていた。

「おはようございます。バレン隊長。あまりお休みになられていないご様子ですが。」

「いや、申し訳ない。実は昨夜は夜警もありましてね。でも大丈夫ですよ。

さ、皆様をご案内いたします。こちらへどうぞ。」


俺たちは呼び出しを待つ間に剣と短剣を装備していた。

練習用の武具は借りられるだろうが、何も持たないで行くのも野暮だからな。


バレン隊長が案内してくれたのは練兵場だった。

中庭だと思ったのは勘違いだった。

「中庭はもっと広いです。」バレン隊長の声は小さかった。そうか。

練兵場に居るのは第二連隊と第三連隊第11分隊だ。

第一連隊は檻の中、城内に残っていた第1分隊も昨日の内に捕縛したそうだ。

第三連隊の他の分隊は昼まで城内警備を担当している。

第11分隊は特別に半休をもらったので、朝の訓練後は昼まで休みだそうだ。

訓練は型をやり終え、1対1の組手に移っている。


木剣と左手に丸盾を持っている。

受け手と攻め手を決め交代しつつ進めていく。

「まぁ、基本の型が大切ですから。」

「そうですね。」

俺たちは練習用の木剣を借りた。

第一連隊が参加していないので場所は空いている。

「そういう意味では我々は基本を学んでいません。自分たちだけで練習してますからね。

よろしければ基本の型をご教示ください。」

「えっ、そうなのですか?いや、昨日の戦いぶりはお見事でした。20人もの相手をわずかな時間で倒されるとは。」

「大尉。我々の組手をバレン隊長にご覧いただき、ご意見を伺ってみては。」

「バレン隊長?」

「ええ、私でよろしければ。」

「では、至らぬ点がありましたら忌憚なくご意見ください。」

我々の練習に興味があるのは他の皆も同じようだ。

練習の足を止めてこちらを見ている。


「よし、うちらから見て貰おう。ゆくぞ、レイチェル。」

「はい。」

3m程の間合いで向き合う。

先に動いたのはクリスだ。一気に間合いを詰めて剣を突き出す。

レイチェルはそれを受けずに身をかがめつつ、左回転でクリスの足払いを狙うがクリスは既に通過している。

左右が入れ替わる。

レイチェルが立ち上がったところにクリスが迫り、右からの横切り。

レイチェルは剣を立ててこれを受ける。

クリスが受けられた反動を利用して体を回転させつつ沈み込み、左からの横撃。

これもレイチェルは剣を立てて受けるが、クリスはそのまま体を起こし剣を縦にスライドさせる。

レイチェルの身体の引きは間に合わず、クリスの剣先がレイチェルの右手首を捉えた。

レイチェルが剣を落として終了となった。


「ふぅ、クリスの突っ込みは受けられる気がしないわ。」

「レイチェル、体を沈めた時は立ち上がりの隙が大きい。沈めて起き上がるまでを一連の攻撃の中に組み込まないとな。」

「はい。」


「どうでした。バレン隊長。」

「えっ、い、いや、お見事でした。」


「はい!次行きますね。」

パメラとリサが向き合う。

パメラは剣先をやや右に寝かせて構える。リサは正面に構えている。

リサは相手の右側に廻りこむように動く。パメラも応じて左に動いてゆく。

二人の間合いは徐々に詰まり、剣先が触れそうになった時、ほぼ同時に動いた。

リサの突き出した剣をパメラが剣でそらし、リサの右脇を通り抜ける。

二人とも身体を回転させるが、パメラの剣先が速い。

振り向いたリサの右脇腹を打ち終了となった。


「バレン隊長。」

「これもお見事でした。最初の足さばきは良かったですな。

ただ、攻撃を躱してからの動きは、相手の癖が分かっているからですね。

おそらく同じ相手と練習を繰り返したからでしょう。」

「そっかぁ、だからいつもパメラに躱されるのか。」

「突っ込みすぎって、いつも言われているでしょ。」


「では、大尉。」

「よし、行くぞ、ホーク。」

右手を前に剣を立てて構える。

左手でバランスをとり、両足を開き右足を下げ、上半身を前かがみに構え、体を前後に揺らしつつ、ホークの右手に廻り込む。

当然ホークも俺の右手に廻り込んでくる。

間合いを詰めつつ、ホークの足の運びを見る。

ホークが剣を突いてきた。剣でさばく。

身体が開いた所にホークの右肩が迫る。

左手で受けて体を左に回転させる。

俺のいた所にホークの剣が突き出されている。

俺は上段からホークの首に剣を振り下ろすが、ホークは体を投げ出してこれを躱した。

再び構え直す。

今度は廻り込まずに一気に踏み込み剣を振る。

