第15話 少しずつ広まる噂
「お疲れー!」
体育の授業が終わり、生徒たちは教室へ戻っていく。
「こむぎ!」
桃華が笑顔で駆け寄ってきた。
「すっごく速かったね!」
「ありがとう!」
「凜空様との息、ぴったりだったじゃん!」
「そうかな?」
こむぎが照れ笑いを浮かべる。
すると、近くにいた女子たちの話し声が耳に入った。
「ねぇ、暁月さんって運動神経よくない?」
「うん! 50メートル走のときも速かったよね。」
「しかも可愛いし。」
「猫耳も本物みたいで素敵!」
こむぎは思わず耳をぴくっと動かした。
「……私のこと?」
「こむぎちゃん、気づいてなかったの?」
桃華がくすっと笑う。
「最近、こむぎちゃんのこと気になってる人、結構いるんだよ?」
「えぇ!?」
驚いて目を丸くするこむぎ。
「そんなわけないよ!」
「あるある!」
桃華は何度もうなずく。
「最初は『猫耳の子がいる!』って話だったけど、今は『可愛い』『優しい』『運動もできる』って評判になってるもん!」
「知らなかった……。」
こむぎは少し恥ずかしくなり、頬をかいた。
その様子を見ていた女子が小さくつぶやく。
「やっぱり可愛い……。」
「分かる。」
そんな会話を交わしながら、昼休みのチャイムが鳴った。
「よーし、お昼だー!」
桃華が元気よく立ち上がる。
「こむぎ、お弁当食べよ!」
「うん!」
二人は笑いながら席を立った。
教室の後ろでは、数人の女子がこむぎの方をちらりと見て、小声で話している。
「やっぱり気になるよね。」
「今度話しかけてみようかな。」
その小さな会話が、数日後に思わぬ形へ発展していくことを、こむぎはまだ知らなかった。




