第25話 テスト2日目 前半
テスト2日目。
窓の外は少しだけ曇っていて、教室の空気もそれに引っ張られている気がした。
今日は数学と理科。
こむぎは机の上の筆記用具をそっと整えながら、問題用紙が配られるのを待っていた。
(昨日より、ちょっとだけ重い気がする)
理由は分かっている。理科の範囲が広いからだ。
後ろから声。
「昨日の復習、ちゃんとやった?」
東雲悠真だった。
こむぎは少しだけ振り返る。
「……やった、と思う」
「“思う”は禁止」
いつも通りの淡々とした注意。でも、その声は昨日より少しだけ柔らかい。
「ここ、落とすと連鎖で崩れる」
ノートの一部分を軽く指で示す。
こむぎはそこを見て、うなずいた。
「うん……そこは大丈夫」
「ならいい」
短いやり取りなのに、不思議と落ち着く。
前の方では、朝倉凜空がペンをくるくる回していた。
「理科ってさ、覚えたら勝ちじゃない?」
「違うぞ」
即ツッコミが飛ぶ。
「え、違うの?」
「ちゃんと理解しろ」
「理解って何」
「そこからだ」
周りが少し笑う。
その空気に、こむぎの肩の力が少しだけ抜けた。
「じゃあ配るぞー」
先生の声で、一気に空気が変わる。
問題用紙が配られる音だけが響く。
こむぎは深く息を吸って、用紙を裏返した。
(落ち着いて……)
最初の問題。
見た瞬間、少しだけ安心する。
(これはいける)
ペンが自然に動き始める。
次の問題。
少しひねってある。でも、昨日やった応用と繋がっている。
(繋げれば解ける)
途中で一瞬だけ迷う。
そのとき、後ろの気配が動いた。
悠真はもう次のページに入っている。
速い。でも雑じゃない。
その背中を見て、こむぎは小さく息を吐く。
(……早いな)
でも焦りはしない。
自分のペースでいい、と頭のどこかで分かっている。
数学が終わったあと、少しだけ休憩時間。
こむぎは机に手を置いたまま、ぼんやりしていた。
(思ったより、いけたかも)
そのとき横から声。
「こむぎ、理科どうだった?」
朝比奈桃華がぐったりしながら聞いてくる。
「普通……かな」
「普通って何!?一番怖いやつじゃんそれ!」
少しだけ笑いが出る。
その奥で、悠真は静かにノートを閉じていた。
凜空は伸びをしている。
「いやー、理科って体力使うな」
「頭だよ」
またツッコミ。
こむぎはそのやり取りを見ながら、少しだけ思う。
(まだ終わってないけど……悪くないかも)
テストは続く。
でも、この日もまだ途中だった。