右から、左から、もう一度左、受けたホークの剣が突き出される。

右足を引き身体が開いたところを、ホークの下段蹴りが俺の左足を掬う。

背中から倒れた所にホークの剣先が突きつけられて終了だ。


「いやぁ負けたなぁ。」

「いやいや、お二人とも良い動きでしたよ。

皆さん、かなり実戦的な動きですな。ところで、」

「はい。」

「皆さん、盾はお使いにならないのですか?」


俺たちの見てきた武器はベア族の持っていた片手剣と槍と短剣だ。

彼らは盾を持たなかった。

カッツェ族の武器は見ていない。村長の短剣は磨いた石だったな。

そして俺たちが参考にしたのはレギウス軍警備部教習と上級教習の資料映像だ。

そこに出てきた盾は集団戦における体が隠れるような巨大な盾で基本的に両手で扱う。

だから片手剣の動きはスタンロッドの使い方を参考にしていた。

昨日の山賊も盾は持っていないし、第一連隊の4人は籠手だった。

第三連隊と第一連隊が持っていたのは丸盾で、あれは騎兵隊の物だと思った。

なので、盾を持つ発想が俺たちには無かった。

なるほど、狩りでは不要かもしれんが、対人戦、混戦の場合には有効だ。

これは学びたいな。


皆も賛成したので、今度は俺たちが連隊の練習を見学させてもらう。

首元のカメラで撮影されているので、ここを離れた後の教材も兼ねる。


だが、30分程で朝の訓練が終わりの時間になった。

第11分隊が午前の休みを利用しての教練を申し出てくれたので、ありがたくお願いした。

では、朝食の後でこちらにお越しください。とバレン隊長と挨拶を交わす。

そういえば、俺たちの朝食は?と部屋に続く廊下を見ると2人の女中が待機していた。

また、着替えさせられるのだろうか?



女中の一人はバレン隊長の元へ行き、もう一人が俺たちを部屋へと案内した。

服装はそのままで良かったが、汗をお拭きください、と言われたので顔だけ拭いて部屋で待機となった。

あまり待たされずに女中が呼びにきた。

今までの女中の服の色は紺色に近い青だったが、この女中は濃い赤だ。

クリス達も廊下に出てくる。

俺たちは赤服の女中に先導され、一階の奥へと案内された。


二人の衛兵が扉を開け、通された部屋には中央に白布の長テーブルと食器が並んでいる。

そしてテーブルの左側にはバレン隊長以下第11分隊の5人が立っていた。

俺たちは右側、彼らの正面に導かれた。

並びは俺の隣にホーク、クリス、レイチェル、パメラ、リサの順だ。

バレン隊長は緊張した面持ちをしている。


「オの国第21代国王ディエゴ=チェイン陛下がお入りになられます。」

俺たちを先導してきた女中が告げると赤のジャケットを羽織った50代の痩身の男性が入ってきた。

国王陛下が席に来ると第11分隊が一斉に頭を下げた。俺たちも遅れて頭を下げる。

「うむ。」

陛下の一言で俺たちが頭を上げると椅子が引かれたので、俺たちは着席する。

俺たちの前に料理の皿が並び、グラスが黄色の果実酒で満たされる。

「良き一日の始まりをこうして、我が愛娘アビーを救った英雄たちと過ごせる事を大神ゴメスとオイゲン神に感謝する。

皆良くやってくれた。さ、食事にしよう。」

陛下が食事を口に入れ始めてから、俺たちも動き出した。


会話が無いまま食事が進む。

これは俺たちが話しかけるべきなのか?と思い始めた頃に陛下の皿が空いた。

果実酒を飲み込んで、陛下が口を開いた。

「ファルス=カン、と申したか。」

「はい、陛下。」

「この後は?」

「我々はこの地を旅しています。この地の後は北西にある島に向かいます。」

「ほう、あの島か。ふむ。気を付けてな。」

「はい。」

陛下が立ち上がる。

俺たちも立ち上がった。


「ファルス=カン。」

「はい。」

「ホーク。」

「はい。」

「クリス。」

「はい。」

「レイチェル。」

「はい。」

「パメラ。」

「はい。」

「リサ。」

「はい。」

「レナト=バレン。」

「はっ。」

「ダレイ=フリン。」

「はっ。」

「ブルート=スーデル。」

「はっ。」

「ロン=デグスート。」

「はっ。」

「ヨルグ=ヴァンダム。」

「はっ。」

「そして、ティモシー=ヨンフェル。

わが娘アビーを救っていただき感謝する。ありがとう。」

陛下は一礼し、部屋を去った。


次回41話「盾をもらう」

今回はお別れです。また会いましょう。

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