第87話 移動中の会話
四人はレンタルコーナーで浮き輪を借りると、飛び込みプールのあるエリアへ向かって歩き始めた。
プールサイドには多くの人が行き交い、あちこちから楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「飛び込みプール、楽しみ!」
桃華は浮き輪を抱えながら弾むような足取りで歩く。
「桃華は怖くないの?」
こむぎが少し不安そうに尋ねる。
「全然!」
桃華は満面の笑みで答えた。
「高い所も結構平気なんだよね!」
「意外かも」
凜空がくすっと笑う。
そのまま少し歩いたところで、凜空がふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、こむぎって泳げるの?」
「んー、まぁ泳げなくはないよ」
こむぎは少し考えながら答える。
「えー! すごーい!」
桃華が目を丸くした。
「逆に凜空は泳げるの?」
「俺? 一応泳げるよ」
凜空は照れくさそうに笑う。
「小さい頃から毎年プールに来てたし、それなりには得意かな。」
「へぇ〜」
こむぎは感心したようにうなずいた。
「悠真は?」
桃華が尋ねる。
「泳げる」
悠真は短く答える。
「……それだけ?」
凜空が苦笑する。
「どれくらい泳げるの?」
「長い距離でも普通に泳げる」
相変わらず淡々とした返事だった。
「すごっ」
こむぎが思わず声を漏らす。
「悠真って、運動なら何でもできそうなイメージある。」
「そんなことない」
本人は否定するが、三人ともあまり信じていない様子だった。
「桃華は?」
今度はこむぎが聞き返す。
「私?」
桃華は少しだけ目をそらす。
「えっと……十メートル!」
「えっ?」
三人の声がぴったり重なった。
「そのあと立っちゃう!」
桃華は照れ笑いを浮かべる。
「だから浮き輪は必需品!」
「泳げないのに飛び込みプールは平気なんだ?」
こむぎが不思議そうに聞く。
「深い所には行かないし、飛び込むのは楽しそうだから!」
桃華は笑顔で答えた。
「なるほどね」
こむぎもつられて笑う。
そんな他愛もない話をしているうちに、四人は飛び込みプールの入口へとたどり着いた。
目の前には、高さの違う飛び込み台が並んでいる。
「おぉ……」
桃華は目を輝かせ、こむぎは思わずその高さを見上げた。




