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第90話 勝負の1本!

よーい、スタート!


飛び込みプールを思いきり楽しんだ四人は、プールサイドで少し休憩していた。


「いっぱい遊んだねー!」


桃華はタオルで髪を拭きながら満足そうに笑う。


「まだまだ遊べるけど!」


「桃華は元気だね」


こむぎはスポーツドリンクを一口飲みながら笑った。


その時、近くのレーンから歓声が聞こえてくる。


「がんばれー!」


「あと少し!」


何人かが楽しそうに競争している姿が目に入った。


「速っ!」


桃華が目を丸くする。


「競争してるみたいだね」


こむぎがその様子を眺めると、凜空がにやりと笑った。


「俺たちもやってみる?」


「競争?」


「二十五メートル一本勝負!」


「面白そう!」


桃華はすぐに乗り気になる。


「でも私、一番遅いよ?」


「勝ち負けより思い出作り!」


凜空が笑う。


「せっかく四人で来たんだからさ。」


「それもそうだね」


こむぎもうなずいた。


「悠真は?」


「いいよ。」


短い返事だったが、その一言で勝負は決まった。


四人は空いているレーンへ移動し、スタート位置に並ぶ。


「飛び込みは禁止ね。」


こむぎが確認する。


「普通にスタート!」


「了解!」


桃華が元気よく返事をした。


「それじゃあ……」


凜空が三人を見る。


「よーい……」


少しの静寂。


「スタート!」


四人は一斉に水を蹴った。


悠真は無駄のないフォームでぐんぐん前へ進んでいく。


その少し後ろを凜空が追いかける。


こむぎも二人に負けないよう腕を動かし、水をかいていく。


一方の桃華は――。


「ぷはっ!」


十メートルほど泳いだところで立ち上がった。


「やっぱりここまでー!」


そう言って笑いながら歩いてゴールへ向かう。


その姿を見ていたこむぎは、思わず笑みを浮かべた。


数秒後。


最初にゴールしたのは悠真だった。


続いて凜空。


その少し後にこむぎがゴールする。


最後は歩いてきた桃華が笑顔で壁にタッチした。


「はぁー!」


凜空は壁につかまりながら息を整える。


「やっぱ悠真速い!」


「全然追いつけなかった。」


「悠真、すごかったね。」


こむぎが感心したように言う。


「まあ。」


悠真は短く答えた。


「でも陸なら勝てるんだけどな〜。」


凜空が笑う。


「……陸だけに。」


一瞬、その場が静かになる。


「……。」


「……。」


こむぎと悠真が顔を見合わせた。


「ぷっ!」


最初に吹き出したのは桃華だった。


「あはははっ! 絶対今言いたかっただけでしょ!」


「バレた?」


凜空は照れ笑いを浮かべる。


「でもちょっと面白かった。」


こむぎもくすっと笑う。


「こむぎ、それ甘いって!」


桃華は笑いながらツッコむ。


「完全にダジャレじゃん!」


「ダジャレだけに、場が冷えたな。」


「また言った!」


桃華はお腹を抱えて笑い出す。


こむぎもつられて笑い、凜空も楽しそうに笑う。


そんな三人を見ていた悠真も、小さく口元を緩めるのだった。

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