第58話 ベンチの力
ピーーーッ!
第二クォーター開始。
スコアは16対13。
3点リードのまま試合が再開した。
「ディフェンス!」
悠真が声を出す。
相手ガードにぴったりとつき、簡単には前へ行かせない。
しかし相手も負けてはいない。
鋭いパスがゴール下へ通る。
「湊!」
遥斗の声。
「任せろ!」
湊が体を張って相手を止める。
苦しい体勢から放たれたシュートはリングに当たり、大きく跳ねた。
「リバウンド!」
今度は遥斗がしっかりとボールをつかむ。
「ナイス!」
凜空が前へ走る。
遥斗はすぐにロングパス。
受け取った凜空は一気にリングへ向かう。
シュッ!
18対13。
「いい流れだ!」
翔哉がベンチから叫ぶ。
高橋部長も静かにうなずいた。
だが、その直後だった。
「ピーッ!」
ファウル。
蒼が二つ目のファウルを取られる。
「くっ……。」
少し悔しそうに拳を握る。
高橋部長はすぐにベンチへ目を向けた。
「神崎、下がれ。」
「紺野。」
「はい!」
佐久が勢いよく立ち上がる。
「落ち着いていけ。」
「はい!」
佐久がコートへ入る。
これが公式戦初出場だった。
(いつも通り。)
深呼吸を一つ。
焦らない。
無理をしない。
それが佐久の強みだった。
試合再開。
相手が攻め込んでくる。
「右!」
悠真の声。
佐久は素早くカバーへ入る。
相手のパスコースを読み、ボールをはじいた。
「ナイス!」
そのままボールは悠真へ。
速攻開始。
悠真から凜空へ。
凜空から遥斗へ。
最後は——
シュッ!
遥斗が確実に決める。
20対13。
「ナイスプレー!」
ベンチが大きく盛り上がる。
佐久は派手なプレーではない。
でも、確実にチームの流れを良くしていた。
ベンチでは真斗が身を乗り出していた。
「すげぇ……。」
颯馬もうなずく。
「目立たないけど、めっちゃ大事なプレーだな。」
こむぎは記録を取りながら、ふと佐久を見る。
(派手じゃなくても、ちゃんとチームを支えてる……。)
桃華も笑顔で拍手を送る。
「佐久くん、いいね!」
試合終了まで残り二分。
高橋部長がもう一度立ち上がる。
「交代!」
全員の視線がベンチへ向く。
「高梨。」
「はいっ!」
真斗が勢いよく立ち上がった。
ついに、初出場の瞬間が訪れる。




