第55話 夏大会前日
朝。
寮の食堂には、いつもより少しだけ静かな空気が流れていた。
「おはよう、こむぎ。」
桃華がトレーを持って隣に座る。
「おはよう、桃華。」
こむぎも小さく笑顔を返した。
「いよいよ明日だね。」
「うん……。」
大会前日。
その言葉だけで少し緊張してしまう。
そこへ凜空と蒼がやって来た。
「おはよー!」
「今日は最後の練習だな!」
「楽しみ!」
凜空はいつも通り明るい。
その後ろから悠真と佐久も食堂へ入ってくる。
「おはよう。」
悠真が短く言う。
「おはよう。」
こむぎも軽く頭を下げた。
真斗と颯馬は朝から言い合いをしている。
「絶対俺、活躍する!」
「だから朝からうるさいって!」
食堂には自然と笑いが広がった。
学校での授業はあっという間に終わる。
放課後。
校門前にいつものメンバーが集まる。
「行こう!」
蒼の一言で歩き始める。
凜空、悠真、佐久、真斗、颯馬。
こむぎと桃華もその後ろを歩く。
他愛ない話をしながら、寮と体育館のある敷地へ向かった。
体育館。
「集合。」
高橋部長の声で全員が整列する。
「明日から夏大会が始まる。」
部員全員の表情が引き締まる。
「まず、大会登録メンバーを確認する。」
部長は一人ずつ名前を読み上げる。
3年生
・高橋凌河
・佐々木翔哉
2年生
・相原遥斗
・横井湊
・佐野瑠衣
1年生
・東雲悠真
・朝倉凜空
・神崎蒼
・紺野佐久
・高梨真斗
・橋本颯馬
「以上、11名。」
「スタメンは先日発表した通りだ。」
「だが、試合は何が起こるか分からない。」
「交代で流れを変える選手も必要になる。」
「全員が試合に出る準備をしておけ。」
「はい!」
力強い返事が体育館に響いた。
その後は大会前最後の練習。
スタメンは連携を確認しながらプレーする。
ベンチメンバーも、少しでもアピールしようと必死だった。
コートの外では、こむぎと桃華が水筒を並べ、彩花が二人に指示を出している。
「こむぎ、タオルお願い。」
「うん!」
「桃華はドリンクの補充ね。」
「任せてください!」
三人は手際よく動き回る。
練習が終わり、全員が整列する。
高橋部長が静かに口を開いた。
「明日は、このチームで戦う最初の公式戦だ。」
「勝ち負けも大切だ。」
「だが、それ以上に今まで練習してきたことを信じろ。」
副部長の翔哉が笑って続ける。
「ガチガチになるなよ!」
「楽しんでこい!」
部員たちから少し笑いがこぼれる。
緊張していた空気が少しだけ和らいだ。
寮へ戻る帰り道。
夕日に照らされた道を歩きながら、桃華が笑う。
「こむぎ。」
「明日、みんなを全力で支えようね!」
「うん!」
こむぎは大きくうなずいた。
前では凜空と蒼が試合の話で盛り上がり、悠真と佐久は静かに作戦を話している。
真斗は「途中出場でも絶対活躍する!」と気合十分で、颯馬に「まず落ち着け!」と笑われていた。
その後ろ姿を見つめながら、こむぎはそっと思う。
(みんなで勝ちたい。)
夏大会まで、あと一日。
それぞれの想いを胸に、最後の夜が静かに更けていった。




