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怪しいイケメンより心の友!!  作者: 咲川 夏雪
15/16

夜が来る前に 危ない☆ランデブー(1)

 




 4月30日 9:00 星宮邸




 とうとう、ででっ、でえとの日になってしまった。

いや、そうではない。情報収集の一環いっかんだ。落ち着け私!スーハー、スーハー。

デートでないと思ったら服装はボーイッシュでもいいだろう。




 そう思って「休日用」と取っ手に木の看板が掛かったクローゼットを開いた。、

ハンガーに掛けられているのは・・・・・飴細工あめざいくの詰め合わせの様なロマンチックな、乙女チックな色の

レース、フリルをふんだんに使った・・・結構少女趣味だなコイツ。(裏声:低)

制服とルームウェアしか着てないから分かんなかった。

フリフリで甘い色とか似合わないし。もう買いに行く事は出来ないしなぁ。う~ん。

よし、クローゼットの中で1、2を争う落ち着き様!!

膝丈で程良く広がったすみれ色のワンピースと、汚れ易そうな白いレース編みの羽織を取りだした。

・・・・・これでいいだろう。




 「お母様!お友達と遊びに行ってきます!昼食は結構です!」




 階段を降りながら叫ぶ私に、優しげな笑いじわと泣き黒子ぼくろのある星宮夫人は嬉しそうに駆け寄る。




 「まあ!デート!?高校生ですものねっ。けど、髪飾りもネックレスも付けていないじゃあない!」




 ・・・・・話聞いてました?お母様。

ちょ、何勝手にドレッサーの所から持って来てんですか。




 「玲!デートに出かけるとは本当か!?」




 いいえ。お母様の妄想でございます、お父様。(お父様は愛嬌あいきょうのあるぽっちゃりチビ☆)




 「嘘ですぞ!お嬢様がデートなんて嘘ですぞ~!!」




 その通りですよ、執事の前田さん。(一話のじいさん)




 朝食を食べ終わり、準備を始める。

少し大きく上等な革製のバッグに、財布、Rとイニシャルの入った花レースのハンカチ、録音機ボイスレコーダー

ポケットティッシュ、折り畳み傘、絆創膏ばんそうこう、頭痛や鼻炎用の常備薬、ペンとメモ、携帯電話、

飴玉3個、学生証、ソーイングセット、櫛やリップクリームなどが入ったポーチを入れた。




 学園や星宮邸を見回すと、椅子やテーブルなどの家具から、傘などの日用品に至るまでしっかりとしたつくりの物が多い。

しかも、服や物が必要最低限しかない。名家である星宮家はこういうのを長く使うのか。成金なりきんはバンバン金使いそうだけど。




 いかんいかん。約束の時刻に遅れてしまう。

「いっています。」と、騒ぐ家族に別れを告げ、ここら辺の街の地図を見ながら宙時計公園そらとけいこうえんへと向かった。




 4月30日 9:50 宙時計公園付近




 ふう。もうすぐだ。意外と遠かったなあ。

しかし、こんな広い公園のどこで待てと言うんだ。淑女レディの了解なく無理矢理約束させるなんて。

あの顔とあの時の場景を思い出したら、腹が立ってきた。




 閉まった門を三つ素通りし、やっと開いた四つ目の門に辿り着いた。

適度な数の人間が、適度な密度で散らばり、他愛ない会話をしたり個人の時間を楽しんだりしている。




―――――――気持ち悪い。

別に可笑しなところはないのだが、私はきっと現実世界と今いる世界とを、差別しているのだろう。

ここはゲームの世界だ、人間さえも作り物。

球体関節の、眼のぽっかりいた人形がカタカタと辺りを這い回っている様だ、と。




 「ああ、いたいた。どうした!?顔色悪いけど・・・」




 私を見つけたクラスメートの土師環はじたまき(ド・天然ジゴロ)に声を掛けられ、つい、びくりとした。

あまり気取らない自然な格好だが、その爽やかな容姿故ようしゆえに過ぎ行く者は必ずと言っていい程、眼を留める。

 



