第66話 準決勝 青嶺高校
会場の空気が、二回戦とは明らかに違っていた。
観客のざわめきも少し小さく感じるほど、コートの緊張感が強い。
「準決勝、か……」
蒼君が小さく呟く。
凜空君も静かに頷いた。
「ここからが本番って感じだな」
ベンチではこむぎと桃華が準備をしている。
「なんか……空気違うね」
桃華が少し緊張した声で言う。
こむぎも頷いた。
「うん……すごく静かに感じる」
そのとき、彩花先輩が優しく声をかけた。
「それが準決勝だよ」
「相手も観客も、みんな本気」
コートでは、選手たちが整列していた。
相手は青嶺高校。
無駄な動きが少なく、落ち着いた雰囲気のチームだった。
「よろしくお願いします」
両チームが礼をする。
ピーーーッ!
試合開始。
ジャンプボール。
湊先輩が跳ぶが、ボールは相手へ。
すぐに青嶺高校は冷静に攻めてくる。
パスが速い。
でも無駄がない。
「戻れ!」
高橋先輩の声。
しかし相手は崩れない。
ゆっくり、確実にゴールへ近づいていく。
そして——
シュッ
先制点。
0対2。
「やっぱり……強いな」
悠真君が小さく言う。
凜空君も表情を引き締める。
「でも、いける」
攻撃。
悠真君がボールを運ぶ。
青嶺高校は激しくは来ない。
だが、“穴”がない。
どこに行っても一人多いように感じる守備。
「凜空君!」
パス。
すぐにカバー。
「くそ……!」
一度戻す。
そのときだった。
「遥斗先輩!」
ボールが動く。
遥斗先輩は少しだけ目を細める。
(崩れないなら——)
一瞬の静けさ。
そして。
「今だ」
パス。
外へ。
そこには蒼君。
シュッ!
ボールがリングを通る。
2対2。
「よし!」
ベンチが少しだけ盛り上がる。
こむぎも思わず拍手する。
「入った……!」
彩花先輩が小さくうなずいた。
「今のはいい崩し方だったね」
だが青嶺高校は動じない。
また静かに攻めてくる。
点を取っても騒がない。
ミスもしない。
まるで機械のように、正確に試合を進めていく。
「これは……長い試合になる」
高橋先輩が静かに言った。
第一クォーター終了。
10対12。
2点ビハインド。
しかし誰も焦っていない。
むしろ——
ここからだ、という空気だった。
ベンチへ戻ると、こむぎがタオルを渡す。
「お疲れさまです!」
「ありがとう」
遥斗先輩は短く言って座る。
湊先輩も静かに水を飲む。
高橋先輩が全員を見る。
「いい入りだ」
「相手は崩れないチームだ」
「だからこそ——焦った方が負ける」
その言葉に、全員がうなずく。
青嶺高校との戦いはまだ始まったばかり。
この試合は、今までとは違う“頭脳の勝負”だった。




