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第45話 楽しいお仕事

放課後。

部員たちはそれぞれ準備を始めていた。

「ボール出すぞー!」

「はーい!」

体育館はいつものように賑やかだ。

こむぎと桃華も、マネージャーの仕事を始めていた。

「こむぎちゃん、このビブスお願い!」

星野彩花が笑顔で渡す。

「はい!」

こむぎは一枚ずつ丁寧に並べていく。

「相変わらず丁寧だね。」

彩花が微笑む。

「ありがとうございます。」

その様子を、少し離れた場所から見ている人がいた。

「……。」

高梨真斗だ。

(話しかけたいな……。)

でも仕事中だ。

邪魔はしたくない。

「真斗?」

蒼が肩を叩く。

「何ぼーっとしてる?」

「いや、なんでも!」

「怪しいなぁ。」

練習が始まり、一時間ほどが過ぎた。

休憩時間。

マネージャーが飲み物を配り始める。

「どうぞ。」

「ありがとう!」

こむぎは順番にボトルを渡していく。

そして。

真斗の前まで来た。

「はい。」

「ありがとう!」

受け取った真斗は少し緊張しながら口を開く。

「あの!」

こむぎが顔を上げる。

「はい?」

「今日もお疲れさま!」

ほんの少しの沈黙。

「……お疲れさまです。」

こむぎは小さく笑って返した。

それだけだった。

でも。

「……!」

真斗の表情がぱっと明るくなる。

「返事してくれた!」

その声に、近くにいた颯馬が吹き出す。

「いや、普通に返事しただけじゃん!」

「でも嬉しい!」

「お前、分かりやすすぎ!」

蒼まで笑い始める。

そのやり取りを見ていた莉音が歩いてくる。

「真斗。」

「な、なに?」

「浮かれすぎ。」

「だって!」

莉音は苦笑いしながら、こむぎの方を見る。

「こむぎちゃん。」

「はい?」

「真斗が騒がしかったらごめんね。」

「昔からこういう子なの。」

こむぎは少し驚いてから首を横に振る。

「大丈夫です。」

「元気なんだなって思いました。」

「……ほら。」

莉音が真斗を見る。

「迷惑じゃないって。」

「よかったー!」

真斗は心の底から安心したように笑った。

その様子を見ていた桃華が、こむぎの耳元で小さくささやく。

「真斗くん、すごく嬉しそう。」

「そうだね。」

「悪い人じゃなさそう。」

「うん。」

こむぎも小さくうなずいた。

その日の練習後。

「こむぎちゃん。」

今度は相原遥斗が話しかける。

「今日もお疲れさま。」

「お疲れさまです。」

「そういえば、この前猫が好きって言ってたよね?」

こむぎの耳がぴくっと動く。

「はい。」

「この前、猫カフェで撮った写真があるんだけど見る?」

スマホを見せると、そこには丸くなって眠る猫。

「……かわいい。」

こむぎの表情がふわっと柔らかくなる。

「でしょ!」

「この子、人懐っこくてね。」

二人は少しの間、猫の話で盛り上がった。

その様子を見た桃華はにこにこ。

「こむぎ、すごく楽しそう!」

夕暮れの体育館には、笑い声が優しく響いていた。

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