第59話 思いをのせた1本
第二クォーター。
スコアは24対18。
試合時間は残り三分。
体育館には応援の声が響き渡っていた。
「交代!」
審判が手を上げる。
高橋部長がベンチへ目を向けた。
「高梨。」
「はい!」
真斗は勢いよく立ち上がる。
胸の鼓動がどんどん速くなる。
(ついに……。)
(俺の出番だ。)
佐久と軽く手を合わせる。
「落ち着いて。」
「任せろ!」
そう言ったものの、足は少し震えていた。
コートへ入る。
観客席。
ベンチ。
すべてがいつもの練習とは違う。
(でも……。)
真斗はそっとベンチを見る。
そこにはマネージャーとして立つこむぎの姿。
真剣な表情で試合を見つめている。
(今日は……。)
(こむぎさんに、いいところを見せたい。)
その想いだけが、真斗の背中を押していた。
「試合再開!」
相手ボール。
悠真が声を出す。
「ディフェンス!」
全員が素早く動く。
相手がドライブを仕掛ける。
真斗も必死についていく。
(抜かせるか!)
体を張ってコースを塞ぐ。
苦しくなった相手はパスを選んだ。
そのボールを遥斗がカットする。
「ナイス!」
ボールは悠真へ。
悠真は一瞬で前を向く。
凜空が右へ走る。
蒼が左へ広がる。
そして。
ゴール下へ走り込む真斗が見えた。
「真斗!」
パスが通る。
「えっ!?」
思わず目を見開く。
(俺!?)
一瞬だけ頭が真っ白になる。
それでも体は動いた。
フェイント。
相手が飛ぶ。
「今だ!」
一歩踏み込み、ゴールへ。
シュッ――。
ボールがリングへ当たる。
コロン。
コロン。
そして――
スパッ。
ネットが大きく揺れた。
26対18。
「よっしゃあぁぁ!!」
真斗は思わず拳を突き上げる。
公式戦初得点。
嬉しさが一気にあふれ出した。
その瞬間。
自然とベンチへ目が向く。
こむぎが笑顔で拍手をしていた。
「ナイスシュート!」
桃華の声と一緒に、こむぎも何度もうなずいている。
(見てくれた……!)
(こむぎさんが、見てくれた!!)
胸が熱くなる。
思わず笑顔がこぼれた。
(やった……。)
(少しはかっこいいって思ってくれたかな。)
「真斗!」
凜空が肩を叩く。
「ナイス!」
「ありがと!」
悠真も小さく笑う。
「落ち着いて決めたな。」
「へへっ!」
真斗は照れながら頭をかいた。
プレーが切れ、ベンチへ戻る。
颯馬がニヤニヤしながら近づいてきた。
「お前さ。」
「なんだよ。」
「シュート決めたあと、真っ先にこむぎさん見てただろ。」
「っ!?」
真斗の動きが止まる。
「ち、違……!」
「いや、絶対見てた。」
「しかもめっちゃ嬉しそうだった。」
「う、うるさい!」
顔が一気に赤くなる。
その様子に凜空と蒼まで笑い出した。
「分かりやすすぎ。」
「応援したくなるけどな。」
真斗は恥ずかしそうに顔を隠す。
それでも口元は緩んだままだった。
一方、こむぎは記録を書きながら小さく微笑む。
「真斗くん、嬉しそうだったね。」
桃華も笑う。
「初得点だもん!」
こむぎはそれ以上深く考えることはなかった。
真斗の気持ちには、まだ気づいていない。
ピーーーッ!!
前半終了。
スコアは30対20。
10点リード。
しかし、本当の勝負はこれからだった。




