第56話 初めての公式戦
朝。
いつもより少し早い時間。
寮の食堂には、部員たちが続々と集まっていた。
「おはよう。」
こむぎが食堂へ入ると、桃華が大きく手を振る。
「こむぎ!こっちこっち!」
「おはよう、桃華。」
席に座ると、いつもより静かな空気に気づく。
大会当日だからだろう。
蒼でさえ、今日は落ち着いて朝食を食べている。
「珍しいね。」
凜空が笑う。
「蒼が静か。」
「今日はさすがにな。」
蒼は苦笑いした。
「ちょっと緊張してる。」
その言葉に、みんなの表情が少しほころぶ。
朝食を終え、全員で学校へ向かう。
授業は午前中だけ。
昼前に終わると、そのまま体育館前へ集合した。
「忘れ物はないな?」
高橋部長が全員を見渡す。
「ユニフォーム。」
「シューズ。」
「飲み物。」
「全部確認しろ。」
「はい!」
バスに乗り込み、大会会場へ向かう。
車内では、それぞれ違う時間が流れていた。
凜空と蒼は窓の外を見ながら大会の話。
真斗は「絶対出番が来る!」と何度も気合いを入れ、颯馬に「落ち着けって」と笑われる。
悠真はイヤホンをせず、静かに目を閉じていた。
佐久も隣で黙ったまま座っている。
こむぎと桃華は彩花と一緒に、大会で使うタオルやドリンクを最終確認していた。
やがて、会場に到着する。
大きな体育館。
入口には、大会名が書かれた看板が立っていた。
「わぁ……。」
こむぎは思わず声を漏らす。
「すごい人……。」
観客席には、すでにたくさんの人が座っていた。
更衣室でユニフォームに着替えた選手たちが戻ってくる。
「似合ってるね。」
桃華が笑う。
「ありがと!」
凜空が笑顔で返した。
悠真は静かにシューズの紐を結び直している。
その姿を見た高橋部長が言う。
「緊張するのは当たり前だ。」
「だが、コートに立ったら練習してきたことを信じろ。」
全員が大きくうなずいた。
アップを終え、いよいよ試合開始が近づく。
審判の声が響く。
「両チーム、整列!」
選手たちがコートへ向かう。
スタメンは――
東雲悠真
朝倉凜空
神崎蒼
相原遥斗
横井湊
こむぎはベンチから、その背中を見つめる。
(頑張って……!)
桃華も両手を握りしめた。
「みんな、ファイト!」
両チームが向かい合う。
「よろしくお願いします!」
体育館いっぱいに声が響く。
そして――
ピーーーッ!
試合開始のホイッスルが鳴った。
初めての夏大会。
バスケ部の熱い夏が、いよいよ幕を開けた。




