17話 第一司令部
司令部部員は中央指令室へと場所を移した。
ホークとリサは甲板で甲板部員たちへの説明だ。
ここでの説明は俺に任された。
さて、改めてのメンバー紹介だが、
第一司令部
艦長 マクレガー大佐(52)
操縦士(航法担当) クリスティン=サワー大尉(22)
副操縦士(機関担当) レイチェル=バーンズ中尉(26)
通信士(船外環境担当)パメラ=クルーガー少尉(22)
第二司令部
副艦長 エディ=マーカス中佐(48)、だ。
第一司令部の3人は全員が女性だ。
サワー大尉は士官学校成績優秀者だが、どっかの誰かを殴って、輸送艦に廻されたらしい。
レイチェル中尉は見た目大人しく控えめな性格だが、物怖じしない処がある。
パメラ少尉は見目麗しい美人さんだが、言葉がきつい。
サワー大尉とパメラ少尉はリサと同期だ。
今は第一司令部の面々がそれぞれの席についている。
マーカス副艦長は艦長席の横に立ち、俺は前面スクリーン横、レイチェル中尉の前にいる。
「さて、司令部の皆さんの質問には、俺とメティスでお答えさせていただく。」
『みなさん、よろしくお願いします。』
「カン大尉、いいか。」
「どうぞ、艦長。」
「我々は、この後、どうすれば良いのだ?
レギウス本星には戻れないのか?
艦隊司令部とは連絡が取れないのか?」
「艦長、レギウス本星には戻れません。メティス、星系図と画像を出してくれ。」
前面スクリーンに恒星系1033-1の星系図が表示される。その下に夜空の映像。
星系図に表示された恒星系外縁部にジャンプゲートの表記がある。
「現在地の地表から西の空にこのジャンプゲート宙域が観測できます。
地上からの観測で正確性を欠きますが、現在この宙域にブラックホールは存在しません。
しかし、月面基地、並びにこの第四惑星上にレギウス本星の部隊が来た痕跡もありません。
つまり、ジャンプゲートが失われ、ブラックホールになり、それが消滅した後も、ジャンプゲートの再建はされていない、という事です。」
「それに1万2千年も経ってるしな。ここで暮らしていくしかないよね。」
「そうですね。」
サワー大尉とパメラ少尉が言う。
「そうか、そうなのか。」
マクレガー艦長が沈んだ声を漏らす。
「艦長、ポッドでお休みになられては。」
「ああ、マーカス、そうしよう。」
マクレガー艦長が立ち上がる。
マーカス副艦長が連れ添う様に指令室を出て行った。
「あー、うっとおしい。」
「あれは、使えませんから。」
「ふぅ、困ったものですねぇ。」
サワー大尉、パメラ少尉、レイチェル中尉の溜息交じりの声が響く。
「おまえらなぁ。」
「それで、ファルス。これから、ここで生きていくのよね。」
「そうだな、サワー大尉。」
「あーもう!なんでアンタはいつもサワー大尉なのよ!クリスって呼べって言ってるでしょ。」
「いや、同格だし、職務中だからな。」
「じゃあ、レイチェルやパメラみたいに、クリス大尉でいいじゃない。」
「あー、同名の同期の友人がいるんだよ。男のな。そいつと間違えるんだって話、しただろ。」
「そう、でも、もうその問題は無くなったわね。」
「うん?ああ、そうか、そうだな。サワー大尉。」
「むかつく~。」
「まぁまぁ二人ともぉ、時間が掛かりますよぉ、こういう事はぁ。」
「二人とも仲良しですから。」
「で、話よ。どうやってここで暮らしていくの?ファルス。」
「うーん、具体的には何も決めてないな。とりあえずの目的はあるが。」
「目的?なによ。」
「ああ、これは見せたよな。」
前面スクリーンに5番艦の画像を表示する。
「まずは5番艦に行ってみようと考えている。
惑星開発部隊が地上に降りてからの記録が残っていたら、メティスに収納したい。
それと、もし、惑星開発部員の現在の所在地に関する情報があれば、それも知りたい。
メティス、惑星図と城の画像を出してくれ。」
前面スクリーンに表示される映像。
「これは、城だ。
この第四惑星には7つの大陸があり、それぞれに1か所づつ、7つの城があると思われる。
この城は現地人の城では無い。
俺はこの城が惑星開発部隊の拠点だと考えている。
そして、ここに行けば、もしかしたら生きている奴が居るかもしれん。」
「で、会いに行く、と。会ってどうするのよ。ファルス。」
「確かめたいことは2つだ。
一つはジャンプゲートの事故。あの2番艦の爆発が惑星開発部隊の仕掛けだったのか。
もう一つは、この世界の終わらせ方だ。」
「事故が、惑星開発部隊が起こしたっていうの!?」
「この世界の終わり?」
「そうだ、その辺を詳しく説明しよう。」
俺は2番艦爆発の疑問に至った経緯を説明した。
続いてママドゥ達との食堂での会話映像を見てもらい、神話について話した。
昼食を挟み、この世界に存在する敵と、生活する上で戦闘行為が避けられない現状を話した。
説明は1800の夕食まで続いた。
艦長たちは戻ってこなかった。
◇
夕食を摂りに食堂へ行くと甲板部員たちと合流した。
あちらは昼食抜きで説明と今後の事について話し合っていたそうだ。
「おう、ファルス。ちょっといいか。」
早速ホーキンス甲板長に捕まった。
「なんだ、あのナンドゥールって奴は。あんな話の分かる奴がいたのかよ。なぁ。」
「あいつは元は、いや、今も甲板制御コンピューターですからね。普段接していた甲板長に似たんですよ。」
周りの甲板部員たちが同意のうなずきを返してくれた。
「そうか、そうか。それで、だ。
船の現在地なんだが、今は浜辺だろう。移動できるのか?」
「移動は可能です。ただ移動先の目途が立っていませんが。」
「それなんだが、ナンドゥールの希望は鉱山の近場だ。鉱石が無いと作業が進まんからな。」
そういえば、聞いていたな。
「それでは、鉱山の探索が出来るか検討して、移動先の選定作業を行いましょう。」
「ああ、頼むぞ。」
(ナンドゥール、今いいか?)
