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第5話 静かなクラスメイト

昼休みが終わり、午後の授業が始まった。

 私は窓際の席で、ぼんやり黒板を眺めていた。

(眠い)

 春の午後。

 暖かい。

 先生の声もなんだか心地いい。

「暁月ー」

 後ろから小声が聞こえた。

 振り向くと、朝比奈桃華がニヤニヤしている。

「なに?」

「今寝そうだったでしょ」

「寝てないし」

「尻尾めっちゃだらけてたよ?」

「うそ!?」

 慌てて尻尾を見る。

「嘘だけど」

「桃華ぁ!」

 楽しそうに笑う桃華。

(ほんと元気だな、この子)

 そのとき。

 前の方の席から、何かが落ちる音がした。

 消しゴムだった。

 ころころ転がって、私の机の近くで止まる。

「あ」

 私は拾い上げた。

 持ち主を見る。

 東雲悠真だった。

「はい」

「……ありがとう」

 短い返事。

 それだけ。

 でも。

(やっぱり静かだな)

 桃華が大型犬なら。

 東雲悠真は、木陰で昼寝してる犬だ。

(同じ犬でも全然違うな)

 そんなことを考えていたら。

「どうした?」

 悠真がこちらを見ていた。

「え?」

「ずっと見てた」

「見てない見てない」

 反射的に否定する。

 悠真は少しだけ首を傾げた。

「そう」

 それだけ言って前を向く。

(絶対信じてない)

 授業が終わる。

 先生が教室を出た瞬間。

「こむぎー!」

 桃華が飛んできた。

「今日さ、帰り寄り道しない?」

「まだ転校二日目なんだけど」

「だからじゃん!」

 意味が分からない。

「東雲も行く?」

 桃華が突然聞いた。

 悠真は少し考えてから。

「遠慮しとく」

「えー!」

 桃華が不満そうな声を出す。

 でも悠真は気にしていない。

「また今度」

 そう言って鞄を持った。

 教室を出る前。

 一瞬だけ。

 本当に一瞬だけ。

 悠真の視線が私に向いた気がした。

(……気のせいかな)

 そのまま彼は教室を出ていく。

「不思議な人だよねー」

 桃華が言う。

「そうだね」

 私は窓の外を見る。

 東雲悠真。

 静かな人。

 でも。

(なんだろう)

(ちょっとだけ気になる)

 そんなことを思った。

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