夜が来る前に 双子の現実逃避城(3)
4月28日 午後03:20 聖宮学園図書館
「センパイが閲覧出来るのはぁ」
「これで全部でぇ~す」
双子はイラつかせるような口調で言う。
「あ、ありがとう・・・ござい、ます」
私は引き攣った口元を如何にか元に戻そうと必死。
ふざけんな。たったこれっぽちしかないのかよ。
小冊子が四冊、たったこれだけ。
もっとあるはずだが、私は閲覧できないブースにあるのだろう。
貸し出し禁止のテープが張ってあるのでここで読ませてもらう。
シンプルな柔らかいクッション張りで木製の椅子。
だが、控え目に彫られた背もたれと肘掛はささやかな贅沢。
猫脚も上品だ。
長く続く、同じく木製の机は傷一つ無い。生徒が大事に使っているか、
若しくは全く使っていないかのどちらかだろう。きっと後者。
こう見渡してみると細かい処にも色々と金を懸けてある。
くそぅ!金持ちめ!!
おおっと。私は今セレブなんだった。
油断してるとすぐ守銭奴魂が発動してしまう。困ったもんだ。
座って一冊目を開いた。
堅苦しい校長と理事長の言葉(但し理事長の写真と名前は無い)、
部活動の成績、惑生会について・・・
目を留めた。
『惑生会とは、生徒会とは別に学園の全生徒の四分の一以上の
支持、賛成がある聖宮学園の高等部男子生徒の集団。
稀に中等部生や女子生徒が入会する場合もあるが、
全生徒と教師の約半数以上の支持、賛成が必要となり
普通に惑生会へ入会するより更に困難となる。』
なるほど。これを双子と門地さんは突破したのか。
女子生徒が多めにいる学園とはいえ、いやはや大したものだ。
『惑生会の会員はファンクラブを作れという規定は無いが、自然と必ず出来る。
因みに惑生会は理事長が作った戯れである。』
『戯れ』ね・・・。
リジチョは人を喰った様なお方なのだろう。
私も戯れや暇潰しとして呼び出されたのか?
怒りがふつふつと熱さを増す。
そこまで読んで一息吐いたら、周りの異変に気が付いた。
両サイドに双子が頬杖をついて私の方をじぃ~~~っと見ているのだ。
「あ、あの・・・何か?」
『いいえ~。センパイ、気にせずどうぞぉ』
コ イ ツ ラ・・・!!
絶対舐めきっとる!
音を立てない様に椅子を引き、双子から少し離れた。
後ろへ手を組んで彼らをじっと見た。
一卵性の双子らしく、見た目に違いが殆ど表れていない。
クリーム色の髪は触ったり頬を当てたくなるふわふわ。
瞳は大きく、蒼月長石さながらに怪しく揺らめいている。
身長は少しばかり高めの私と同じくらい。
制服は勝手にギムナジウム風に細いリボンタイで襟元を飾って着こなしている。
普通にネクタイしろ!と言いたい所だが、実際そっちの方が似合ってる。
子供みたいに悪戯な笑顔は、幾人もの御姉様方を虜にして来たに違いない。
地声も高くて、幼少期だったら女の子と言われても違和感を覚えなかっただろう。
かわいい系だ。どっからどう見ても。
「ほら、誰かにじっと見られていると気になるでしょう!?
恥ずかしいですし・・・」
『えぇ~』
「さっきのセンパイの噛んだお説教よりはぁ」
「マシだと思いまぁ~す!」
仲良さげに、元気に手を挙げる。
恥ずかしい失態を指摘されてもう顔から火が出る思いだった。
気にしてないのかと思ったらすぐコレだよ。
あ~。蒸し返すな蒸し返すな!
すぐに掘り返されそうなので質問タイムといこう。
「あー、えーっと、なんで二人は図書委員になったの?」
あっ話変えた、と片割れが呟いたけど気にしないでおこう。
私は心のひっろ~~~い先輩なのだからな!!ふん!
「僕達が本好きなの見兼ねたセンパイ方がぁ、
『図書委員になれば毎日会えるじゃない』って生徒会長に押し掛けてぇ」
「会長は会長で『お前ら使えるから翌年から生徒会入れ。その下積み。』つってぇ、
じゃあ条件として放課後二人で図書館貸切って事ぉ」
「入ったはいいけど毎日なんて聞いてなくってぇ」
『ホント災難だよねぇ~』
やれやれ、といった様子ででハモる。
苦労しているなあ。ご愁傷様~。
「元から本好きだったんですね。意外」
「そうですよぉ。本の中では魔法が使えるんですぅ」
電波系の答えが返ってきた。弟の海の方が、うっとりとした表情で。
「扉を開けると新しい世界が広がっていて、
纏っている物や自分の殻、何もかもを置き去りにして、
ページを捲る度に現実では」
「海・・・!!」
今まで弟同様にぼうっと聴いていた天、兄が我に返り弟を止めた。
なるほど。兄弟揃って現実逃避しているのかここは。
フレンドリーに見せかけて心もこの館に閉じ込めてある。
それをヒロインが抉じ開ける、と。
普段の口調も仮面の代わりでしかなく、すぐに取れてしまう。
・・・・・私には関係ないことだが。
「あの、今日は、これで失礼します」
「放課後、また来ていいよぉ~」
『文献読み終わるまではねぇ』
いつの間にかタメ口になってるし!!
地雷を踏んでしまった様なので、すたこらさっさと逃げるのが一番!
扉をバタンと閉めてふぅ~っと息を吐いた。
本を棚に直すのを忘れた事に気付いたのは家に帰り着いた後だった。
『変なセンパイだったねぇ』
双子は扉を見た後お互いの方に向いて、目をまん丸くさせながら呟いた。
もう高等部も終わった頃だろう。
よし、帰るか。と思ったものの、重要な問題を発見した。
冷や汗が額を伝った。
「やべ。鞄、教室に置いたまんまじゃん!!」
双子は一旦ここで終了です。
結構自分は双子ちゃん好きです。