 「何でもないです。それより、相手の予定も合意の言葉も聞かず、いきなり呼びつけるなんて、一体どういう神経してるんですか?」




 出会った途端、氷の非難を容赦なくぶつけた。

理由は、ホントに有り得ないから(怒)が7割、イライラしてたからが2割、私はコイツにどう思われても関係ないし~が1割。




 「いや~。星宮が学園の情報を知りたくて知りたくて走り回ってるって聞いたからさ。

そんなに熱心ならきっと、何か予定あってもまずこちらを優先するんじゃないかなって思ったんだ。

でも、本当に来るとはな・・・」




 うおっ。バレてる。ああ、そうですよそうですよ。

ちょっと自惚うぬぼれ過ぎじゃね?お前はどこぞのナルシスト教師か!キャラ、被ってますよっ。

どんな面白い情報か、楽しみではあるけどね。




 「少し公園で話すか」



 

 私が何も言えない事を悟ったのか、公園の内部へと歩き出した。

公園は円を四等分した形になっていて、春夏秋冬の多くの花々が分けて植えられて、季節ごとに門を開く。

そういう仕組みになっている。

今は春。葉混じりの桜が周りを囲み、大輪の芍薬しゃくやくが豪華で、園内の顔と言っていい。

花壇にはチューリップが優しく、アネモネがいたづらに咲きほころぶぶ。

他にも、アザレア、ヒナゲシ、菖蒲しょうぶ、とややメジャーな花が咲いている。

全く違う花達でも、良くまとまっている。

植え方、魅せ方が計算されてるのだろう。




 「で?まず何を知りたいの?」




 二カッと笑う隣の男に周りはクラッとしたが、私はイラッとした。

多分向いてねぇな、乙女ゲーム。

話が始まる。録音機ボイスレコーダーでキミの話を録音ロックオン!!。

・・・・・調子に乗ってスミマセン。




 「そうですね、『惑生会わくせいかい』の『陽烏ようう』の人達について。あと、学園の行事、理事長先生について、です」




 「ふうん。あまり笑わないし、クールな系なのかと思ってたけど、

惑生会について訊くとは、やっぱり星宮も女の子なんだな」




 あまり笑わないだけでクール系?笑わせるな!という事は置いといて、




 「気になりますよ、普通。ファンクラブが、しかも学校承認のもとで運営されているとなると」




 「え?星宮が前にいた学校はなかったのか?」




 頷くと、ジゴロ君は、うそォ!!と本気で驚いた顔で叫んだ。




 え?どの学校でもある、これが当たり前、って思ってたの?視野狭っ!!




 「まあいいや。惑生会の仕事内容は本来、惑える生徒達の指南役しなんやく

つまり、相談に乗ったり、勉強に向かわせたり、手本となったりしなければならない。

ずっと前はファンクラブなんてものもなかったらしい。

そこで求められるのが知性、信頼、正義。まあ、本来はね。

今はそんな感じじゃないけど、それでも委員会のサポートとかイベント仕切ったりとか」




 「イベントってどういうものがありますか」




 「学園祭、体育祭は別にして・・・。

そうだなあ。2ヵ月に一度、プラネタリウム観賞会がある。どういう仕掛けがあるのか分からないけど、

どうやらドームに映していないらしい。投影気も見当たらないし。

そして、星座の話より惑星の説明の方が多い。その映像や話を持ってくるのが何と・・・・・理事長先生!!」




 な・・・なんだってー!!

という顔をした私に、自慢げな顔を返した。




 「だから、プラネタリウムの時間は殆どの人が、寝てるか理事長探しをしてるかのどっちかなんだよ」




 今更気付いたけど、これが学園新聞に書かれてた「夜が来る前に」の「夜」?

