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第30話 ファンクラブ 定期テスト反省会

放課後の教室。

誰もいなくなったはずの時間に、数人だけが残っていた。

机を寄せて、小さな円を作るように座っている。

「で、どうだった?」

「まずは情報整理から」

その空気は、やけに真剣だった。

――そしてそれは、こむぎ本人には一切知られていない。

「暁月こむぎ、今回のテスト」

誰かがノートを開く。

そこには細かくメモが書かれていた。

英語:落ち着いて解いていた

数学:途中の応用で一瞬止まったが復帰が早い

理科:ミスが少ないタイプ

「分析されすぎじゃない?」

「大事でしょ」

そう、これはただの噂ではない。

暁月こむぎを中心にした、非公式の観察記録だった。

「あとさ」

別の女子が声を落とす。

「今回、東雲くんが結構こむぎちゃん見てなかった?」

空気が少しだけ変わる。

東雲悠真の名前が出ると、全員が一瞬だけ黙る。

「見てた。絶対見てた」

「いや“たまたま”じゃない?」

「たまたまであの頻度は無理」

「それと、朝倉くん」

今度は少し空気が軽くなる。

朝倉凜空

「こむぎちゃんに普通に話しかけてるの強すぎる」

「距離近いんだよね、自然に」

「でもあの人、誰にでも優しくない?」

「そこが問題」

机の上には、勝手に作られた“観察シート”が並んでいる。

テスト中の集中度

休み時間の反応

話しかけた時の返答速度

「これ、もはや研究じゃん」

「ファンクラブってそういうものでしょ?」

誰かが真顔で言う。

「で、結論どうする?」

少しの沈黙のあと。

「……こむぎちゃん、やっぱり中心で確定」

「異論なし」

「異論あるわけない」

ただし、そのとき誰も気づいていない。

その“中心”の周りで、すでに少しずつ関係が動き始めていることに。

廊下の向こう。

偶然その近くを通った誰かが、小さくくしゃみをした。

(なんか……見られてる気がする)

もちろん、それは気のせいだった。

こむぎは今日も普通に帰っている。

何も知らないまま。

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