第33話 テスト結果発表
教室の空気は、いつもより少しだけ張りつめていた。
テストが終わって数日。
ついにその日が来た。
暁月こむぎは、廊下の掲示板の前に立っていた。
(……ここにあるんだよね)
白い紙。
そこに、全員の名前が並んでいる。
「うわ、見たくないんだけど」
後ろで朝比奈桃華が小さくつぶやく。
「でも見ないと終わらないよ」
こむぎは静かに言って、視線を上に向けた。
最初に目に入ったのは、一番上の名前だった。
1位 暁月こむぎ
一瞬、周りの音が消えた気がした。
(……え?)
自分の名前が、そこにある。
「え、ちょっと待って」
桃華が横から覗き込む。
「こむぎ1位!?ほんとに!?」
ざわっ、と空気が動く。
次の名前。
2位 東雲悠真
東雲悠真は、特に表情を変えなかった。
ただ、小さく息を吐く。
「……まぁ、そんなもんか」
その少し下。
3位 朝倉凜空
「おー、惜しいじゃん」
朝倉凜空は軽く笑った。
でも、その目は少しだけ上を見ていた。
そして。
46位 朝比奈桃華
「よし!」
桃華が妙に明るい声を出す。
「逆にネタになるやつきた!」
「それでいいの?」
こむぎが思わず聞く。
「いいの!」
でも、教室の空気はもう変わっていた。
「え、こむぎ1位ってマジ?」
「初テストでこれはやばいでしょ」
「普通に天才枠じゃん」
ざわざわが広がっていく。
こむぎは紙を見たまま、少しだけ固まっていた。
(1位……?)
実感が追いつかない。
そのとき。
悠真の視線が一瞬だけこむぎに向く。
(やっぱり、か)
言葉にはしない。
でも納得している顔だった。
凜空はその横で、小さく笑う。
「……やっぱそうなるか」
誰にも聞こえないくらいの声。
桃華がこむぎの腕を軽くつつく。
「ねえ、普通にすごくない?」
「いや……分かんない」
「そこは喜んでいいとこだよ」
こむぎはもう一度順位表を見る。
自分の名前。
その下に並ぶ友達の名前。
(なんか……変な感じ)
嬉しいのか、まだよく分からない。
でも確かに一つだけ分かる。
“この結果で、何かが変わる”
廊下の空気が、少しだけ騒がしくなっていく。
誰かの視線が、こむぎに集まり始めていた。




