第67話 崩せれない相手
第二クォーター開始。
スコアは10対12。
まだ2点差。
だが、コートの空気は重かった。
青嶺高校は、派手な攻撃をしてこない。
ただ、静かに、正確に、崩れない。
パスミスもない。無駄な動きもない。
「じわじわ来るな……」
蒼君が小さく呟く。
相手の攻撃。
ボールはゆっくり回る。
一人が抜けると、すぐ次がカバーに入る。
隙がない。
そして——
シュッ。
また確実に決めてくる。
10対14。
「落ち着け!」
高橋先輩の声が飛ぶ。
「まだ焦る時間じゃない」
攻撃。
悠真君がボールを運ぶ。
青嶺高校は前から強くは来ない。
だが、コースが全部消されている。
「凜空君!」
パス。
すぐに2人が寄る。
「っ……!」
戻す。
「今の、全部読まれてるな」
遥斗先輩が静かに言う。
湊先輩も頷く。
「こっちの動き、見られてる」
ベンチでこむぎが小さく息を呑む。
「すごい……」
彩花先輩が頷いた。
「青嶺高校はね、“反応”じゃなくて“予測”で守ってるの」
「動く前に、もう次を読んでる」
「そんなの……どうやって崩すんですか?」
こむぎの問いに、彩花先輩は少しだけ笑った。
「だから、簡単じゃないんだよ」
コートでは攻撃が止まる。
無理に行けば止められる。
回しても隙がない。
じわじわと時間だけが進む。
「俺が行く」
蒼君が前へ出る。
しかしすぐに囲まれる。
「くっ……!」
パスアウト。
そのとき。
遥斗先輩がゆっくり歩き出す。
「一回、落ち着こう」
その声だけで、空気が変わる。
ボールは遥斗先輩へ。
ドリブルはしない。
一歩、二歩。
相手は動かない。
「……そこだ」
小さく呟く。
一瞬の間。
そして——
鋭いパス。
外へ。
「凜空君!」
凜空君は一瞬の隙を見逃さない。
ドリブル一歩。
相手が遅れる。
シュッ!
ネットが揺れた。
12対14。
「今の……!」
こむぎが思わず立ち上がる。
彩花先輩が微笑む。
「そう。ああやって“ほんの少しのズレ”を作るしかない」
だが青嶺高校はすぐに修正してくる。
また同じように、崩れない守備。
点差は広がらないが、追いつけない。
第二クォーター終了。
18対22。
4点ビハインド。
ベンチに戻る選手たち。
誰も焦ってはいない。
ただ、空気は重い。
高橋先輩が静かに言う。
「いい試合だ」
「でも、このままじゃ勝てない」
全員が顔を上げる。
「次の一手を考えるぞ」
その言葉に、全員の目が変わった。
青嶺高校戦は、まだ“攻略前”だった。




