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第74話 最後の夏

第二クォーター。

スコアは14対16。

星乃宮高校が2点を追いかける展開だった。

「ナイスディフェンス!」

高橋先輩の声が体育館に響く。

湊先輩が相手のシュートを防ぎ、そのボールを悠真が拾う。

「凜空!」

パスがつながる。

凜空はドリブルで切り込み、最後は遥斗先輩へ。

シュッ!

ボールがリングを通り抜ける。

16対16。

同点。

「よし!」

遥斗先輩は拳を握る。

その表情には笑顔があった。

(この仲間とプレーできるのも、あと少しなんだな。)

ふと、1年生だった頃の自分を思い出す。

入部したばかりの頃は、練習についていくだけで精一杯だった。

何度も怒られ、何度も悔しい思いをした。

それでも、バスケが好きだから続けてきた。

(あっという間だったな。)

「遥斗!」

佐々木先輩の声で我に返る。

「すみません!」

遥斗先輩は笑って走り出した。

ゴール下では湊先輩が相手と競り合っていた。

体がぶつかる。

押される。

それでも一歩も引かない。

(このユニフォームを着て試合をするのも、今日が最後かもしれない。)

そんな思いが頭をよぎる。

だからこそ、一本一本に全力を込める。

「まだまだ!」

湊先輩はリバウンドをつかみ取り、悠真へパスを送った。

高橋先輩はコート全体を見渡していた。

(悠真も、今じゃ立派な司令塔だ。)

(凜空は誰よりも前向きで、チームを明るくしてくれる。)

(蒼も、試合を重ねるたびに頼もしくなった。)

そしてベンチへ目を向ける。

こむぎと桃華が、大きな声で応援していた。

(後輩にも、恵まれたな。)

自然と笑みがこぼれる。

「キャプテン!」

悠真の声が飛ぶ。

高橋先輩はすぐに前へ走る。

パスを受けると、そのまま迷わずジャンプ。

シュッ!

18対16。

星乃宮高校が逆転した。

「ナイスシュート!」

こむぎは思わず立ち上がる。

「高橋先輩、すごい……!」

桃華も笑顔で拍手を送る。

「さすがキャプテン!」

彩花先輩はコートを見つめながら、小さくつぶやいた。

「3年生はね。」

「今日の一秒一秒が、本当に大切なんだ。」

こむぎはその言葉を聞き、もう一度コートへ視線を向けた。

どの先輩も、汗だくになりながら必死に走っている。

笑ったり、声を掛け合ったり。

その姿は、いつも以上に輝いて見えた。

(この夏が終わったら。)

(この景色も、この仲間と過ごす時間も、もう戻ってこない。)

高橋先輩は胸の中でそっとつぶやく。

(だから最後まで。)

(最後の一本まで、この仲間と戦い抜く。)

ピーーーッ!

前半終了。

スコアは20対20。

勝負は、まだどちらにも転んでいない。

しかし3年生にとっては、一歩ずつ「最後の夏」の終わりが近づいていた。

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