第89話 水しぶき大作戦!
「だ、大丈夫かな……」
飛び込み台を見上げたこむぎは、小さく深呼吸をした。
「こむぎなら大丈夫!」
プールの中から桃華が笑顔で手を振る。
「怖かったら一番低い所でいいんだし」
凜空も声をかける。
「……よし。」
こむぎは小さくうなずくと、ゆっくり飛び込み台の先まで歩いた。
一度だけ水面を見る。
「い、いきます!」
勢いよく踏み切る。
――バシャーン!
少し大きめの水しぶきが上がった。
数秒後。
「ぷはっ!」
こむぎが水面から顔を出す。
「できた!」
嬉しそうな笑顔に、三人も自然と笑顔になった。
「おー!」
桃華が拍手する。
「ちゃんと飛べたじゃん!」
「思ったより怖くなかったかも」
こむぎはほっとしたように笑った。
「せっかくだし、もう一回飛ぼう!」
桃華の一言で、四人はもう一度列に並ぶ。
二回目ともなると、こむぎも少し余裕が出てきた。
「今度はもっと遠くまで!」
「無理しなくていいからね?」
凜空が苦笑する。
順番が回ってくると、桃華は勢いよくジャンプ。
「それー!」
――バシャーン!
飛び込んだ瞬間、大きな水しぶきが周りに広がる。
「きゃっ!」
近くにいたこむぎまで少し水をかぶってしまった。
「桃華ー!」
「ごめんごめん!」
そう言いながらも、桃華は楽しそうに笑っている。
「これは仕返しだな。」
凜空がにやりと笑った。
「え?」
桃華が振り返った瞬間。
凜空は水の中から両手で水をすくい、思いきり桃華へ。
――バシャッ!
「きゃー!」
今度は桃華がびしょぬれになる。
「凜空ー!」
「先にやったの桃華だから!」
「うぅ~!」
その様子を見ていたこむぎは思わず笑い出した。
「ふふっ、楽しそう。」
「こむぎもやる?」
桃華がにやりと笑う。
「え?」
嫌な予感がした次の瞬間。
――バシャッ!
「きゃっ!」
こむぎにも水が飛んできた。
「もう!」
こむぎも負けじと水をかけ返す。
「えいっ!」
「うわっ!」
今度は凜空に命中。
「ちょっと、俺まで!?」
「巻き込まれたね。」
悠真が小さく笑う。
「悠真も逃げないで!」
桃華が水をかけようとする。
しかし悠真はひょいっと避け、水しぶきは空振り。
「速っ!」
「ずるい!」
桃華は悔しそうに頬をふくらませる。
「……。」
悠真は少しだけ笑うと、水をすくってそっと桃華へ返した。
――ぱしゃ。
「冷たっ!」
「やり返されたー!」
桃華の声に、四人は顔を見合わせる。
次の瞬間、誰からともなく笑い声が響いた。
夏の日差しの下、水しぶきと笑い声はいつまでも途切れることがなかった。




