第72話 決勝 天城高校
準決勝から約一時間後。
決勝戦の会場には、これまで以上に多くの観客が集まっていた。
コートへ向かう部員たちの表情は真剣そのもの。
誰一人として笑ってはいない。
「いよいよ決勝だね。」
桃華が小さくつぶやく。
こむぎも静かにうなずいた。
「はい。」
「ここまで来たんですもんね。」
その横で彩花先輩が優しく微笑む。
「みんな、本当によく頑張ったよ。」
ベンチでは、高橋先輩が全員を見渡していた。
「ここまで来たら、相手が誰でも関係ない。」
静かな声が響く。
「俺たちのバスケをするだけだ。」
全員がうなずく。
「はい!」
佐々木先輩が笑いながら前に出る。
「決勝だからって緊張しすぎるなよ!」
「楽しんでこい!」
その一言で、少しだけ空気が和らいだ。
凜空が笑う。
「そうですね。」
蒼も笑顔を見せる。
「決勝なんて初めてだ!」
そのとき、会場アナウンスが流れた。
『決勝戦を開始します。両チームはコートへお集まりください。』
選手たちはゆっくりと立ち上がる。
こむぎは一人ひとりにドリンクを手渡した。
「頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
悠真が受け取り、小さく微笑む。
「行ってくる。」
「はい!」
凜空も笑顔で親指を立てる。
「勝って帰ってくる!」
蒼は拳を握った。
「絶対最後まで走る!」
遥斗先輩と湊先輩も、それぞれ静かにうなずく。
高橋先輩は最後に振り返り、こむぎたちへ笑顔を見せた。
「応援、頼む。」
「はい!」
こむぎと桃華の声が重なる。
コート中央。
相手は天城高校。
ここまで一度も負けることなく勝ち上がってきた強豪だった。
「よろしくお願いします!」
両チームが礼を交わす。
ピーーーッ!
ジャンプボール。
湊先輩が高く跳び、ボールを弾く。
悠真が受け取り、決勝戦の最初の攻撃が始まる。
体育館中の視線がコートへ集まる。
誰もが、この試合の行方を見守っていた。




