第49話 ペア活動
放課後。
「よし、一年生!」
高橋部長の声が体育館に響く。
「今日は二人一組のメニューをやる。」
「ペアはこっちで決める。」
一年生たちは少し緊張した表情になる。
部長はホワイトボードに名前を書いた。
朝倉凜空 ― 神崎蒼
東雲悠真 ― 紺野佐久
橋本颯馬 ― 高梨真斗
「この組み合わせでいく。」
「はい!」
最初のメニューはパス交換。
「相手が取りやすい場所へ。」
副部長・佐々木翔哉が見本を見せる。
「強さよりコントロール!」
「オッケー!」
「蒼!」
凜空がパスを出す。
「ナイス!」
蒼もすぐに返す。
「テンポいいな!」
翔哉が親指を立てる。
「さすが経験者!」
二人は自然と笑顔になった。
一方。
悠真と佐久。
「……よろしく。」
「よろしく。」
昨日より少しだけ自然に言葉を交わす。
パシッ。
パシッ。
静かなリズムでパスが続く。
「取りやすい。」
佐久がぽつり。
「ありがとう。」
悠真も短く返した。
会話は少ない。
でも、お互いに少しずつ息が合い始めていた。
初心者組。
「真斗!」
「おう!」
颯馬がパスを出す。
「あっ!」
真斗は取り損ねてしまう。
コロコロ……。
ボールが転がっていく。
「ごめん!」
「大丈夫!」
颯馬は笑いながらボールを拾った。
「俺も最初はこんな感じだったし!」
「よーし!」
「次は絶対取る!」
二人は笑い合う。
その様子を見た高橋部長も、小さくうなずいた。
その頃。
マネージャー組はビブスを畳んでいた。
「こむぎちゃん。」
星野彩花が声をかける。
「今日から練習メニューもノートに書いてみようか。」
「はい。」
こむぎは丁寧な字で書き始める。
彩花は思わず感心した。
「字もきれいだね。」
「ありがとうございます。」
少し照れたように笑うこむぎ。
その隣では、桃華がボトルを並べていた。
「桃華ちゃん。」
莉音が声をかける。
「今日は並べるの速いね。」
「毎日やってたら覚えました!」
「すごいすごい。」
桃華は嬉しそうに笑った。
練習の最後。
「集合!」
高橋部長が全員を見る。
「今日のペア練習で分かったことがある。」
「バスケは一人じゃできない。」
「相手を信じること。」
「声を掛け合うこと。」
「それを忘れるな。」
「はい!」
体育館に元気な返事が響く。
帰り道。
「今日の練習、楽しかった!」
凜空が笑う。
「蒼、またペアになりたいな!」
「俺も!」
その後ろでは。
「今日はありがとう。」
佐久が静かに言う。
悠真は少しだけ笑って答えた。
「こちらこそ。」
少しずつ。
本当に少しずつ。
一年生たちの距離は縮まり始めていた。
夕焼けの道を、四人は今日も並んで歩いて帰るのだった。




