第77話 ありがとう、先輩
大会翌日。
放課後。
部員たちは体育館へ集まっていた。
いつもの練習が始まる時間。
けれど、今日は誰もボールを持っていなかった。
体育館の中央には椅子が並べられ、その前には小さな机。
机の上には花束と、写真立てが置かれていた。
「みんな、集まったな。」
高橋先輩が前に立つ。
いつものキャプテンらしい表情だったが、その声は少しだけ優しかった。
「今日は、俺たち3年生の最後の日だ。」
体育館が静まり返る。
彩花先輩が一歩前へ出る。
「今日は堅苦しい会じゃないからね。」
「思い出話でもしながら、楽しく終わろう!」
その一言で、少しだけ緊張がほぐれた。
最初に2年生が、3年生へ花束を渡す。
「今までありがとうございました!」
3年生は笑顔で受け取った。
続いて1年生。
こむぎは花束を持ちながら、高橋先輩の前に立つ。
少し緊張している。
「高橋先輩。」
「はい。」
「入部したばかりの私たちは、何も分からなくて……。」
「でも、高橋先輩がいつも落ち着いてみんなをまとめてくださったから、安心して部活ができました。」
「本当に、ありがとうございました。」
深く頭を下げる。
高橋先輩は優しく笑った。
「こちらこそ、ありがとう。」
桃華は湊先輩の前へ。
「湊先輩!」
「はいはい。」
「ゴール下で戦う姿、本当にかっこよかったです!」
「これからも目標にします!」
湊先輩は照れくさそうに笑う。
「そんなに褒められると恥ずかしいな。」
体育館に笑いが広がった。
悠真たち男子部員も、それぞれ3年生へ感謝を伝える。
「ありがとうございました!」
「教えてもらったこと、絶対忘れません。」
3年生は一人ひとりの言葉を、静かに受け止めていた。
最後に、高橋先輩が前へ出る。
「みんな。」
「俺たちは今日で引退する。」
少しだけ間を置く。
「でも、この部には頼れる2年生と、成長した1年生がいる。」
「だから安心して任せられる。」
悠真たちは真っすぐ前を向いた。
「勝つことも大事。」
「でも、一番大事なのは仲間を信じることだ。」
「それだけは、これからも忘れないでほしい。」
「はい!」
体育館に力強い返事が響く。
最後は全員で記念写真。
「いきますよー!」
彩花先輩がカメラをセットする。
「3、2、1!」
カシャッ。
笑顔が一枚の写真に残った。
帰り道。
夕焼けに染まる校舎を見ながら、こむぎは小さくつぶやく。
「先輩たちと一緒に過ごせて、本当によかった。」
桃華も隣で笑う。
「うん。」
「次は私たちが頑張る番だね。」
こむぎは力強くうなずいた。
「はい!」
3年生から受け取った想いは、これからの星乃宮高校バスケ部へ受け継がれていく。