(ああ、カン大尉。大丈夫だ。)
(甲板長から鉱山近くへの移動について聞いたんだが。
鉱山探索については俺も方法を知らない。どうやって探すんだ?)
(メティスから衛星軌道上からの地表探査電磁波測定法を提案された。
小型脱出艇に高解像度カメラを搭載し、衛星軌道探査艇に改装する作業が予定に入っている。
それに電磁波センサも積み込む予定だ。)
(了解した。進めてくれ。)
(ああ、任せてくれ。)
大丈夫そうだな。
鉱山となれば山地だろう。
近場に俺たちの集落を開ける平地があって、畑作ができれば、尚良いが。
「大尉、よろしいですか?」
「ああ、ホーク、良いぞ。一緒に飯食おう。」
俺たちは夕食を載せたトレイを持ち席についた。
「ファルス、遅いぞ。甲板長と何話してたんだ。」
「甲板長とは鉱山探しの件だ。鉱石を確保しないとな。
で、まずはホークの話を聞こう。
皆が居てもいいんだろう、ホーク。」
「はい、大丈夫です。
明日からの甲板部員のシフトについてです。
甲板部員は2班編成で1班は0700から魔法練習、1300昼食、1400から甲板作業。
2班は0700から甲板作業、1200昼食、1800の夕食の後、魔法練習です。」
一日28時間45分だからな。夕食後も日が暮れるまでは時間がある。
「午前と午後の魔法練習はメンフィス少尉が、夕食後の魔法練習は私が指導します。」
「わかった。」
資料解析は一応のまとめが出来たので中止している。
5番艦での追加資料待ちだ。
現地人の生活環境調査はここでやるより、行って、見て、聞くのが速い。
なので、俺たちはしばらく魔法練習を中心に過ごすことを決めていた。
皆に一通り教えて回り、基礎ができたら、5番艦に行く予定だ。
「カン大尉、私たちの魔法練習は?」
「そうだ、船が動かないならうちらは失業だからな。ファルス、教えてくれよ。」
「おう、明日からやるぞ。甲板部員たちと合同だ。リサは教えるのが上手いからな。」
「え、いやぁ、それほどでもないですよ。大切なのはイメージですから。」
「イメージ、ですか。」
「そうですよ、パメラ。
どんな事をしたいのかを、より正確に細かく具体的にイメージすることで、ナノマシン達は頑張ってくれますからね。
例えばですね。
このカップの中にお湯を注ぐ場合ですけど、単に”お湯を入れろ”と言ってもナノマシンは困ります。
それは、お湯の温度を何度にすれば良いのか?量はどれぐらい?などの不確定要素があるからです。
ですので、このカップの8割が満たされる量の60度のお湯を注ぐ、えい!と、こうやる訳です。」
リサは見事にカップにお湯を注いだ。
「おおー。」
「すごーい。」
「なるほど、具体的なイメージがポイントですか。」
「ファルス。カップ取って来てくれ。早速、練習するぞ。」
「飲み終わったから、これを使え、クリス。」
「えっ!大尉が今、サワー大尉をクリスと呼びましたよ。」
「うふふぅ、午後の指令室で、熱心に指導しましたからねぇ。」
「二人は仲良しですから。
それより、リサ、甲板部員の皆さんがカップを持って来てますよ。」
「えっ?」
「メンフィス少尉、先程のお湯の出し方をもう一度ご指導願います。」
「「「お願いします。」」」
その後、場所を運動場に移して皆でお湯を出した。
第一司令部の登場でにぎやかになりました。
会話の時に、誰の発言かわからない時は、誰の発言か考えながら読むのも楽しいです。きっと。
レイチェルさんについて。
彼女は文節の区切りとかで、最後の音の母音を強く発音します。
例、まぁまぁ二人ともぉ
これは間延びした、
まーまー二人ともー。
よりは短い発声です。
そんな事を考えながら書いてますが、うまく伝わりますでしょうか。
次回18話「外出準備」
お出かけ前のあれこれです。




