第96話 得意と苦手
「次は英語やろうか。」
こむぎが教科書を開きながら言った。
「英語かぁ……。」
桃華の表情が少し曇る。
「その顔、苦手なんだな。」
凜空が笑う。
「だって単語がいっぱいあるんだもん!」
桃華は机に突っ伏した。
「覚えること多すぎ!」
「でも覚えたら楽になるよ。」
こむぎが優しく言う。
「こむぎは英語得意?」
「まあまあかな。」
「まあまあでできる人のやつだ……。」
凜空が苦笑する。
悠真はノートを見ながら口を開いた。
「桃華は単語からやった方がいい。」
「単語?」
「文章を覚えようとするから混乱する。」
「なるほど……。」
桃華は真剣な顔でノートを見る。
「悠真、教えるの上手いね。」
凜空が少し驚いたように言う。
「そう?」
「うん。意外。」
「意外って何。」
「いや、悠真って説明とか苦手そうだから。」
「……。」
悠真は少し黙る。
「否定しないんだ。」
こむぎが笑った。
「でも確かに分かりやすい。」
「ありがとう。」
悠真は短く答えた。
その後、桃華は単語帳を見ながら、一つずつ覚えていく。
「apple……りんご。」
「それは分かる。」
凜空がツッコむ。
「じゃあこれは?」
「……。」
桃華はじっと単語を見る。
「えっと……。」
「桃華。」
「分かってる!今考えてる!」
必死に考える桃華を見て、三人は笑った。
しばらくして。
「あ!」
桃華が声を上げる。
「覚えた!」
「本当?」
こむぎが確認する。
「うん!」
桃華は嬉しそうにうなずいた。
「やればできるじゃん。」
凜空が笑う。
「でしょ!」
桃華は胸を張る。
「最初からやればよかったね。」
「それは言わない約束!」
また部屋に笑い声が響く。
勉強はまだ続いている。
でも、四人でやると不思議と苦痛には感じなかった。
夏休みの一日は、少しずつ過ぎていくのだった。




