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第50話 揺れ始める立ち位置

放課後の体育館。

いつも通りの練習……のはずだった。

「今日から少し内容を変える。」

高橋部長の声に、全員の動きが止まる。

「夏大会前だ。ここからは“全員同じ練習”じゃない。」

体育館に緊張が走る。

「ポジションごとに分ける。」

「試合を想定した動きを増やす。」

「そして……」

一拍置いて、部長は続けた。

「実力で、出場メンバーも変える。」

一瞬、静かになる。

凜空が小さく笑う。

「……ついに来たか。」

蒼は拳を握る。

「燃えるじゃん。」

颯馬は少しだけ固まっている。

「え、これって……」

真斗は目を輝かせていた。

「チャンスってことだよな!」

その様子を見ていた悠真は、静かに息を吐く。

(ここからが本番か。)

隣の佐久も同じようにボールを見ていた。

「……差が出るな。」

「そうだな。」

短い会話。

でも、空気は少しだけ張りつめていた。

「まずは5対5のゲーム形式。」

副部長・翔哉が声を上げる。

「アピールタイムってやつ!」

「ミスってもいいから、思い切っていけ!」

「はい!」

試合形式が始まると、空気が一気に変わった。

「凜空!」

「ナイス!」

蒼との連携が一気に加速する。

スピードで相手を崩すプレー。

「いいぞ一年!」

先輩の声も飛ぶ。

一方。

悠真は静かだった。

派手な動きはない。

でも、空いたスペースをすぐ見つける。

「そこ!」

パス。

シュート。

決まる。

「……やるな。」

横井湊が小さくつぶやく。

佐久も同じだった。

目立たないが、ミスがない。

確実に仕事をこなしていく。

部長・高橋が少しだけ目を細める。

(安定してるな……)

その頃。

初心者組。

「真斗!」

「おう!」

颯馬からのパス。

「いける!」

ドリブル。

シュート!

カンッ。

外れる。

「くそっ!」

でも真斗はすぐに走る。

「次!」

その姿に翔哉が笑う。

「いいねぇ、その感じ!」

コート外では。

「こむぎちゃん。」

星野彩花が静かに言う。

「今日は“判断”も見てるからね。」

「はい。」

こむぎはスコアを見ながら丁寧に記録していく。

その横で桃華が小さくつぶやく。

「なんか……空気変わったね。」

莉音も頷く。

「ここからが選抜だね。」

練習終了後。

「集合!」

部長の声。

全員が並ぶ。

「今日の練習で見えた。」

「誰がどこで戦えるか。」

一人ひとりを見ながら、続ける。

「夏大会のメンバーは、まだ決定じゃない。」

「だが――」

「ここからが勝負だ。」

帰り道。

凜空が笑う。

「面白くなってきたな!」

蒼も笑う。

「絶対スタメン取る!」

少し後ろで。

悠真は空を見上げていた。

(……勝つ。)

佐久は静かに歩く。

「やるしかないな。」

真斗は拳を握る。

「こむぎさんに……ちゃんと見てもらえるくらいにはなる!」

颯馬がツッコむ。

「理由それかよ!」

でも、誰も笑いを止めなかった。

夕焼けの帰り道。

それぞれの胸に、同じ言葉があった。

――ここからが、本当の勝負だ。

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