第84話 ウォータースライダー
四人はウォータースライダーの前までやって来た。
見上げると、高い場所から勢いよく人が滑り降りてきている。
「思ったより高い……」
こむぎが見上げながらつぶやく。
「ちょっとだけ怖そうかも」
「えー! 絶対楽しいって!」
桃華は目を輝かせていた。
凜空も笑う。
「せっかく来たんだし、一回は乗らないとな」
悠真はスライダーを見上げる。
「並ぶか」
四人は列の最後尾へ向かった。
「結構並んでるね」
こむぎが前を見ながら言う。
「人気なんだね」
「夏休み初日だからね」
桃華は周りを見回す。
「あっちにもスライダーある!」
「あとで行けばいいだろ」
凜空が笑った。
「まずはこれ!」
少しずつ列が進み、四人の番が近づいてくる。
「なんか緊張してきた……」
こむぎが小さく言うと、桃華が笑った。
「大丈夫だって!」
「終わったら『もう一回!』ってなるから!」
「そうかな」
「絶対なる!」
係員に案内され、一人ずつスタート地点へ向かう。
最初は凜空。
「じゃあ行ってくる!」
勢いよく滑り出す。
「うわーーーっ!」
楽しそうな声が下まで響いた。
「めっちゃ楽しそう!」
桃華が笑う。
次は桃華。
「行ってきまーす!」
元気よく手を振ると、そのまま滑り出した。
「きゃーーー!」
叫び声と笑い声が混ざって聞こえてくる。
「次どうぞ」
係員に声をかけられ、こむぎがスタート地点へ座る。
下を見ると、思っていたより高さがある。
「……」
少しだけ耳がぴくっと動いた。
「大丈夫」
後ろから悠真が静かに声をかける。
「怖かったら目を閉じてもいい」
その一言で、こむぎの肩の力が少し抜けた。
「うん」
大きく息を吸って――
「行ってきます!」
勢いよく滑り出す。
「わっ……!」
最初は少し驚いたものの、風を切って滑る気持ちよさに自然と笑顔になる。
「あはは!」
あっという間にゴールへ到着した。
「楽しかった!」
水しぶきを上げながら立ち上がる。
桃華が駆け寄ってきた。
「ほらね!」
「もう一回乗りたくなったでしょ!」
こむぎは少し照れながら笑う。
「……うん」
最後は悠真。
無駄のない動きで滑り降り、そのまま静かにプールへ入る。
凜空が笑った。
「リアクション薄っ!」
「普通に楽しかった」
悠真が短く答える。
「もっと叫べよ!」
「無理」
四人は思わず笑った。
「次は流れるプール戻る?」
桃華が聞く。
「それとも波のプール?」
「波のプール行ってみたい」
こむぎが言う。
「じゃあ決まり!」
桃華が歩き出す。
夏の太陽の下、四人の笑い声はプール中に響いていた。




