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怪しいイケメンより心の友!!  作者: 咲川 夏雪
14/16

夜が来る前に 殴りたい、この笑顔。

 4月28日 午後04:30 1-A教室前




 そろり、そろりと猫や泥棒の様に足音を消して身を忍ばせて、教室に誰もいないことを確認した。

7時限目をサボったのでそのまま帰ろうと思っていたのに、教室に鞄を忘れるという大失態をしてしまったのだ。

しかし、今考えれば教室に置いてきて正解だったかも。終礼前に鞄持って逃げだせば必ず誰かにバレるし。

ふうぅ~っと長い溜息ををつきながら胸を撫で下ろした。

溜息は私の癖であるが、この世界に来てからそれがより頻繁になった。




 「良かった。誰もいない」




 安心で口元が緩んだ。落ち着いて教室に第一歩を踏み出そうとしたその時




 「な~にが良かったって?」




 瞬間、私の体がピシッとひび割れたのは気のせいなのだろうか?

後ろを振り向く時にギギギと音を立てたのも気のせいなのだろうか?




 背が高かったので少し下がってから見上げた。

程良く筋肉が付いてそうな体格の良い爽やか系イケメン。

混ぜ切らない鼈甲べっこうと灰白色の短髪。

良い高さで、すと降りた形の良い鼻。

ペリドットの瞳はいつもキラキラ輝いているが、眼差しと口元には明らかな不満。




 「は・・・・・土師はじ君」




 あちゃー、と苦笑いで彼の名を呼んだ。




 「どうして7時限目受けなかったんだ?遠足の説明事項があったんだぞ」




 問い詰める様に近付いて来る。それに逆らう様に後ずさった。

それを何度か繰り返している内に、とうとう窓際に追い遣られて一歩も下がれなくなってしまった。

バクッ、バクッと速くはないものの、鼓動は大きさを増してゆく。

目を見ちゃいけない。そう思って俯いて、唇を固く結んだ。

耳が・・・・・熱い。




 こっちくんな!!とも言い出せず、そのまま、有意義な学園生活の過ごし方や授業一つ一つの大切さ、より良い先輩方・先生方との接し方だの

意味の分かんないうざったい熱弁を呆れながらも緊張しながら聞いていたら、心配そうな口調で尋ねてきた。




 「ん?顔が赤い。熱でもあるんじゃないのか?」




 その男は・・・・・あろうことか、おでことおでこをゴッツンコ☆してきたのだ!

熱があるか確める為だろうけど、流石にこれは酷い。耐性が無いのだ私は!!




 ひぃ!!この天然ジゴロ!!とか、ギャーーー!!何すんねん!?とか下品に叫ばなかった私を褒めて欲しい。

いやはや、恐ろしき哉。攻略対象の力!!

あまりの衝撃でハジくんの名前表示が『ド・天然ジゴロ』になってしまった。




 「む。やっぱりちょっと熱いな。もしかして、気分が悪くて休んでいたのか!?」




 え?全く違いますけど。ていうか肩を持って前後にブンブンされるともっと気持ち悪くなるって思いませんかね、普通。

しか~し、その言葉、利用させてもらおうか。土師環はじたまき!!




 「あー。そうなんです。中庭にいた時気分が悪くなって立てない程だったので保健室にも行けなかったんです。

そのまま休んでいる間に寝落ちしちゃって。あ!もう大丈夫です。良くなりました。

ご心配をお掛けして申し訳御座いませんでした」




 ぺらぺらぺら 

役者の決まり台詞の様に言葉が流れてゆく。

観客(ド・天然ジゴロ)は目をまん丸にしてぽかんと口が半開き。

わ、引かれた?おーい、もしも~し。どこ見てんの?

三秒後、ハッと目を覚ました。




 「そ、そうか。それは大変だったな。夜部やべ先生にも伝えとけよ。イライラそわそわしてたから」




 何故なにゆえ?と思ったが、まあ気にしないでおこう。




 「誘拐されたと思ったんでしょうかね」




 「いや。それは無いな。終礼前は緊急時以外許可が無いとこの学園から出られなくなっている。入る事も出来ない。

火災や地震の時はシェルターに入るさ。それに鞄があったしな」




 マジか。過保護だな。

あのアホ教師の所為せいで学園の事全く知らない。

こないだアイツに「色々教えろ」っつったら、ねぇ!!なんて言ったと思う!?

「これから女友達と飲みに行くから。」だとよ。一々友達の前に『女』つけるなよ。

そんなかに何人セ〇レがいるんだ!?・・・・本当にいそうで怖いな。(汗

一度落ち着いてから上見たら、今の今まで忘れていたがド・天然ジゴロがじっと見ている。





 ん?何見てんの?どったの?お~い?

・・・・・上から目線で、喧嘩売ってんのかな。伝わりません。話すまでは。

念が通じたのか、ようやく向こうから口を開いてくれた。




 「・・・・・あのさ、今まで全く別の事考えてなかった?何考えてたの?」




 「(詳しくは言えないけど)夜部先生の事です」




 「え?夜部っち先生?・・・・・いや、俺、目の前にいて、一応惑生会との会員なんだけど」




 あ、ハイ。知ってます。・・・・・で?

本気で分からない、といった表情の私に、溜息を吐いた。感染うつりましたね、溜息病。(ワーイ!)




 「もうちょい意識しろよ。この距離とか」




 今さらです。ていうか、気付いてるならとっととちゃっちゃと離れて下さい。

天然取れたらただのジゴロですよ?君の行動、訳わかんない。

イライラしてきた私にも救いの光が差してきたのか奴は「やっぱ薄いかー。」とぼやきながら私から離れ、

教室の扉を開いた。その後ろ姿はなんとも頼りなく、情けない。




 「星宮!次の日曜、10:30に宙時計公園に来いよ!?話したい事がある」




 二カッと爽やか笑顔を一発。救いの光なんてものではなく、更に深き混沌の闇へと突き落としていったのであ~る。

(深き混沌の闇とか、使ってみたかっただけ。)





 4月28日 午後06:45 1-A教室




 「優梨、なっちゃん。報告だよ。文献あったけど小冊子が四冊だけだった。

地雷踏んだっぽいから退却した。読み終わるまではまた来ていいっていわれたけど、ぺら読みじゃ大した事書いてなかった。

土師環、まあ・・・ド・天然ジゴロに、で、ででっ『でえと』に誘われた」




 殿方とそんな風に二人で出掛ける事が初めてな私は、戸惑いながらも言った。




 「へえ?乙女ゲームらしくなって来たじゃあない」




 と、正直他人事の優梨。




 「相手は土師君でしょ?学校や惑生会の事、色々聞き出してきなよ」




 と、機転を利かせるなっちゃん。




成程、そう納得した私は首を縦に振った。




 




 ~土師環ステータス~



 本名『土師環』 ニックネーム『ド・天然ジゴロ』


 学力LV.54 スキル『爽やか笑顔ミントタブレット』『ジゴロ・ヘッド・クラッシュ』その他もろもろ。





 



  


 

 




 



 







 






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