一番リジチョに会えそうだし、これしかわっかんねぇし。




 「そうそう。惑星と云えばこれだ」




 ん。いつの間にか結構歩いて来たんだっけ。




 足を止めた。

いくつかの球体の結晶が浮かんでいる。惑星だった。私の見慣れた順にきちんと並んでいる。

太陽系ではなく、惑星。太陽だけ消えている。

この乙女ゲームの消えたヒロインの名は「那由多日華なゆたにちか」。その名は、太陽を表す。

今の状況にそっくりだった。




 「この公園の管理人は?」




 「良い質問だ。正解、理事長だよ。そうじゃなきゃここに来てない。庭師は雇ってるらしいけどな。金出すだけの私営管理」




 やっぱりね。この世界でこの状況知ってんのリジチョぐらいでしょ。

つか、他にいて欲しくない。




 「ところでこれ、どうやって動いるんですか?」




 「さあ?」




 知らんのかい!! 気にならんのかい!!

球体には、きらきら輝いている物と、一つだけ輝いていない物がある。

順番的に、輝いている物:水、金、地、火、土、天、海。輝いていない物:木。

これって話した事ある人ない人?

おおっ!つーことはあと一人?な~んだ、ちょろいちょろい。うはははは!!

んー、でも水星の人としゃべった記憶ない。

ま、いっか。後でジゴロ君に水星の人の特徴、聞いてみよう。




 よく見ると、薄い透明な膜が張っている。綺麗だなー。ぷにぷにしてそう。

そう思って触ろうとした瞬間、




 「え!?ちょっ、ストップぅ!!」



 

 焦る様な声。私は後ろに突き飛ばされた。花壇の方に崩れそうになったが、どうにか体勢を持ち直した。

ヒールだったら危なかったな。今私が履いていたのは、星宮嬢の黒い革靴だった。




 「お、意外と怒んないんだな」


 


 突き飛ばした張本人は何故かビクビクしていた。

取って食ったりなんかしませんてば。入学式ん時のフレンドリー感どこに行った?宇宙の彼方?それとも銀河の果て?ああ、そう。




 「まあ。理由がありそうですし。ただ、もう少し手加減をお願いします」




 「あっ、ああ。すまない。あれに触れると気絶するんだよ。そして記憶が少々ぶっ飛ぶ」




 「・・・・・危なくないですか?」




 「うん。確実に危ないな?」




 ・・・・・駄目だ。この男とまともに会話できる気がしない。

脳内の私が右手で頭を支えながら、首を横に振ったその時にはもう、ジゴロ君は次の行動に移り始めていた。




 「お腹も減ってきた事だし、どこか店へ入ろうか」




 知るかお前の腹時計なんか!!

でっでも!?女子高生らしくちょっと小洒落こじゃれた喫茶店なんかに入りたいかな~、なんて。




 ジゴロ君をちらと見た。合意の証と分かるだろう。

どの店に入るのか分からないが、とりあえず公園内部の入り口付近までリターンしたその時、




 「なあ~、いいじゃん。ちょっとだけだからさ」




 「そうそう。甘味かんみが美味しい店知ってんだよ。一緒に行かね?」




 おおっとぉ!ここで来ましたテンプレート!

チンピラ男性二人、パンチラしそうなスカート履いてる若い女性二人。チンピラが甘味とか言うのも不自然だけどな。

ナンパに誘っているが、女性は嫌そうにしているが、YESもNOも言えないらしい。そういうのが一番ダメだよね。

ジゴロ君は、そこで待ってて。と、私の傍を離れた。ちょっと感動。

さあ、立派な紳士はどうする!?




 「あの、その店どこにありますか?」




 はあ!?ちっげーよ!!

止めろよ、その行為自体!ああ。チンピラも何で教えてんの?

チンピラが去っていったと思えば今度は逆ナンだとぉ!?

あ、断ってる。




 「良い店を教えてもらったよ」




 奴のノープランさに溜息をしつつも、その中に安心が一欠ひとかけあった。








 





 



 




 

 










 






 




 






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