第57話 開幕のホイッスル
「よろしくお願いします!」
両チームの声が体育館に響く。
ピーーーッ!
夏大会一回戦。
バスケ部の夏が、ついに始まった。
ジャンプボール。
センター・横井湊が高く跳び、ボールを弾く。
「ナイス!」
ボールは悠真のもとへ。
ゆっくりとドリブルで前線へ運ぶ。
(落ち着いて……。)
公式戦。
緊張しているのは自分だけじゃない。
そう言い聞かせながら、味方の動きを見る。
「凜空!」
パス。
凜空はすぐにドライブを仕掛ける。
相手を一人かわすが、二人目が立ちはだかった。
「無理するな!」
ベンチから高橋部長の声。
凜空はすぐに判断を変えた。
「遥斗先輩!」
外で待っていた遥斗へパス。
遥斗は迷わずシュート。
シュッ!
ボールはきれいな放物線を描き、リングを通った。
2対0。
「ナイスシュート!」
翔哉が大きな声で手を叩く。
「いいスタートだ!」
相手もすぐに反撃してくる。
速いパス回し。
ゴール下への切り込み。
「湊!」
遥斗が叫ぶ。
「任せろ!」
湊が体を張ってコースを塞ぐ。
苦しい体勢になった相手のシュートはリングに弾かれた。
「リバウンド!」
蒼が飛び込む。
ボールを押さえ、すぐに悠真へ。
「ナイス!」
悠真は一気に前へ走る。
凜空も並走する。
「行け!」
悠真は迷わずパス。
凜空が受け取り、そのままレイアップ。
4対0。
応援席から大きな拍手が起こる。
「いいぞ一年!」
翔哉が笑顔で叫ぶ。
その横で高橋部長は腕を組みながら静かにうなずいた。
「落ち着いてる。」
しかし、公式戦は甘くない。
相手エースが連続得点を決め、
4対4。
試合は振り出しに戻る。
体育館の空気が少し張りつめた。
「大丈夫!」
遥斗が声をかける。
「慌てなくていい!」
その一言で、一年生たちの表情が少し柔らぐ。
悠真は大きくうなずいた。
「はい!」
次の攻撃。
悠真がボールを運ぶ。
相手ディフェンスが前に出た瞬間。
「蒼!」
絶妙なタイミングでパスが通る。
蒼はフェイントを入れ、ゴール下へ。
「うおおっ!」
そのままシュート!
シュッ!
6対4。
「よし!」
蒼は拳を握る。
その後も一進一退の攻防が続く。
凜空のスピード。
悠真の冷静なゲームメイク。
遥斗と湊の安定したプレー。
そしてベンチから響く、部長と副部長の声。
チーム全員で戦っていた。
ピーーーッ!
第一クォーター終了。
16対13。
わずか3点リード。
選手たちはベンチへ戻る。
「お疲れ!」
こむぎと桃華がすぐにドリンクを手渡す。
「ありがとう。」
凜空が笑顔で受け取る。
「まだ始まったばっかりだな!」
「うん。」
こむぎも笑顔でうなずいた。
一方、ベンチでは佐久、真斗、颯馬が真剣な表情でコートを見つめている。
(いつ呼ばれても動けるように。)
三人とも、準備はできていた。
高橋部長がホワイトボードを持って立ち上がる。
「いい入りだった。」
「だが、このままじゃ終わらない。」
「第二クォーターも、自分たちのバスケを貫くぞ。」
「はい!」
全員の声が一つになる。
夏大会一回戦。
勝負は、まだ始まったばかりだった。




