第65話 準決勝へ
二回戦終了後の体育館。
熱気がまだ残るコートで、選手たちはクールダウンをしていた。
「勝ったな……」
蒼君が汗を拭きながら呟く。
「でも、次が本番だよね」
凜空君も表情を引き締める。
ベンチではこむぎと桃華が片付けをしていた。
「準決勝って、どことやるんだろ」
桃華がタオルを畳みながら言う。
その横で彩花先輩が資料を見せる。
「次はね、青嶺高校だよ」
「え……」
こむぎの手が止まる。
「強いんですか?」
彩花先輩は少しだけ真剣な顔になる。
「うん。かなり強い」
「特に組織力が高くて、ミスが少ないチーム」
その頃、コートでは3年生たちが集まっていた。
高橋先輩が全員を見渡す。
「ここからが本番だ」
静かな声なのに、空気が引き締まる。
「準決勝は、今までみたいにはいかない」
「相手は“崩れない”」
佐々木先輩が肩を回しながら笑う。
「つまり、こっちが崩しにいくしかないってことだな」
「そういうことだ」
遥斗先輩と湊先輩もその輪にいる。
湊先輩が静かに言う。
「ここからは……1年生だけじゃ厳しいですね」
遥斗先輩は少しだけ笑った。
「だから俺らの出番だろ」
その言葉を、少し離れた場所で1年生たちが聞いていた。
悠真君が小さく息を吐く。
「……やっぱり、準決勝は違うな」
凜空君も頷く。
「今までと空気が違う」
蒼君は拳を握る。
「でも、やるしかないだろ」
その様子を見ながら、こむぎは胸の前で手を握る。
(準決勝……)
(みんな、本気になるんだ)
その時だった。
高橋先輩が振り向く。
「1年」
「はい!」
全員が反応する。
少しだけ間があって——
「ここからは、ちゃんと“見てろ”」
その一言だけだった。
でも、それだけで十分だった。
彩花先輩が小さくこむぎに耳打ちする。
「準決勝はね、雰囲気が変わるよ」
「一気に“本物の試合”になる」
こむぎは静かに頷く。
「はい……」
夕方。
体育館の外に出ると、空が少しだけ赤く染まっていた。
明日。
準決勝。
青嶺高校との一戦。
チーム全員が、それぞれの想いを胸に帰り支度をしていた。
凜空君が空を見上げる。
「明日か……」
悠真君が短く言う。
「勝つ」
蒼君は笑う。
「当たり前だろ」
そしてこむぎは、小さく呟いた。
「……みんな、かっこいいな」
桃華が隣で笑う。
「明日、もっとすごいよ」




