第27話 テスト最終日
テスト3日目。
教室に入った瞬間、空気がいつもより少しだけ軽かった。
でも、それは「終わりが近い軽さ」であって、安心ではない。
今日で最後。
科目は一番“差がつく”と噂される教科だった。
こむぎは机に座って、静かにペンケースを開ける。
(ここまで、悪くない)
手応えはある。でも油断はできない。
後ろの席。
東雲悠真はすでにノートを閉じていた。
落ち着いた表情。
いつも通り、隙がない。
前の席。
朝倉凜空は軽く肩を回している。
(最後か……まあいけるでしょ)
その表情には、昨日より少しだけ緊張がある。
そして隣。
朝比奈桃華は、すでに遠い目をしていた。
「……終わったら全部忘れたい」
「まだ終わってない」
こむぎが小さく返すと、桃華は机に突っ伏した。
「じゃあ配るぞ」
先生の声。
最後の問題用紙が配られる。
教室の空気が一気に締まる。
こむぎは息を吸って、問題を裏返した。
(これで最後)
試験開始。
カリカリという音が広がる。
こむぎは1問目を見て、すぐに手を動かした。
(いける)
昨日までの積み重ねが、少しずつ形になっていく。
途中問題。
一瞬だけ止まる。
(ここ、ちょっとひねってる)
ノートの端に図を書く。
考える。
(……繋がった)
解ける。
後ろ。
悠真のペンは止まらない。
迷いがない。
ただ静かに、正確に進んでいく。
(やっぱり早い……)
でも焦らない。
自分のペースでいい。
前。
凜空は眉を少し寄せていた。
(ここ、さっきとタイプ違うな……)
軽さは消えている。
本気の表情。
残り10分。
教室の空気がさらに静かになる。
こむぎは最後の見直し。
(ミス……ない)
(大丈夫)
一つずつ確認する。
「終了」
先生の声。
その瞬間、教室の緊張が一気にほどけた。
「終わったぁ……」
誰かの声。
椅子が鳴る音。
ため息。
こむぎはゆっくり鉛筆を置いた。
(……終わった)
窓の外を見る。
曇っていた空が、少しだけ明るく見えた気がした。
後ろで悠真が静かに立ち上がる。
前で凜空が大きく伸びる。
桃華は机に突っ伏したまま動かない。
「……もう無理」
でも、その声は少しだけ笑っていた。
テストは終わった。
あとは結果だけ。




